太陽に向かって微笑む

充実した生活が楽しみ

るのではないでし

2017-02-23 10:48:48 | 康泰旅行團

「せいぜい二日です、ご主人さま」
「では行くがよい。象たちをわたしの将軍たちの指揮下においたら、わたしの後を追ってケルにくるのだ。わたしはヘミルへ戻り、オトラスとベルガリオンのがきを連れてくる。予言者たちの聖なる山の陰でおまえを待っている」
「ウルヴォン魔神のナハズとその手下どもを連れていたというのは本当ですか、ご主人さま?」
「連れていたよ。だが、もはやそれはわたしたちのおそれるところではない。悪魔を呼びおこすのはさほど困難ではないし、地獄の魔神はナハズひとりではないからね。魔神のモージャがかれの家来とともにわたしたちに加勢することに同意したのだよ。モージャとナハズのあいだには昔から敵意がくすぶっているのさ。かれらはいまや戦いあっているよ、並の兵力など物の数ではない力でね」
「ご主人さま!」ナラダスは叫んだ。「まさかそのような悪魔とつきあっておられょうね!」
「地獄の大王自身とでもつきあうさ、〈もはや存在しない場所〉で勝利をおさめるためならね。モージャは逃亡を装ってナハズを戦場からおびきだした。おまえの獣たちをそこへ連れておゆき。そうすればウルヴォンの軍勢を蹴散らせるだろう。ナハズとかれの手下どもはそこにいないから、おまえの足をひっぱることもない。だから、ありったけのスピードでケルへくるのだよ」
「はい、ご主人さま」ナダラスはおとなしく約束したの牙がその体に食い込む前に、ザンドラマスが意志の力を集められるわけがないことは明白だ。たとえ、集められても手遅れだろう。ガリオンはぞっとするような歯をむきだして、首筋の毛をさかだて這うようにして一度に一歩ずつ、そろそろと近づいていった。かれは血に飢えていた。憎悪が頭の中で火のように燃えさかっている。おそるべき期待にふるえながら、かれは筋肉に力をこめた。低いうなり声が喉に充満した。
 結局、ガリオンを現実に引き戻したのはそのうなり声だった。かれの頭をまひさせていた思考は、狼の思考だった。狼は目前のことしか考えない。本当にザンドラマスが二、三歩で飛びかかれそうなところに立っているなら、悲鳴のこだまが近くの丘からはねかえってくる前に、肉を裂き、彼女の立っている道端の草むらに血しぶきをとばすこともできるだろう。しかし、白目のナラダスの前に立っている姿が実体のない投影にすぎないとしたら、湾曲したかれの牙は空をかみくだき、ダーシヴァの魔女はアシャバでやったように、再度かれの復讐から逃れることになる。
 ザンドラマスを警戒させたのは、ガリオンの頭の中で燃えていた思考だったのかもしれない。あるいは、ポルガラがしばしばやったように、ザンドラマスもまた意識で周囲を調べ、別の意識の存在をつきとめたのかもしれない。それがなんだったにせよ、魔女は突然ぎくりとして低い声をあげた。「あぶない!」白目の手下にすばやく言った。そのあと、ザンドラマスは冷酷で陰気な微高麗蔘笑を浮かべた。「だがわたしはアローンの魔術に動じない形態を持っているのだよ」ザンドラマスは身をひきしめた。と、姿がぼやけて、とほうもなく大きなドラゴンの姿が突然すくみあがった象たちの前に出現した。ドラゴンはばかでかい翼を広げて、湿った夜気の中へ舞い上がり、甲高いうなり声と赤黒い火で闇を満たした。
「ポルおばさん!」ガリオンの思念が飛び出した。「ドラゴンがくる!」
「なんですって?」ポルガラの思念が返ってきた。
「ザンドラマスが変身した! そっちへ飛んでいくんだ!」
「ここへ戻ってくるのよ!」ポルガラはてきぱきと命令した。「いますぐに!」


怪な眺めであった

2017-02-10 10:43:28 | 康泰旅行團

つずつ、探険しはじめた。どの入口をくぐっても、そのさきは、石造の天井を持った部屋になっている。どれもみな中ぐらいの広さで、邪悪な用途にあてられていたのが搬屋公司收費 明らかだった。それぞれに、暖炉が据えつけてあり、煙突の上部がどこへ通じ、どのような構造で煙を処理しているかは、工学上の興味ある問題だった。備えつけてある器具(器具らしい品というべきか)にしても、かつて見たこともない形状のものばかりで、それが百五十年にわたる埃の堆積と蜘蛛の巣のあいだから、ぼうっと浮き出ているところは、なんともいえず奇怪な眺めであった。しかもそれが、口碑《こうひ》に伝わる襲撃によって、破壊されたままに残されている。大部分の部屋が、新しく足を踏み入れた形跡がなく、ジョゼフ・カーウィンが実験に従事した時代の状態が、そのまま廃物化した姿とみるのが至当だった。そして最後に、ようやく、近代風の調度を備えた小室に行きあたった。これだけは、最近まで使用されていたとみてまちがいなかった。石油ストーブ、書棚、テーブル、椅子、キャビネット、デスク、どれもみなわれわれの時代の品であり、デスクの上には、新旧さまざまな書類が積んであった。燭台と石油ランプが数個所に据えてある。そして、マッチ箱が一個。これはまるで、ウィレットの使用を待ち受けているようであった。医師はさっそく、マッチをすった。
 ゆたかな輝きがみなぎり、部屋の内部が明るく浮かびあがると、チャールズ・ウォードの書斎と実験室そっくりのものになった。事実、調度品のほとんどが、プロスペクト街のウォード氏邸から運んできてあり、ウィレットの見馴れた品も少なくなく、いっきに親密感が湧きあがることとなり、さしも不快な号泣の声も、医師の念頭から半ば消劉芷欣醫生え去ったかたちだったが、事実は例の不快な号泣が、石段を降りているときよりも、はるかに明瞭に聞きとれていたのだ。
 この部屋をつきとめて、ウィレット医師は、当初の計画どおりの仕事にとりかかった。その目的は、重要性のありそうな文書を探し出し、カバンに詰めて運び出すことにあった。とくに、オルニー・コートのカーウィンの旧居で、壁絵のうしろからチャールズが発見した邪悪な記録を確保しておきたかった。しかし、捜査を開始するや、この目的を達するのには、途方もない時間と努力を必要とすることを認識させられた。なぜかというに、デスクの上に積みあげてある文書の束のひとつひとつが、怪奇な文字をつらねた異様に古体な文章の連続であり、これを解読し、整理するには、数ヵ月はおろか、数年を費やす仕事量とわかったからである。ただ、そのひとつに、プラハおよびラクスからの書翰を大きな束にしたものがあって、筆跡からして、オーンとハッチンソンが書いたものと見てとれた。そこで、その全部をカバンにおさめ、持ち帰ることで満足した。
 しかし、ようやく最後に、やはりウォード邸で見かけたことのあるマホガニー製のキャビネットを発見した。鍵を下ろしてあるのは、重要書類をおさめてあるにちがいない。こじあけてみると、はたしてそこに、ウィレット医師の希望するカーウィン自筆の古文書を見出すことができた。数年以前、チャールズがいやいやながら瞥見させてくれたので、医師の記憶にはっきり残っていたものである。青年がこれを、発見当時のまま、周到な配慮のもとに