
高田渡。
伝説的人物。
伝説的フォークシンガー。
伝説的酔っ払い。
日本のフォークの黎明期に登場し、その世界において確固たる地位を築き、早々と伝説的存在になってしまった人。
ステージで酔っ払って寝てしまっても、ファンからも同業者からも愛され、リスペクトも受け続けた稀有のシンガー。
口うるさいフォークファンから、一目も二目も置かれていた人。
確固たる地位を築いた・・と書いたが、どうも傍で見てると、確固たる地位を築くための野望や野心があったという気がしない。
飄々としていて。
好きなことをやり、好きなように生き、周りの心配をよそに、ある日この世を去ってしまった。
でも、当人はともかく、周りの人は彼をほっておかなかった。
彼のことはこれまで色んな人に語られ、その歌は歌い継がれてきている。
映像にも残されてきている。
なので私のようなものがここで高田渡さんについてあれこれ書いても仕方ない。
彼のライブ映像も、映画(!)も私は持っていたりするぐらい、好きだ。
だが彼について私のような非才な人間が文章で表現できる自信は私にはない。
ともすれば、彼はその存在だけでなく、歌っていた曲すら伝説的という枠にまつりあげられそうではある。
なので私はここで、純粋に私の好きな歌として、彼の曲を1曲ここで取りあげたい。
その1曲とは「値上げ」という曲。
最近、ガリガリ君のCMにも使われ、話題になった曲だ。
なぜ私がこの曲を好きなのか。それは、この歌の歌詞を読んでもらえれば分かるのではないだろうか。
コミカルでありながらも、風刺にあふれており、しかも本質をも捉えている。
昔も今も変わらぬ、普遍性もある。
そして、決して押しつけがましくないメッセージ性。
押しつけてこなくても、そのメッセージは痛快な形でリスナーの心に響いてくる。
もうだいぶ前のことになるが、ひょんなことから弾き語りライブをやることになった時、私は自作曲が並ぶレパートリーの中で、カバーとしてこの曲を取り入れて歌ったこともある。それぐらい好きな曲。
この曲が作られたのは今から何十年も前だというのに、その内容はまったく色あせず、古くならない。
おそらくこの歌が古くなることは、この先の未来にもないのではないか。
時代を超越している。でも、決して大げさな歌でもないし、偉そうな歌でもない。気取った歌でもない。
ただただ、等身大で共感するのみ。
それも、感慨深く共感する・・というより、少しクスッと笑いながら、共感する。
世相を斬る漫談を聞いて、笑いながらも親近感と共感を覚える・・・それに近い感覚を私はこの歌に対して持っている。
政治家が最初は国民に耳触りのいい言葉を言いながら、だんだん本音がでていき、最後には自分を選んでくれた国民に対して、裏切るようなことをしてしまう。
最後の決断は、本当は最初から心の中にあったのに、その決断に辿りつかせるために、徐々にトーンを変えていく過程を書いた歌詞の流れが最高である。
この歌をベースにした漫才や漫談が出てきてもおかしくないぐらいだ。
いや、そういうネタを、歌という形でやってしまったところが、なんとも痛快で良い。
伝説的人物の歌・・ということになると、つい構えてしまいがちなものだが、高田さんの歌は構えずに自然体で等身大で、ありのままに気持ちのままに聞けばいい。
それだけで、この人の良さは伝わってくる。
そして、聴きこんでいるうちに、なぜこの人が、愛され続けたか、リスペクトも受け続けたか、その理由が、リスナー1人1人のそれぞれの感性で分かってくると思う。
高田渡さんの曲では、「自衛隊に入ろう」「自転車に乗って」「生活の柄」などが有名だ。
特に「自転車に乗って」という曲など、以前私は自分のユニット「時代屋」でもレパートリーにしていたこともあるぐらい、愛してやまない曲だ。
だが、この「値上げ」もまた、高田渡さんの傑作であるのは間違いない。
最後に一言。
もしも、これまで高田さんのことを知らなくてきて、今彼に興味を持った方がいれば、映画「タカダワタル的」という作品を観てみることをお勧めしておくことにする。
https://www.youtube.com/watch?v=ngcIIpT5wxs
、
ムッシュも聴き入っていますね。
>世相を斬る漫談を聞いて、笑いながらも親近感と共感を覚える
まさしく、そうですね。
本当に人間味溢れる魅力的な人
生放送に高田さんを呼ぶなんて・・・(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=OdmBbreTnno
なかなかですね。
高田渡さんがテレビに出た映像、今となっては貴重です。
それにしても、いいキャラしてますよね。
どこか人を食ったような、とぼけたようなキャラです。
渡さんの生き様を追ったドキュメント映画「タカダワタル的」、面白いですよ!