紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

いざ、大山崎!

2009-01-14 17:42:32 | アート
 れんくみさんとオフでお会いするのは久々だ。行きの電車を待ち合わせ場所とし、大山崎山荘美術館で開催されている山口晃さんの『さて、大山崎』へ、いざ出陣!

 しかし。ここまで書いて、この企画展を紹介するのは、極めて難しいことにハタと気付いた。はたしてどこまでネタをバラしてもいいのか、という境界線が難しいのだ。

 ということで、まずひとこと。

 これは、必見ですよ!

 いやー、こんな展覧会は初めてです! こんなに笑える展覧会だったなんて。しかも大山崎山荘美術館の規模に合わせて、ゆったりとした展示と、意表を突くアイディアと、あちこちから漏れ聞こえる「くすくす」「うふふ」「ぷっ」という笑い声と、サービス精神満点の遊び心と。

 そしてときには、作品自体が「なかった」りもして。
 その「ない」作品については、会場にはいったとたん、いかめしい警備員のおじさんがおもむろに近づいて来て、「なんで!?何も怪しいことしてへんのに??」とどきどきしていたら、彼は外見とは似ても似つかない気さくで楽しい口調で、「作品の見方」を解説してくださる(そしてホッと安心する)、という一瞬面食らう趣向すらある。しかもその「作品」も「見方」も、まことに人を喰った大笑いな「見立て」だったりするのだ。
 これについてなどは特に、やはり実際に現地に足を運んでもらって「あっと驚いて」みていただかなければ! そのためにも事前知識なんてあっちゃいけない、いけない。

 この子どものような自由な発想、「そうだったらいいのにな、面白いのにな」という時間も空間もとっぱらった空想力、あくまで緻密で繊細な画力、シュールかつわかりやすく「これでもか!」というくらいてんこ盛りな笑い、すべてが素晴らしい!

 入場券を購入したら、美術館のパンフとともに、山口晃さんご自身が個々の作品について書かれたメッセージ用紙を受付のお姉さんが渡してくださる。これを参照しつつ作品を見ると2回楽しめ、しかもより笑える、というサービスぶりだ。
 入口には、明智光秀、豊臣秀吉、千利休という山崎に縁の深いお三方の(一見!)真面目テイストの肖像画がかけられてお出迎えしてくださる、という山口晃さんが知恵を絞って考えたホスピタリティ溢れる歓迎ぶりである。

 明智光秀については、彼をメインにした『最後の晩餐』という素敵な絵もある。もちろんダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を下敷きにしている悲劇的で、シュールなおかしさもある素敵な絵なのだ。チェンバロを幸せそうに弾く高山右近を描いたカッコいい絵もあるが、これはほとんどアルフィーの高見沢!?と見まごう(笑) また落武者を狙う土民たち(明智光秀は彼らの酎рフ露と消えた、と伝えられる)は、なぜか軽トラ!?に武器を載せたりしているのだ。

 笑い声がひときわ聞こえたのが山口さんのコマ漫画『すずしろ日記 さて、大山崎版』だ。これ、傑作です! 笑いのクオリティの高さはべつやくれいさんと双璧だし、軽妙洒脱な絵がとっても楽しい。この企画展のため、たくさんの人に出会い、たくさんのものを観て、貴重な体験もした山口さんの漫画ダイアリー。私は宗教行事に式次第に『酒宴』がある!!のを見つけ、てっきり振る舞い酒がある♪と勘違いした山口さんが、その鬼払いの行事を見学することにした体験記が、ウケてしまって(爆笑) 

 しかし、山伏のホラ貝で始まり、神主とお坊さんが肩を並べて登場し、七福神を前座に鬼が登場し、ほとんどトランス状態にまで観客をもっていく宗教行事があるなんて!!! 絶対観たい!!!と、思ってしまうじゃないですか!

