テニスと読書とデッサンと!

余裕の作り方。

交通事故を少しでも減らせたら・・・。

そんな想いから以前にFacebookに書き込んだ投稿を

このブログに転載しておくことにしました。

以下がその内容です。

 

*********************

 

かけているメガネの位置がずれると

左手親指と人差し指でヨロイを持って修正。

その後すぐに同じ2本の指で鼻をつまんで軽く左右に振る。

これが父の癖だった。

もう1年以上前の出来事なのだけれど、

書くとアタマがおかしくなったって思われたくないから

これまで書かずにいたし、誰かに話すこともなかった。

でももしかしたら誰かの役に立つかも知れないと思い直して

投稿してみる気になった。

 

その日、私は疲労と空腹が重なっていたせいか、

いつもよりイライラしながら片側1車線の道を運転していた。

待ち合わせをしているわけでも

火急の用があるわけでもなかったのだけれど

とにかく早く家に帰ってゆっくりしたい、

そんなことを考えながらハンドルを握っていた。

私の前を行くバスはそんな私の事情など知るはずもなく、

まるでニトログリセインでも積んでいるんじゃないかと思うくらい

明らかに度を越した慎重さでゆっくり走っている。

バス停に停まるたびに抜かしたいと思っても

タイミング悪く対向車の切れ間がない。

そんな状態で私はバスの後ろをノロノロ走りながら

ますますイライラを募らせていた。

やがてバスは大きな交差点を左折してくれたので

視界が開けガラ空きの道路が私の前に現れた。

私は今までのストレスを解消するようにアクセルを踏み込んだ。

ところがすぐにまた信号につかまってしまった。

なんて走りにくい道路なのだろう、

思い通りにならないものだなぁ。

そんなことを考えながら信号が青に変わるのを待っていると

1台のクルマが左折してこの道路に入ってきた。

実に古いクルマだ。見覚えのあるようなないような。

信号が変わって私がアクセルを踏み込むと

すぐにそのクルマに追いついた。

リアウインドウの右下に高齢者マークをつけている。

困ったことにそのクルマもニトログリセリンを乗せていた。

私は再び我慢を強いられることになってしまったけれど、

視界を遮るバスの後続でなくなったことで

幾分イライラはおさまった気がした。

そして私はそのクルマとの車間を取りながら

ふと思い出したことがある。

ウチにマイカーがやってきたのは私が小学校4年生の時で、

それまではどこに行くにも電車かバスだった。

毎年母方の叔父の家で催される新年会にも

電車とバスを乗り継いで行ったのを覚えている。

叔父の家の広い庭の端には小さなクルマが置かれていた。

父はクルマは持っていないくせになぜか免許証は持っていたので、

叔父のクルマを借りて私と姉を乗せて何度かドライブに出かけた。

今のクルマに比べれば乗り心地は悪いし

スピードはでないし狭いしオフロードバイクのようにうるさい。

それでもクルマに乗るってなんて気持ちがいいんだろうと、

子どもながらにカルチャーショックを感じていたのかも知れない。

しばらくそんな古い記憶をたどっているうちに

私は急にそのクルマが今私の前を走っているクルマと

同じモデルだと気づいた。

マツダR360クーペ。間違いない。確かにそうだ。

 

父の運転するクルマに乗るのはとても楽しかった。

「次の信号を曲がってみようよ!」

「窓を少し開けてもいい?」

「ここで停まってちょっと景色を眺めない?」

「もうちょっとスピードは出ないのかな」・・・

私と姉のリクエストに答えながらも父は

「スピードだけはクルマの性能だから仕方がない」と笑った。

その当時のことが急に思い出されて、

いつしか私からはイライラがすっかり消え、

もっとR360クーペと一緒に走りたいと思い始めていた。

リアウインドウ越しに背の高い初老の男性が運転しているのが見える。

三角窓を開けて風を取り込んでいるためか男性の白髪がなびいている。

3キロくらい一緒に走っただろうか。

やがて前を走るR360クーペは大きな交差点の手前で

ウインカーを出して右折ラインに入った。

私はどんな男性が運転しているのか気になって仕方がなかったので、

直進ラインを走りながら追い抜きざまにチラリと見てみたくなった。

でもあいにく直進ラインは渋滞してしまってほとんど動かない。

直進の信号が赤になり右折車専用の信号が青に変わると

R360クーペはオフロードバイクのようなエンジン音と共に動き出す。

距離があったのでなんとなくしかわからなかったのだけれど、

白髪の男性は動き出しながらルームミラーで私の方を一瞥したように見えた。

私は無意識に父の癖であるメガネの位置を直す仕草を期待したけれど、

R360クーペはそのまま前の車に続いて曲がって行ってしまった。

 

その後私は家に帰ってもう一度その時の記憶を辿ってみた。

記憶を辿りながら、もしかしたらあのクルマには

父が乗っていたのではないだろうかと考えた。

私のイライラした運転をたしなめ、

余裕を持って走ることの大切さを教えるために

あの世からちょこっと出張して先導してくれたのではないかと。

この不思議な出来事があってから、

私は前に遅いクルマが走っていても車間を詰めたり

追い抜くことを考えたりしなくなった。

たぶん前を行く遅いクルマは父が運転している。

そう思うことで私は何か忘れていた大切なものを手に入れたような気がした。

(写真左の自転車娘は私の姉、右の小さな女の子は叔父の娘)


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コメント一覧

boomooren5933
@littleharbor 私の体験が、運転によって生じるイライラを少しでも軽減させることができればと思って掲載の場を変えて投稿してみました。コメントをいただけてとても嬉しいです。
littleharbor
心に、じんわりと来るいいお話ですね
最近、私も両親の事をよく思い出します
運転も毎日している事もあって、色々な風景に出会いますね
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