エンジョイクラス

サッカーのことを中心に、基本的になんでもあり。

やす

2006-01-08 01:47:34 | Weblog
 高校サッカー選手権もいよいよ大詰め。国立での4強対決になりました。そして決勝に残ったのは、鹿児島実業と野洲。鹿実は順当と言えば順当。野洲は2度目の出場だから快進撃といったところかな。

 最近は伝統校に対抗する新しい高校がたくさん出てきている。伝統校と呼ばれるチームが選手権の本大会に出てこなくなった。(うちの高校も同じく)それに、無名高が有名校を破るケース、今まで全国には良く出るけど、勝ち残れなかったチームが勝ち残るケースが目に付く。
 
 理由のひとつは、Jリーグ。Jが発足するまでは、「実業団」レベルだった国内のトップチームもプロ化したことで、選手をアスリートととして扱い、選手もアスリート気分になっている。こなると、専門的な技術と知識を選手もメディカルの人もフロントも身に付けるようになる。ようはチームに関わる全ての人にプロ意識が芽生える。当然この「プロ意識」は高校のサッカー部やユースチームにも、”伝染”し良い影響を与えている。(日本のサポーターもだいぶプロっぽくなったし)

 さて、ふたつめの理由は、そんなJリーグが今、初の世代交代の時代がやってきていること。これは5、6年前から徐々に進んでいる流れ。選手、指導者ともにプロの世界を引退する人がポツポツ出始めている。
 引退した人たちの中には、高校や中学の指導に活躍の場を移すもの者もいる。体育の教員免許を持っているJリーガーも少なくない。この人達が、プロで培った経験をいろんなところで生かし始めている。まさにリサイクル!
 また、日本サッカー協会も「指導者の育成」に力を入れていて、定期的にクリニックのようなものを短期開催している。その場に赴き、最新の指導技術を身に付けてくる指導者も増えているだろう。
 川渕キャプテンはたくさんの種を日本に蒔くということを言っていたことがある。この種が少しずつ芽を出し始めているのだろう。意外と早く芽が出てきた。

 こんな感じで、伝統校に対抗する無名高なりが出始めたのだと思う。しかし、個人的には、「伝統校に対抗」ではなく、「伝統校が抵抗」するという表現にしたほうが正しいのではないかと思う。

 僕の出た高校サッカー部も、「古豪」と言われていた。ちなみに、全国高校選手権に初出場してから僕が3年の時まで、25回中22回くらい全国の切符を手にしている。僕が在学していた時も3年連続全国に行った。この高校が強い理由は、なんせその地域(都道府県)の有望な中学生を独り占めする。中学の地域選抜のメンバーをほぼ全員この高校に入学させるのだ。とにかくリクルートには熱心で、力もある。中には、卒業後の進路が約束されている子もいる。「ウチにくれば、早稲田、青学くらいになら入れてやる」という殺し文句を、その年のもっとも欲しい選手に言っていたらしい。それによろこばない子は・・・じゃなくて親はいないだろう。コネがあるから、本当に大学行けちゃう。スポーツ推薦枠みたいなので。余談だけど、このスポーツ推薦の面接を受けた僕の同級生から聞いた面接の内容は爆笑だ。「彼女いるの?」→いません。→「そうか、そうか」以上・・・。何を面接してるのだろう?結果合格。コネ以外のなんでもない。スポーツ推薦で大学入ったら、サッカー部をやめてはいけない。何故なら、辞めたら翌年のコネは無くなる。サッカー部のコネを使って大学に入ると、「辞めたら後輩の進路が断たれる」という思い十字架を背負うことになる。
 それに、あれだけ確実に全国に行けちゃう高校に行きたがる中学生は当然多い。チームとしては1学年20人程度入ればいいのだろうが、私立高校としてはそうは黙ってない。サッカー部に入りたい子であれば、中学時代は卓球部だろうが入れちゃう。だって儲かるもの。ついていけず、退部した子は目標を失い、張りのない高校生活を送ることになる。うちの高校の場合、ヤンキーに呑まれ非行に走ったりもする。そうなった子に学校は当然なんの保障もしない。
 