 一方千利休を意識した作品もあちらこちらに。チープな素材できっちり組み立てられた『携帯茶室』なるものが、会場の離れた場所(これも、かなり山口晃さんの意図を感じる)にあり、誰も近くにいなかったので、心ゆくまでれんくみさんと爆笑した。これは・・・ぜひ実物をみて笑ってやってください!! ことにちょっとでも「茶の湯」をかじっているヒトなら、笑いのツボの下地が理解出来、より楽しめるはず。私には「待ち合い」が(笑) 「床の間」が(笑) くらいしか判らなかったので、ちょっと悔しい。

 電柱好きの山口晃さんご自身のイラストによる「自由研究/柱華道」は、華道を知っていたらより笑えそうだし、新館の見立てシリーズは、子どもにもどったように、わくわくしながら爆笑できる。新館での展示は、入口からラストまで、とにかく笑える笑える!! ことにフィナーレを飾る『洛中洛外え(難しすぎる漢字で出て来ない!)』は、細密画で、そのいちいちに駄洒落が隠されているので、観るのに時間がかかるかかる! そして誰もが笑う笑う! れんくみさんと「この絵のャXターあったら、絶対買うのにね!!」といいながら、ショップで1月末に発行される『図録』を予約したのでした。

 うーん、『おじゃる丸』に出て来る小鬼たちの名文句、「きいてオドロけ、みてワラえ!」というのは、そのままこの展覧会のコピーになりえるなあ、としみじみ思うのでした。

「さて、大山崎」

2008-12-20 23:58:32 | アート
 先日、多忙同士でめったにオフではお会い出来ないメル友のれんくみさんから、大山崎山荘美術館での素晴らしい企画展のご紹介があったので、インフォメーションです。

 すでに始まっている企画展は、なんと山口晃さんの展覧会『さて、大山崎』(08.12.11~09.3.8)なのです! 関西初の個展だそうです。

 会期は3月までなので、ばたばたと焦ることはない分、伸ばし伸ばしにして油断しているといつのまにか終了、という悲劇にならないとも限らない。なんとか半日でも時間をこじ開けて駆けつけなければ! 私にとっては来年の話になるけれど、これはちょっと見逃せない、そして久々にかなり楽しみな展覧会になりそう。

 大山崎山荘美術館自体も、山荘に広がるお庭や池や、内装や調度など、見所いっぱいで、行けばいつも気分は貴族の令嬢、もしくは伯爵夫人(笑) オープンカフェなら、ひろーいテラスから一望出来る眺めを楽しんだり、喫茶室内でシックで贅沢なひとときを楽しんだりと、大正時代のカネに糸目をつけない(たぶん)趣味人が建てた山荘ならではの、素敵な時間をもつことができる、はず。

 と、この企画展には行ってもいないのに、おすすめしちゃいます。(美術館には何度も行きました)

北斎!

2008-09-24 00:25:06 | アート
 滋賀県立近代美術館で開催中の『葛飾北斎展』に、H氏と行った。

 もう、仕事してるのがもったいないようなピーカンの秋晴れで、駐車場から美術館までの、池あり、なだらかな木々の間を通る上り坂あり、モニュメントあり、シバボウキで道路を曹「ていた「レレレのおばさん」(H氏命名)ありの小径も気持ちいい。

 葛飾北斎はキョーレツなじいさんだったらしい、というウワサはH氏より漏れ聞いていたが、八十歳を越えてあんなに細密な絵を描き、画狂老人卍筆とサインをするとは、♪うわさどうりだわ、あなた、カツシカ、ホクサイ~と、ピンクレディの『渚のシンドバッド』の替え歌で歌いたくなったほどだ。

 入口には弟子(?)が描いた彼の肖像画があるが、にこやかにたたずむ画狂老人の着物の柄は、卍プリント!! 楳図かずお氏が赤白ボーダーをトレードマークにして着用していたように、北斎は卍プリントの着物を愛用していたのだろうか!? 仮面の忍者赤影を敵に回す卍党の首領のようである。いきなり入口付近で度肝を抜かれる。

 いつまでも卍に拘っているわけにもいかないので、若い頃からの絵を見て行く。

 やっぱり、うまいわ~。北斎に向かって、いまさら失礼にしかならないけど、うなるほどうまいわ~。とはいえ私は絵に関してはあれこれ言える資格は無いけど、突き刺すようなシャープな線と構図に圧唐ウれた。

