上演後記「ナイチンゲールと紅いバラ」オスカー・ワイルド 2018.12.24 おとがたり~朗読とヴァイオリン~
2018年12月29日
2018年12月24日(月)
“おとがたり” 朗読とヴァイオリン のクリスマス・ライヴがありました。
お忙しい中、お越し下さいました皆様、ほんとうにありがとうございました。クリスマス・イヴ。イエス様の誕生日の前夜。東京の街もクリスマス・ムードが少し漂っているように感じました。デコレーション や BGMで街の雰囲気をそう感じさせているのかな。
この日は皆さんそれぞれの時間があったと思います。キリスト教信者の方は教会へ。クリスマス気分で家族と過ごしたり友人、恋人同士と過ごしたり、いつもと変わりなくお仕事の人やひとりでお過ごしの方も。本来の意味合いとは関係なく、クリスマスだからってコンビニで小さなケーキ買ってる人とか。そういえばクリスマスケーキ食べなかったな 笑。
銀座の呉服屋の店員さんが、すっきりとした着物姿で店先で働いています。
なんだか気持ちのいい姿でした。
ワイルドのお話の前に少し。
私はクリスマスになると東野圭吾の「白夜行」を思い出します。テレビ版 https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d1436/主題歌は「影」歌い手は、柴咲コウさん。
あまりにも深い悲しみに溢れるお話。子どもたちを闇に落としたのは大人たち。ドラマでは亮司と雪穂をとりまく様々な大人たちも描かれます。闇に落とす大人もいれば、救いの手を差しのべる大人も。…あらすじを書くわけにいかないので伏せますが、このなかにクリスマスのシーンが出てくるのです。亮司は身を犠牲にしても、雪穂を陽のあたる道を歩かせたかった。幸せになってほしかった。何年も前にみたドラマですが、この2人をとりまく大人たちも含めて大変興味深く観た作品です。小説からのドラマ化、フィクションですが、クリスマスになるとふと思い出してしまう。ドラマから離れた現実世界でも、輝くイルミネーションや人々の笑顔の陰で、世の中には心に晴れることのない悲しみをもつ人たちがいると思ってしまうからです。
“おとがたり”
オスカー・ワイルド「ナイチンゲールと紅いバラ」
今年は3月から12月までの間にオスカー・ワイルド作品を3作上演させて頂きました。
「幸福の王子」「わがままな大男」そして今回の「ナイチンゲールと紅いバラ」です。
ワイルド作品で問いかけられる「愛とはなに?」「幸せってなに?」「犠牲をともなう愛」
「ナイチンゲールと紅いバラ」
青年が教授の美しい娘に恋をしました。紅いバラをくれたら踊ってくれると聞き、自分の家の庭と花屋へ紅いバラを探しにゆくのですが、どこにも見つからず悲観にくれるばかり。そこでナイチンゲールは生まれて初めて恋をした青年を幸せにするため、一輪の白いバラを紅く咲かせようと自分の胸にバラの刺を突き刺し血を吸わせてゆきます。青年の恋のため自分の命を捨てるのです。
「幸福の王子」
丘の上に立つ黄金の王子は、自分の身を美しく飾るすべてを街に住む貧しい人々に分け与えます。ツバメはまた王子の施しの手伝いをしながら、自分の生き方も変えて王子に尽くし最後は冬空の下息絶える。王子もまたその鉛の心臓が真っ二つに割れてしまいます。
「わがままな大男」
人に心を閉ざした大男は、ある日楽しく遊ぶ子供たちを庭から締め出し立ち入り禁止にします。すると春の美しい庭は氷の冬になってしまいます。庭の高い木に登れず、泣いていた小さな少年を、大男はその手で木の上にのせてあげました。すると少年は大男にキスをします。大男はこの少年が好きになりました。彼にキスをした子供はこの男の子だけだったから。子供たちを受け入れた大男の庭は再び春がやってきて、彼の心も雪解けのごとく和らいでゆくのでした。
「愛とはこのようにあるべき」というような押しつけではありません。でも寓話を読んで、私もごく身のまわりや自分自身におきかえ、さまざま思いをめぐらせました。
「愛、ご大切」とはそれぞれの関係性の中で生まれるもの、育まれるもの、まずは自然にそこにあるもの、ではないかしらと思います。かたちも様々。安らぎや慈しみ、いたわりであったり。でも書くと今更ですが時に命を奪うほどの激しさ、妬みや恨みや負のエネルギーに代わると恐ろしいものに豹変する。
