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銀の河 ~ 長浜奈津子のブログ ~

『海の聖母』木古内と古平 〜吉田一穂の詩から聞こえる、ふるさとの唄〜

皆さんこんにちは、長浜奈津子です🌸

2月5日(土)は、おとがたりの朗読ライヴです。
このライヴでは、宮澤賢治『よだかの星』と、今日ご紹介する、極北の詩人・吉田一穂の詩を上演させて頂きます。


ということで、吉田一穂の詩を、ご紹介します。
今日は『ふるさと』がテーマです。


極北の詩人・吉田一穂が生まれたのは、現在の北斗市、木古内町です。
どちらかというと、北国の中でも温暖なところ。函館もそうですが、おっとりとやわらかい雰囲気の土地です。
ここには皆さんご存知の、有名なトラピスト修道院があります。
(ブログトップの写真は、トラピスト修道院の聖母子像です)

吉田一穂というと風光明媚な積丹半島の海の印象が強いのですが、吉田一穂に詳しい方に伺うと、一穂にはこの木古内の海と、積丹古平の二つの海があると聞きました。

この二つの海に育まれたということです。生まれてから少年までは、木古内の温暖な海で育ち、少年から青年へは、豪気な漁師たちの声の飛び交う、古平町の大きな網元の家で暮らしました。
その後16才で地元の中学校を退学し、東京の海城中学へ入学。そして早稲田高校、大学へすすむが、実家の家事で学資が途絶え中退。童話集『海の人形』を出し、短歌を書き、そして生涯をこの道に生きると決意して”詩人”になりました。

情緒や感傷をきらい、硬質に詩を構築したという一穂の詩ですが、その詩からは溢れんばかりの海の色彩と香り、様々な波の音、豊かな情感が胸に迫ってきます。(私にはそのように感じられるのです)とくに短歌にそれを感じるのですが、一穂の短歌は、この次にご案内したいと思います。

…それでは、木古内と母をうたう詩、そして、漁師たちを束ねて頭に立つ厳格な父の姿も重なる、古平の海をうたう詩をご紹介します。



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トラピスト修道院
わがふるさとは Notre Dame de Phare のほとり

熟れ麦は早や収穫(とりいれ)の緩調曲(アンダンテ)を囁き、
(はる)けきもののひとすぢに鳴く蟋蟀(こほろぎ)

落ちる葉の幽(かそ)けきに聴きて泉を探ね、
羊歯の化石の神を悟(し)る僧院(アベ)の人々。

(フラオ)をすてて立つ野の祈りに晩鐘(アンゼラス)は鳴る。
明日の静かなる希(ねが)ひに沈む地平の秋。



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峡湾に濯 (すす )ぐ雪解けの水。
侯鳥 (とり) に手をあげる白鳥古丹 (カムイコタン)。

色なす鰊の群れを追うてゆく鴎。
透き冴える岩礁に波は激して咽び、
眩暈 (めくるめ) く熾 (さか) んな碧水の比私天里亜 (ヒステリア)

燈台岬の鳥糞 (グアノ) 、流木や 標識瓶……
飛沫に濡れる生業の漁歌 (ぎょか)



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遠い欸乃 (ふなうた)

しとめて 血のりのついた。
(ほこ) を洗えば 沖が鳴る。




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海市 *海市 …蜃気楼

海ゆく日、光と影の漂泊に夢む燈明臺 (とうみょうだい)
假睡 (まどろ) みの浮標 (ぶい) は波の靜かな搖籃の唄をきいてゐる。



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あゝ麗はしい距離〔デスタンス〕
つねに遠のいてゆく風景……

悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音〔ピアニツシモ〕







吉田一穂の詩と童話を2022年9月に、小樽市文学館で上演させて頂きました。
今回は2回目となりますが、初演の頃よりも、作品イメージと作家への理解が深まっていると思います。
あと少し、お席のご用意ができますのでよろしければぜひお越し下さいませ。

<関連ブログ おとがたり朗読公演の詳細>

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次は、吉田一穂の『短歌』を御紹介します。


最後までお読み頂きましてありがとうございました。







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長浜奈津子のHP =芝居と音楽と語り=


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