niobin

鉄と戯れる日々のことば

頂いたうた

2012-01-28 | 日記


喪失   吉原幸子  


 ―小ちゃくなりたいよう!
 
 ―小ちゃくなりたいよう!


誰がそれを罰してくれたらう

うすら笑ひに  もう手おくれ

失ったまま 知らなくなって 長いときがたって

わらはないでいいひとが わらふのだった


しなないでいいけものが 死ぬのだった

さうして 私はもう泣けなくなってしまった―


ひどく光る太陽を 或る日みた

煙突の立ちならぶ風景を 或る日みた

失ったものは 何だったらう

失ったかはりに 何があったらう

せめてもうひとつの涙をふくとき

よみがへる それらはあるだらうか

もっとにがい もっと重たい もっと濁った涙をふくとき


わたしの日々は 鳴ってゐた
 
―大きくなりたいよう
 
―大きくなりたいよう

いま それは鳴っている
 
―小ちゃくなりたいよう!


空いろのビー玉ひとつ なくなってかなしかった

あのころの涙 もう泣けなくなってしまった

もう 泣けなくなってしまった

そのことがかなしくて いまは泣いている
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