我が家には、小さな頃から大きな電子レンジがありました。
物心ついた時からずっと家の中心に陣取っていて、皿の上でくるくる回る食材をワクワクしながら眺めていました。
その電子レンジは、両親が結婚する時に結婚祝いとして頂いたものだったそうです。
ダイヤル式のメニュー表がついていて、例えばケーキを作る時は『お菓子』メニューから『スポンジケーキ』を選択します。
そうすると、スポンジケーキの生地に最適な分数で調理してくれると言う感じです。
当時は、ボールの中のケーキ生地が見る見る膨らんでいくのがとても面白く、電子レンジは魔法の箱のように思えました。
両親が結婚してから40年になりますが、実はこの電子レンジはその40年間ずっと現役で動いていました。
その間少し異音がして留まったり、黙々と煙が出たりして、いよいよ処分の時か・・・という時もあったのですが、父が頑張って修理して(本来ならば修理専門の人に頼むべきですが・・・)、その都度直して使えるようになりました。
何度も修理を重ねた為に、回転皿はとうとう回転しなくなり、不注意で皿自体も少し欠けてしまいました。
けれど『回転しなくても食材をのせた皿の方を回転させれば大丈夫!』という母の楽天的発言によって何とか処分を免れました。
そんな電子レンジですが、実は引越しを期に今年の春に泣く泣く処分することになりました。
思えばあの電子レンジはこの40年間、ずっと家族の一員でした。
異音がしても、煙を出しても、ガタガタ震えても、ずっと必要な存在だったのです。
それでもやっぱり年には勝てませんね。
数年前から食材が冷たい状態で「チン!」と鳴る様になってしまいました。
今は二代目電子レンジが頑張って動いてくれていますが、物静かな回転音にはどうも慣れません。
スポンジケーキを作る時も、併設している「オーブン機能」を使って作ります。
しかも、ちゃんと予熱までして、焼色まで付いて、美味しく作ってくれるのです。
時々ダイヤル式の昔の電子レンジが懐かしくなって、蒸しパンみたいなスポンジケーキを食べたくなる事があります。
とってもとっても幸せな味でした。