 中でも動物の目の描き方が、やたらユニーク。つがいのニワトリが、そろいもそろって、一生よからぬことを企んで暮らした、みたいな目つきに、ふたりでこっそり爆笑。見かけによらず乙女チックな風情でロマンチックに浸っている微笑むトラに苦笑い。これから大暴れというときに、ふと「腹、イタイ」と苦悩する竜の悩ましい目つきにクスクス。いやー、わらかしてもらいました。

 それから有名な冨嶽三十六景が、意外に小さいのに驚いた。四つ切りの画用紙の半分くらいだったような(もうちょっと大きかったかな)。

 北斎は斬新であっと驚くような構図で、どんな細かなところもきちんと描いている。不思議なことに私たちは二人とも、期せずして北斎の絵を見て、鳥山明の『Dr.スランプ』と『ドラゴンボール』を思い出したのだ。北斎の絵はイラストとか漫画という気分なのだ。だから見ていて感動するというものではないように思う。むちゃくちゃ上手いんだけど、不思議なほど『感動』はない。見応えはばっちりなのに、そのアンバランスが面白いといえば面白い。

 ということで、チケット提供者のaskaさん、どうもありがとう! 以上が北斎展のレメ[トと感想です。意外に私にしてみれば、あっさりとした展覧会でした。残念なのは私たちの気に入った絵の絵葉書がひとつも無かったこと。あのチラシに載っていた破れ提灯のお岩さん、H氏が感心していたのになあ。祟りをおそれたのでしょうか?

蕪村を観に行く。

2008-06-05 21:38:12 | アート
 雨で肌寒いほどの日であったが、遠出をした。れんくみさんのお誘いで信楽のミホ・ミュージアムで開催されている「与謝蕪村√トけめぐる創意=vに行くことが出来た。

 考えてみれば彼女とは十年来の付き合いなのに、二人で出かけたことはおろか、お茶したこともなかった。もう少し人数が多くてなら、お茶やご飯はご一緒したこともあるのだけれど。もう10年来の付き合いなのに(その半分ほどは、濃いメル友でもあるのに)初デート、初ドライブなのだ。

 蕪村は芭蕉のような緊密さや緊張感よりは、むしろおおらかで牧歌的なロマンチストな人のよう。人間的魅力に溢れ、ユーモラスに生きることに重きをおき、決していいことばかりじゃない人生の岐路を、それでも明るい方へ続く道を選択して行った、そんな人だったんじゃないか、と彼の画を観て思った。

 さらさらと筆で描かれた漫画のような人物画。水木しげるを凌駕するような、飄々とした脱力系の妖怪たちが次々と現われる巻物。銀箔の上に描かれ、蕪村が死ぬまで憧れた、けれど決して行くことの叶わなかった中国の山水を描いた最晩年の水墨画。しんしんと雪の降る家々の町並みの静寂や、富士山の麓の松並木の画などは、どんなに見ていても見飽きることはない。

 今回、蕪村の年譜を見て、彼があの伊藤若冲と同じ年に生まれている同時代人と知る。そういえば若冲のいくつかの画にも、蕪村とは全く画風が違うのだけれど、かわいらしい諧謔精神が垣間見えた。彼らの生きた時代にはアートに笑いを含むことが許容されていた寛容な時代だったのかも知れない。

 また蕪村の絵の明るくユーモラスなテイストは近江蕪村と言われた楳亭・金谷(2008年3月のブログ記事参照)に直伝され、懐かしくも素朴なロマンチシズムは池田遙邨や福田平八郎のリリカルさの中に受け継がれているような気もする。

 ところで、今回のミホ行きの大発見は、蕪村のあれこれだけではない! 

 ミュージアムと別棟、エントランスの入口に位置するレストランやショップがあるレセプション棟では、パンの販売も行われている。れんくみさんが「パン買いにいくし」というのに付いて行けば、それは美味しそうなクロワッサンを発見! しかも決して安くはないお値段なのに、スーパーの目玉商品のように「おひとりさま1個まで」という案内が付いているではないか! これは買わねば!

