
本屋で何気に見つけて、なんとなく気になり、衝動買いしてしまった本。
分厚い本だが、正直長さは感じなかった。
時間を見つけては読み進み、時には本来は見ているはずのテレビ番組を流しながらも、この本の続きが気になり、テレビそっちのけで読んでしまった。
読み終わっても、読み終わった感がなく、もっと読んでいたい気になった。
これは、筆者がポールとの長年の交流の中で、ポールから語られたことを、一冊の本にまとめた本である。
全体的には「しごくまっとうだが、たまたま天才だった男」という視点が、この本の大きなテーマになっている気がした。
インタビュアー(著者)がリバプール出身というせいもあるのか、ポールは随分フランクに話している。同じ町出身だと、やはり親近感は持つだろうし。
本の邦題は「告白」だが、内容的にはさほど「告白」という印象はなかった。
この本の原題は「Conversations with Paul maccartney」なので、「会話」「対談」「会談」「座談」などのほうが、しっくりくる感じ。
なんにせよ、興味深いくだりは多々あった。
ポール・マッカートニーという人物には、やはりどうしてもビートルズの話題はついてまわる。これはもう仕方のないことだと思うし、また、ポールのファンにとっては、ビートルズに関することは、ポールの口から聞きたいことであろう。
この本でもビートルズのことはふんだんにでてくる。だが、これだけのボリュームのある本だけあって、ウイングス時代のことも、ソロになってからのことも、しっかり語られている。
中には、必ずしもうまくいかなかったキャリアのことについても書かれている。
また、私の知らなかった「意外なオファー」などについても書かれていた。
それがポール自身の口から語られてるのが、面白かった。
ポールは、ビートルズのメンバーの中でも、社交的で、人当たりがいい印象がある。
時にはそれが計算づくと捉えられる部分もあるが、それは彼が成し遂げてきた実績と、その存在の大きさゆえであろう。
昔ポールに実際に接したことのある日本人が、ビートルズの中でポールが一番フレンドリーで親切だったと語ったことがあるのは、私はこれまで何度も読んだり聞いたりしてきている。
ポールの口からも語られたことではあるが、なるべく「普通の人間であろうとしている」ポールの姿勢には、親近感を持ってしまう人は多いのではないか。
彼の人への接し方が、そんなスタンスであったからと考えると、合点がいった。
なぜなら、その実績を考えれば、はっきりいって「近寄りがたい人」や「気難しい人」や「実績を鼻にかける、偉い人」になってもおかしくないのだから。
だが、色んなインタビュー映像や、ポールに接した人の「ポールの印象」を聞くと、上記のような印象は受けない。それは、ポールが「普通のまっとうな人間」であろうとしているからなのだろう。
私自身は、ポールは、ずば抜けた天才ソングライター、天才ミュージシャンとして、長年あこがれの気持ちを持って見てきた。尊敬もしてきた。敬愛・・そんな感じだ。
だが、ここ近年は、ネットの普及もあり、彼のインタビュー映像や、各地でのライブ映像を見る機会が増え、音楽面だけでなく、映像や文面から伝わってくる彼の人柄にも惹かれてきていたのだが、この本を読んで、その気持ちはまずます強くなった。
もちろん、人に見せないでいる部分もあるはず。
でも、それはどんな人間にでもあること。
ともかく、彼が奇跡のような数のスタンダードソングを生みだしてきた事実と、人に見せてきた人柄、それだけで十分。
この本の中で綴られていることの中には、すでに知っている情報も多かったが、それが実際にポールの口から語られるのを読むのは楽しかった。
特に、ジョンに対するポールの思いは、半端ではない。あちこちでジョンの名前は出てきた。当たり前のように。そして、まるでジョンは生きてて、時にはまだ一緒に活動しているかのように。
彼にとって、ジョンと組んでいたことは、最大の誇りでもあり、自慢なのだ。
ちなみに、晩年、ジョンも同じようなことをポールについて語っていた。
そのへん、ビートルズファンとして、嬉しかった。
「ポール。あなたがもっとも影響を受けた人物は?」
「ジョン・レノン」。
「その人はあなたにどれほどの影響を与えましたか?」
「そりゃもう・・多大に。」
この応答は、色んな媒体などで私も知っていたが、あらためて誌面で読むと、胸が熱くなった。やはり、何度見ても(読んでも)私の大好きなやりとりだ。
熱心なビートルズファンにとっては、すでに知っている情報は、この本にはけっこうあるだろう。
だが、インタビュアーが同じリバプール出身ということで、カルトなことまでかなり打ち解けて明かしてくれていることも多いので、ファンには楽しめる本だと思う。
それこそ、私のように、他のことをおろそかにして読み進めてしまうくらいに。
この分厚さがまったく気にならないぐらいに。
また、この表紙はインパクトがあった。年齢相応のポールの顔のアップ。これを見ると、かつてアイドルでもあったポールも老けてしまったなあと実感させられる写真だ。
本の内容自体は邦題の「告白」という感じはさほどなかったが、この表紙だけを見ると、「告白」という邦題も、それなりに合ってるようにも思えた。
年齢を重ねたすっぴんの顔写真を表紙に使っている・・・という意味で。
まあ、じっさいにすっぴんだったのかはわからないが、少なくてもこの表紙写真を見ると、そんな表情には見えた。
この表紙、本の出版前に当然ポールも見ているはずだし、その気になれば、もっと若々しい写真を使うこともできただろう。
でも、この表紙にポールはOKを出したということは、ポール自身、フランクに話したという意識はあったのかもしれない。
本に収録された「会談」は、必ずしも最近の「会談」ばかりではない。
何年も前の「会談」も含まれている。
だが、それらを今こうして1冊の本にまとめて出す際に、年齢相応の人間でいたかったのかもしれない。
この本は、ポール・マッカートニーによる『自叙伝』では無いわけですね。
私は、まだ購入していないです。
「世紀のビッグバンド」ザ・ビートルズの誕生・デビュー当初・全盛期・映画制作・解散・その後の4人まで充分に語ることが出来るのは、ポール・マッカートニーだけです。
リンゴ・スターは、健康で元気な割りには、ビートルズ時代を懐古したり、元メンバーたちへの言及は、あまりにも少ないですよね。
又、仮にあったとしても、ビートルズのベストヒット楽曲には、必ずポール・マッカートニーが関係してきます。
ポール・マッカートニーによる楽曲無くして、世紀のビッグバンド・ビートルズを語ることは絶対出来ません。
本書は、当事者による貴重な生き証言であるわけです。
唯一無二の盟友ジョン・レノンは、いつまでもライバルであり続けているのですね。
少年時代に宿命的な出会いがなければ、ビートルズも誕生しなかった。
まさしく「音楽近代史」に偉大な功績を残す2人。
永久に語り継がれていくでしょう。
音楽が人間を、時代を変えた歴史を…。
でも筆者がリバプール出身だからか、かなりフランクに話してます。
ジョンもジョージももういないし、リンゴはあまりメイン的なビートルズメンバーではなかったから、今はポールの「ひとりビートルズ」的な状態ですね。
また、ビートルズの有名なスタンダードナンバーの多くはポールの作品であったわけですから、ビートルズについて深く語れるポールが健在であることは、ファンには大きな慰めです。
レノンはポールにとってライバルであり、パートナーであり、その思いは互いに持ってたはずです。
もしもレノンが長生きしてくれてたら、、、という喪失感は、なかなか拭い去れないですね。
もしレノンが長生きしてたら、あの2人はまた一緒に仕事をする機会はあったように思います。
ビートルズという形ではなくても。