 かくして、最強のメンバーは揃う。高校サッカー界における強豪の強さはここに集約されていると言っていいと僕は思う。あとはこのメンバーに球を蹴らせ、走らせ、しごく!とにかく部活動させる。とにかく監督の頭の中にある、サッカー哲学を実践させるために活動させる。そぐわない奴は罵倒される。ゲームソフトの「サカつく」みたいなもんだ。ただし、最初っから最強メンバーが揃ってるから楽勝でクリアだ。
 実際、僕が経験した練習はこんなものだった。
 月曜日:オフ
 火曜日:走り
 水曜日:ボール使った走り
 木曜日:ボール使ったパスとシュートの練習
 金曜日:センタリングからシュートの練習
 土曜日:紅白戦(1人あたりの出場時間20分)
 日曜日:土曜日と同じ
 ※紅白戦は監督、コーチは見ていない。同じ生徒である副部長が見ている。副部長は「頑張っている奴がいたら報告しろ」と命じられている。当然この副部長に選手を見る目を持っている訳がない。恐ろしいシステムだ。
 Aチームになると、当然「サカつく」特別メニュー!フォーメーションの確認とかするし、Aチームの紅白戦は監督もコーチも見ている。しかも試合中に、笛がピッピ鳴らし、試合を止めて「今のはこう動け」とか細かい指導が入る。Aチーム意外の奴はこれを見て学べって感じ。

 そして、高校生にはテスト期間ってものがある。文武両道うたっている訳だからテスト期間は練習休み。そしてテスト明けは地獄の「1週間走り」というのが待っている。一切ボールは使わない。
 月曜日:20キロ
 火曜日:25キロ
 水曜日:30キロ
 木曜日:トラック走り(これが一番きつい)
     100×20 200×10 400×10 12分間ダッシュ 
     400トラック20週 サーキット 筋トレ
 金曜日:ちょっと内容が変わるが木曜日とほぼ一緒
 土曜日:1500メートルを7分ペースで7週
 日曜日:40キロ
 こんなことしてるから、中学時代卓球部だったやつは当然退部を考えるし、主力も数人は疲労の蓄積のおかげで、次週の紅白戦であっさりケガする。全くメディカルという観点のないただのシゴキだ。おかげで精神力はついたけど・・・。

 これが僕のいたサッカー部。監督は鬼のように怖い。逆らえる訳がない。たまにサボリながら必死についていった。ボールを触った時間より、走った時間が多い。これでは陸上部だ。大学で同好会に入って好き放題ボール遊びするようになってから僕は以上にサッカーが上手くなった。今だったら高校選手権でも注目されちゃうかも。(なんて自己満ですが・・・)
 
 そしてこれが、僕が身を置いていたころの高校サッカーだった。各都道府県レベルの強豪高に指導力はほとんどなかった。全国トップレベルの強豪高にだけ、指導力があった。国見、市立船橋、鹿児島実業、この3高は高校生という選手を人として扱い育てていた。だから今でも強いし、市立船橋を強くした布監督(元)は、その指導力を買われ日本サッカー協会に入り、若手の育成をしている。この3高を出た選手は割と活躍している。ちなみに2005シーズンのJを盛り上げたメンバーにもユースや指導力のある高校の出身者が多い。

 遠藤:鹿実
 松下:鹿実
 宮本:ガンバユース
 大黒:ガンバユース
 二川:ガンバユース
 家長:ガンバユース
 阿部:ジェフユース
 佐藤:ジェフユース
 野沢:鹿島ユース
 曽ヶ端:鹿島ユース
 

 指導力のない高校に襲い掛かるJの脅威。Jを目指す高校生は、”ブランド”ではなく、指導力に魅力を感じるようになった。これもJのプロ意識の影響だと思う。中学時代無名だって、優秀な指導者の下に身を置けば、その伸びしろは計り知れない。「早稲田に入れてやる」なんて言葉よりも、自分が成長できる環境を選ぶようになってきているし、優秀な指導を受けられる環境が広がってきている。今は、ユースチームに行くのも中学生の選択肢のひとつになった。ユースチームの指導者は当然プロ意識を持っている。1人でも多くトップチームに送り込もうと熱心だ。この流れはどんどん広がっていくだろう。

 この流れに、リクルート力はあるけど指導力がない強豪高なり伝統高なりは”どこまで抵抗”できるのかな?

 これは、情熱の国にある銀河系にも言えるんじゃないかな?

 でも、日本の高校サッカー界に蔓延っていた悪しきシステムは淘汰されつつある。そして日本は優秀な選手が育つ土壌ができつつある。

 ちなみにドイツに行くであろうメンバーの中には、この良い土で育った選手が多い。だから僕の予想はベスト8なのだ。