有名な「愛は寛容で、慈悲に富む。愛はねたまず、誇らず、高ぶらぬ。非礼をせず、自己の利を求めず、憤らず、不正を喜ばず、真理を喜び、すべてを赦し、すべてを信じ、すべてを希望し、すべてを耐え忍ぶ。愛はいつまでも絶えることがない。」の文言は、もしかして「愛」は取り扱い注意なので、こうあるべきと人に説いたのかもしれない…と頭をよぎります。愛は猛毒になることもある。
「恋」はひとりの心に生まれるものの気がします。モノローグ。「ナイチンゲールと紅いバラ」の青年との台詞はまさにモノローグ、語っていてそう思います。自分の思いだけをまっすぐと語るのです。ウバメガシの言葉はそうではない。相手への思いやりの心、好きだという気持ち、相手の取ろうとしている行動への理解などが短い言葉の中にある。私は読み手として書かれた台詞を言いながら心に映ってくるのはナイチンゲールへの思いでした。これも一つの「愛」ですね。
私はこれらの作品を心の本棚に置いておき、時々読み返してみたいと思います。より良く聞き手に届けられるように、そしてもっとたくさんの方に聞いて頂きたい、これらの作品と出会ってほしいと思いました。
"おとがたり" で私は、光栄なことに喜多直毅さんと1年ほどさまざまな文学作品をとりあげて、一緒に活動をさせて頂いてます。レパートリーは永井荷風「墨東綺譚」他8作品ほどに。ひとつ前の池袋「籐香想」での公演「幸福の王子」から直毅さんのアイディアで朗読も立ってやってみることになりました。やってみるとこれは私に向いていてとても良かった。今回の「ナイチンゲールと紅いバラ」では前回よりもっと自由に。歌もヴァイオリン1本で歌わせて頂きました。またこの日はピアノも弾いて下さいました。バルバラ「joyeux noel」そして「テゼの歌」「きよしこの夜」を。声を合わせて歌うというのは良いもので、私は心が安らぎます。
ところで、喜多直毅さんの大きな手!たくさんの音楽を紡ぐ音楽家の手です。「ナイチンゲールと紅いバラ」オスカー・ワイルド作品3作目の朗読ライヴ終演後の一枚。皆さん来年は本番をぜひ聞きにいらして下さい。音楽と声と言葉、そこから物語が現れます。どうかそれを味わって頂きたいと思います。私が長く続けてきた朗読。朗読とヴァイオリン、おとがたりというユニットでさらに世界が広がりました。来年もどうぞよろしくお願い致します♪
来年“おとがたり”では日本の作家に取りくむ予定です。
どんな世界を創ってゆけるかこれからが楽しみです。
『 おとがたり~朗読とヴァイオリン~ 』
https://www.otogatari.net/
ナイチンゲールと紅いバラ
The Nightingale and the Rose
オスカー・ワイルド作
【あらすじ】美しい少女が言いました「紅いバラを持ってきてくれたら、あなたと踊ってあげるわ」彼女に想いを寄せる貧しい青年は、喜んで庭を探しました。ところが、紅いバラは1本も咲いていません。青年は悲観にくれます。町の花屋で花を買うこともできないのです。その姿を一羽の小夜啼鳥が見ていました。青年の願いを叶えたいと小夜啼鳥は紅いバラを探しにゆき、眠っていたバラの樹を起こし花を咲かせて欲しいと頼みます。そして小夜啼鳥は月光の中、命を懸けて白いバラを紅く咲かせてゆくのでした。
<公演記録>
=聖夜に咲くのは…命の花。100年前に書かれたこの小さな物語が…静かな夜に輝きます=
■ 場所 月夜の仔猫3651 (新橋)→ http://www.asumi.com/
■ 所在地 中央区銀座8-3-11和恒ビルB1 電話 03-3573-3651
■ 料金 チャージ¥4,500 おつまみ付 /別途ドリンク代¥700-より
■ 時間 2回ステージ(入替なし)1st~19時半から 2st~20時50分から
■ 出演:おとがたり~朗読とヴァイオリンの世界~
長浜奈津子(朗読と歌)
喜多直毅(ヴァイオリン)
■ 内容
1部:朗読とヴァイオリン
オスカー・ワイルド 「ナイチンゲールと紅いバラ」
The Nightingale and the Rose
2部:音楽の時間 歌とヴァイオリン
タンゴ、フォルクローレ、ポピュラー、昭和歌謡、日本の叙情歌、クリスマスソング 他
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