 あと、れんくみさん情報に寄れば、このパン屋さん?で実物はカウンター内で姿は見えないが、密かにインフォメーションされている「お豆腐」が、ものすごく美味しいそうである。今回私はおひとりさま1個のパンに気を取られスルーしてしまったが、H氏に「なんで買わんかったの!」と非常に残念がられた。

 ところで帰りの車でクロワッサンをちびちび食べてみたら、外側はサクサクで中はちぎるのが一苦労なほどしっかりと練られている。バターの芳醇な薫り、うっとりするような味わいだったので、半分はパイ生地好きのKちゃんへのお土産とする。最高級なクロワッサン。文句なく、いままで食べたクロワッサンのザ・ベスト! クロワッサン・キングの称号を与えたい。

 こんどまたミホ・ミュージアムに行くことがあれば、レセプション棟にも必ず立ち寄らなくては! パンとお豆腐を買いにね。 

 

ブルーノ・ムナーリ展を観る。

2008-06-01 23:55:45 | アート
 昨年よりチェックしていた『ブルーノ・ムナーリ展』が、滋賀県立近代美術館で始まった。

 今朝は素晴らしいお天気だったので、H氏が「いいお天気やなー。どっかいきたいとこある?」ときいてくれたので即座に「ムナーリ見に行きたい」というと、即決。洗濯がすべて終了した時点で出発する。

 すでに『件p新潮08.1月号』のブルーノ・ムナーリ入門特集号を購入済で、ざっとは見たけど、事前に勉強した方が?と思いつつも、結局白紙の状態で見にいくことに。

 結論からいえば、期待に違わずぎっしりムナーリが詰め込まれた、見応え抜群の企画展だった。ことに絵本や仕鰍ッ絵本、子どものためのアートのワークショップに興味がある方なら必見だし、玩具やプロダクト・デザインの分野に関わっておられる方にも超おすすめ。それ以外にも、創造とかオリジナルに手づくり、ものづくりに関わる方にも、新たな創造への意欲やパワーがみなぎり、想像力が活性化されるはず。

 こんなワザや、あんなワザに感嘆し、尽きせぬムナーリの想像力や発想や創意工夫には舌を巻き、おちゃめで自由でフレンドリーで温かい人間性を垣間みて、たいへん微笑ましい気持になるのだ。まさに天真爛漫な天才としかいいようがない。

 さらにムナーリは大の親日家で、日本の美意識や文化や生活様式にいたく共感されていた。自然との融和や、敵対や勝ち負けでない、謙虚で平等な他者との付き合い方に、心を動かされたのだ。(もちろんずいぶん前の日本の様式だが)

 日本人との交流も多彩。滝口修造と親交を結び、最初に出会った日本人建築家、岩淵活輝からヒントをもらって「ムナーリのフォーク」と呼ばれるジェスチャーするフォーク作品を創り出し、作曲家、武満徹ともコラボする。そのあたりの行き来するジャンルを問わない『アート魂』の交流も、ほのぼのしている。彼らの交流を示すものたち(手紙やプレゼントされたりしたりした品物)は、見ているだけでも楽しくなるほど。

 ナンセンスだったり、ユーモラスだったり、お茶目だったり、楽し過ぎたりするムナーリの世界、隅から隅まで嘗めるように鑑賞して、入場料のもとは、H氏の分までとったくらい大満足。それとともに、ムナーリが残してくれた様々な遺産が、各方面で脈々と引き続き息づいていること、現在の豊かな絵本のバリエーションは、ムナーリがいたからこそ後進が力強く発展させていくことが出来たのだという思いを強く持った。ムナーリは過去の人ではない。今現在もそういう意味では活躍されているのだ。
 
 しかも常設展の中の企画展『源氏物語千年紀 in 湖都大津 関連企画 人間国宝・志村ふくみ 源氏物語を織る』も合わせて観られるのだ。一枚のチケットでOKなので、大変にお得である。
 志村さんの紬織り『源氏物語』シリーズ約20点と、彼女の作品づくりについてのコメント(エッセイより引用)がまた・・・。「あ、ここにも別なタイプの天才が」と息を呑むような紬の美しさに打たれます。

 おまけ:サイバー美術館「ムナーリ展」はこちらから→http://www.musabi.ac.jp/library/muse/cybermuse/munari/01-j.html