小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

心霊YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報などはブログ1P目又はツイッター(X)にて🌹

12.銀のペンダント

2023-12-11 22:39:00 | 小説
 華島さんがソロになって売れなくなってからも、俺は例のバーで華島さんを待ち…そしてスタッフ達を連れて華島さんはやってきた。

 どんどんライブの客は減っていて、会場も小さくなっていった。

 その頃から、華島さんはちょっとバーで荒れるようになっていた。

 でも、俺はファンが少ないのをいいことに、酔っ払っている華島さんにプレゼントを手渡したことがある…

 俺のささやかなバイト代で買ったシルバーのペンダント。

 華島さんはにっこりと笑ってその袋を受け取ってくれたのに…

 
 …暴れないようにとお目付役にされたのは、ほとんどサポートのミュージシャンだった。
 スタッフでは言うことをきいてくれないからだ。

 …あの時、カウンターの華島さんから目を離さないように、でもはべらせた女の子達を優しく笑わせていた人が…

 
 もしかして、オミさん?


 ホストかよ、と俺は心の中ではバカにしていたけれど…


 俺の今の本心は、きっと、華島さんに会えなくても、オミさんに会いたい、だ。



11.寂しい思い出

2023-12-10 22:14:00 | 小説
 方向性の違いで、華島さんのバンドはわりとすぐ解散し、華島さんはソロになった。


 バンドの中でもっとロック寄りにしたかったのは華島さんだけだったのだ。


 でも…
 みんなが期待したほど、華島さんは売れなかった。


 俺が一緒にいたお姉さんたちも離れていった。曲がいまいち、やっぱりバンドの方が良かった…そう言って。


 俺もそう思う面もあったが、やっぱり俺は華島さんが死ぬほど好きで仕方がなかった。



10.オミさんに会いたい。

2023-12-09 21:52:00 | 小説
 そんな風にいろんな心霊チャンネルを見ていると、意外なことに人気チャンネルの人の中には、かつてはプロミュージシャンを目指していたという人が何人かいた。


 もう、礼霊ずを見る気にはなれなかったから、あの二人はどうなのかわからなかったけど。


 でも、あの、オミさんに突撃してみようか…という気はしてきた。メールとかではなく、いきなり。


 でも俺はその後も数日間悩み続けた。

 連休が近かったから、東京に行くことはできないわけではない。
 お金は少し厳しかったけど。


 毎晩、心霊の色んなYouTubeのチャンネルを見てしまっていた。

 それは、あの、オミさんを見たがっていると認めざるを得ない。


9.ガチ恋…だったんだけど。

2023-12-08 18:38:00 | 小説
 華島さんのバンドは地元ということで、自分達のライブだけではなく、札幌でのロックイベントには必ず来ていた。
 

 そのうち俺はもう、華島さんのことしか考えられなくなっていた。

 
 ガチ恋っていうやつだ。


 同じように熱烈に華島さんのことが好きなお姉さんたちに用心棒みたいなことを頼まれて重宝され、 まだ追っかけの中に男は目立つから一緒に立っててほしいと言われ、確かに華島さんの視線をキャッチすることができたのだ。


 お姉さんたちと俺は手を取り合って大喜びした。


 それで仲間にしてもらえて、他のファンにほ知られないようにしている、華島さんのお気に入りの、怪しいバーにも連れていってもらえるようになった。


 バーの内装は少しワイルドな感じでお洒落だったが、俺のような16才、見るからに未成年の男でも平気で酒を出してくれるような店だった。


 そのうち1時を回った頃、三次会を抜け出してきたらしい、女連れの華島さんが本当にやってきて…


  とにかく綺麗で色っぽいロックスターだったのだ。オーラが全然違う。


 これから伸びていく人だなあと 俺は確信した。


 …でも…あんなことになるなんて。


 そして、華島さんの行方がわからなくなるなんて…



 …その夜眠れない俺はずっと、いろんな心霊YouTuberのチャンネルを見ていた。
 でも礼霊ずを見る気にはなれなかった。



8.出会い。

2023-12-07 18:00:00 | 小説
 華島さんに夢中だったのは、俺が高校生だった頃。

 久しぶりに札幌からメジャーデビューした、それもV系のカッコいいバンドということで、俺が中学の時から地元でも結構盛り上がっていた。

 ロングの金髪で、大きなでも冷ややかな瞳の華島さんは、体はすごく細かったけれど、そのために儚げに見えたけれど、とにかく上手いボーカリストだった。

 俺も、あそこまでにはなれなくても音楽をやりたいと思うようになった。

 でも上手くはいかなかった。

 一応、友達やさらにその友達に声をかけたけれど、音楽をやりたい、バンドをやりたいというヤツはなかなかいなかった。

 俺自身、楽器選びも進まず、ただただ華島さんの活動をネットや何かで追っていくだけになり…

 そのうち、よくいる女の子ファンみたいに、ライブまで追っかけていくだけになってしまった。

 音楽をやりたいなんて言っておいて、何の努力もしない自分が情けなくなってきてもいた。