
先日テレビで、「神様のベレー帽」というドラマが放送された。
これは、手塚治虫先生のことを描いたドラマで、「手塚治虫のブラックジャック創作秘話」という副題がつけられていた。
家に帰り、このドラマを見るために、とっとと風呂に入り、酒を飲みながらじっくり見た。
主演は大島優子さん、そして手塚先生役に草なぎ剛さん。
ドラマを見終わって、少々私が想像したドラマとは違っていた感はあった。
私はてっきり、ブラックジャック誕生にまつわることがメインに描かれるのかと思っていたから。
例えば、なぜ医療マンガというジャンルになったのか。
あまり前例を見なかった医療マンガ創作の苦労。
ブラックジャックのモデルについて。
ブラックジャックのキャラ設定の過程。
ブラックジャックに出てくる様々なキャラについて。
先生にとってのブラックジャックとは。
先生にとって、先生の他のキャラ(アトムとかレオとか)とブラックジャックの違いは。
ブラックジャックが初登場して、次第にブレイクしていく過程での先生の気持ち。
当時スポーツ根性もの隆盛だった時代に、ブラックジャックがなぜあんなに支持されたのか。
ブラックジャックにもしも最終回らしい最終回があったとしたら、どんな最終回になっただろうか。
ブラックジャックのいくつかのエピソードに、ヒントとなった事実や秘話はあったのか。
などなど、主にブラックジャックをメインにしたドラマになるのかと思った。
もっとも、上記の内容で番組を作ったら、ドラマというよりも検証番組とかドキュメント番組みたいになってしまうが(笑)。
ともあれ、そういう内容ではなく、ブラックジャックを描いていた頃の手塚先生の生きざまを描いたドラマになっていた。
私の周りに、手塚先生に実際に会ったことがある人がいて、その人いわく、草なぎさんの演じる手塚先生は、顔は似てなかったけど、仕草や表情やしゃべり方などはけっこう似ていたようだ。
お腹の出っ張りまで再現しようとしていたのは面白かった(笑)。
ドラマだから多少の誇張はあったのかもしれないが、ああいうスタンスで仕事をしていたらしいことは、私も断片知識の中では少しは知っていた。
だが、ああして実際に映像化されると、改めてその仕事姿勢はすさまじいと思った。
手塚先生が妥協せずにギリギリまで仕事をしていたのはよく分かったけど、その反面・・「そりゃ、早死にするよなあ・・」とも思わずにいられなかった。
ああいうペースで仕事をしていたんじゃ・・・。
先生の早死には・・・正式な病名はともかく、本質的には過労死だったと思わずにいられなかった。
もしも先生が長生きしていれば・・・
いずれ描くつもりであったはずの「火の鳥」の「アトム編」も読めただろうに・・・。
「火の鳥」は完結させてあげたかった・・。
そう思うと、残念でならない。
あのすさまじい仕事ぶりには尊敬の念を覚えるが、それと同時に・・やはりそれが先生の死を早めたような気がして、複雑な気がする。
かといって、先生のあの仕事ペースを改善(?)させられる人は・・・・いなかったんだろうなあ。なにせ相手は天下の手塚治虫だもの。
誰かがいさめても、先生の仕事ペースを変えることはできなかったのだろうな・・。
ドラマの中で、先生の能力について、「常人の5倍のスピードで描くことができるが、10倍の仕事をとってしまう」と表現していた。
ならば・・・マンガ風なたとえで言えば、先生のコピーロボットが10人分あれば、もう少し休んでもらって、もっと長生きしてもらうこともできたのかな。
いや・・
あの調子だと
先生のコピーロボットが10人分いたら、それに応じて100倍の仕事を受けてしまったのかもしれない。
そうなると
やはり過労死するしかなかったのだろうか。
湧き上がり続ける創作欲と、ライバル心、現役であることへのこだわりが、先生を支えていたのだろう。
それにしても代償は大きすぎる・・。
ともかく、私が思うことは一つ。
手塚治虫先生には、もっと長生きしてほしかった。
それに尽きる。
ドラマを見て、あらためてそう思わされた。