愛しのリビヤ

日本からの訪問者がそれほど多くないリビヤに滞在する機会を得た。そこでその経験を記録することにする。

ラマダン

2003-10-24 11:02:07 | リビヤ
今年のラマダン(断食)は9月26日から始まり、10月24日に終った。ラマダンの始まりはイスラム国共通なのだが、今年のように完了日はリビヤのみ異なることがある。ラジックさんに聞いても24日か25日というのみである。というのも、暦で決まるものではなく、終了を決定する委員会のようなものがあって、月の様子をみて坊さんのエライ人がそれを決めるのだそうである。
ラマダン明けの3日間は休日となるのだが、夜にならないと決定しないため、M社の事務所でも明日から休みにしてよいのかどうかさえ分からない有様で、しかも、8時以降ラジックさんに連絡をとっても彼は家族で2時まで外出していて最後までわからずしまいであった。
24日の朝いつものように起床したが、モハメッドは掃除にこないばかりか、ケントン氏、ディーンも出勤してこず、1台の車の通行もないことでようやく前夜にラマダンが終ったのを知った次第である。何事にも曖昧にすますことが好きな日本人であってもなかなか馴染めない習慣ではある。
いずれにしてもこの30日間、リビヤでは朝の6時か夕方の6時までの間、一切の飲食と喫煙および性欲等の欲求に対する解消は禁じられる。また、深夜2時から3時までの礼拝もあるので夜の睡眠は十分に取れなくなる。従って、この期間におけるイスラム教徒の勤務時間短小は大目に見られている。
誤解のないようにいっておくが、全てのイスラム教徒がこうではない。我々の同志であるトルコ人も同じくイスラム教徒であるが、トルコでは断食はしないしアルコールの摂取も自由である。勿論日中の人口増加政策の実行も可能である。
ラマダンの月はどの国も共通のようなので、イスラムを国教とする国へ旅行する際には確かめる必要があろう。というのも、リビヤのように航空機関が夜間時間にシフトする国があるのでスケジュールを誤ると大変なとになる。また、飲酒が可能かどうかも確かめる必要があろう。アルコールが飲めるのと飲めないのとでは旅の楽しさが数倍異なるのだから。酒を嗜まない人はこの際、虫無視。
小生自身にとっても、今回が初めてのラマダンを経験したわけだが、夜はやたらとうるさい。ラマダン開始の夜は、近隣の人達が道端で大声で一晩中話をしていたが、翌日からは子供達が夜遅くまで爆竹(ではなく、オモチャの鉄砲に火薬を詰めて飛ばすのだが、引き金を引いた瞬間と、飛び出てから爆発するので一度で2度うるさい)を鳴らして騒ぐのである。もともと、リビヤの人達は夜行性らしく、10時過ぎてからでも平気で訪ねてくることがあるし、子供達も12時近くになっても路上で騒いでいる。また、夜10時を回っても商店が開店していることは珍しくない。まして、ラマダン時期では、2時過ぎても大部分の商店は赤々と電気をつけていて人の出入りが結構ある。
先に書いたように、小生は犬との散歩をときどきしている。その目的は、運動不足解消もさることながら、近所を探検する意味もある。ただ単に一人でぶらぶら歩いていれば、秘密警察のおじさんにもしもしと声を掛けられそうだし、声を掛けられないまでも変な東洋人が偵察しているとの通報をされかねないからでもある。このラマダン中にも金曜の朝10時頃に散歩したのだが、いつもの様子とは異なり、ほとんどの家庭が静かで子供も騒いでおらず、ゴーストタウンのような感じがした。このように、商店においても昼から8時ごろまで閉店しているのがほとんどであるが。
ラマダンといえば、交通事故が多発する期間でもある。いつか、ドドンにラマダンになって何が変るのかと聞いたことがある。彼の答えは、「ベリー・デンジャラス。」であった。といっても犯罪が多発するわけではなく、睡眠不足とストレスのために運転が一層乱暴になることと、午後の6時までに家路につこうとして交通混雑が激しくなって交通事故が多くなるとのことであった。なるほど、ラマダンに入ってから間もなく、それまで見たことがたことがなかった交通事故を立て続けに2件目撃しているし、日頃余り聞かないパトカーのサイレンもよく耳にするようになった。現に、10月22日にS氏とラジックさんが発注者であるGMRAへ行った帰り、左折しようとして直進車のドアに衝突している。幸いにして両者に怪我はなかったが、恐らく睡眠不足による注意力欠如のせいであろう。