さて、神が民族共同体を御造りになられたとき、まだそれを治める者はなかった。
そこで神は力ある者を捏ね纏めて王政を形作られ、それを治めさせた。そして主は言われた。「力を誇る者が単独で治めるというのは危うい。彼と対等で、彼を諌め、支え、導くものを添えてやろう」神は王政を外側から補佐するものとして、王家の庶腹から宗教を設けられた。
神は王政と宗教に、共同体を治めると共に、御自身が園に . . . 本文を読む
さて、メソポタミアから多くの民族と言葉が生まれ、それに伴い風習も発達してみな独自の発展を遂げていった。しかし、メソポタミアやその受難を知らないいくつかの民族は、より合理的で普遍的な言葉や文字を編み出して人類が一つになることを企んだ。彼らは互いに言った。「さあ、誰もがわかる擬音で単語を作って、普及させよう」彼らは名詞や形容詞の代わりに擬音・擬態語を使った。彼らは言った。「さあ、われわれは自分た . . . 本文を読む
預言者ムハンマドに啓示された終末の日それは一度ラッパが吹奏されて始まる、元に戻すことができない日である。その日、主なる神が神話と預言を切り離されると、主が各地に拵えられた神話からは、数えきれないほどの神々や怪物、英雄などが、叩き起こされたかのように飛び出して、主をお迎するため慌てて集合する。剥き出しになった預言は激しい地震と共に裂け、捏造された文言が崩れ落ちた後ろから、預言者や使徒たちが神に預けら . . . 本文を読む
さて、永らく世に光を与えて来た〈キリスト〉は、主の命に従って世に取り残されたままであったが、主はたちまち彼を手元に引き上げ、さらに聖人、偉人などと人の世で持て囃され、灯火のように掲げられていたものも吹き消された。主はキリストを太陽、ムハンマドを月とされ、交互に或いは地域を二分して世を照らす光明とされていたが、いよいよ二人とも御前に並ぶこととなった。突然暗闇に覆い尽くされ、世の人々は何事かと辺り . . . 本文を読む
主はギリシャに言われた。「よく心して聞け。私は神である。天と地を作った、唯一の神である。お前はこれより、父祖伝来の慣習や様式、考えから離れ、そして何より言葉を今のその文字から切り離しなさい。そうすれば、言葉はお前の翼となって、誰も得たこともないほどの知恵と力と美しさを与えるだろう」ギリシャは、主に命じられた通り、伝来の慣習や様式と文字に背を向けながらも、神だけは一切疑うことなく、算術を頼りに些細な . . . 本文を読む
主なる神が、人の世に神権統治を定められてしばらくして、
主がご覧になると、権力者の暴虐専横が極限に達し、いくら権力者が代わっても、彼らは力を持つと常に私利私欲を追求して国や民を顧みず、神も法もない悪逆非道な振舞いが各地で見受けられた。
さらに、神への崇敬と畏怖を抱かせて権力者の慢心を戒める筈の神職も占いと祈祷に夢中になり、占いが当たっても当たらなくても適当な理由で権力者に媚び諂い、事あるご . . . 本文を読む
さてギリシャは、神の御告げによりかつて結ばれていた文字を擲ったあと、親戚の縁でフェニキア文字を伴侶としていたが、彼らの間には子がなかった。フェニキアは誰もが羨むほど美しくギリシャもとても愛していたが、神がその胎を開かせなかったからである。フェニキアはギリシャに言った。「ご覧ください。主は私があなたの子を産めないようにしておられるようです。どうぞ、私が連れて来た婢女のところにお入りください。彼女が産 . . . 本文を読む