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粟屋かよ子・Ψ(プサイ)が拓く世界を求めて

量子力学の理解を深めつつ、新しい世界観を模索して気の向くままに書きたいと思います。
詳細は自己紹介カテゴリへ

人工知能(AI)の開発はどこで方向を間違えたのか

2025-03-02 03:04:10 | 日記
ソフトバンクらによる5,000億ドルのAI開発投資計画など、いよいよ「AIバブル」のまっただ中――2000年代から現在まで続いてきた第3次AIブーム――と思っていた矢先、中国製の生成AI「DeepSeek-R1」の登場騒動でAI市場が一気に揺れました。
米国の有力投資家や研究者の間でも、「AIバブルの崩壊」という見解も増加しているようです。

ところで先日は、NHK-BSの『世界ドキュ』で、「AIがひらく危い世界“死者との対話が可能?”」という番組(ドイツ作製)を観ました。
死別した身近な親族や恋人などとAIを通じて交流する――メールのやり取りからヴァーチャル・リアリティまで各種あり――というものです。
むろんAIには、事前に亡くなった人のデータをしっかり学習させて臨むわけですが、そこで繰り広げられる「一喜一憂」の場面に、私はある種のおぞましさすら感じました。
中には、最初「今は天国にいて幸せ」とメールが送信されクライエントに喜びと安堵感を与えていた(AIの)元恋人が、数日後には「今は地獄で、酷い状況だ」と訴える場面も出てきました。
そこにはもはや、本当の死もなければ、本当の生もありません。
あるのは、嘘の情報に翻弄される哀れな現代人の姿です。

私はこれまで、ブログで紹介してきたように、目下のテーマ「Big Mismatch」(現代の新しいテクノロジーと古い機械論的思考の大いなるミスマッチ)を、核開発、バイオテクノロジー、AIというの3つの分野で具体的な展開を試みてきました。
そしてこの冬、英文としては最後の予定となる論文をオープン・ジャーナルに掲載しました――Applied Sciences Research Periodicals -ISSN 3033-330X February 2025, Vol.3, No,1 pp.62-79 “Big Mismatch between the New Technology and the Old Mechanistic Viewpoint”。
しかし実際には、AIに関しては専門分野的にも一番遠いということもあり、問題点の急所を十分には突いていないのではないかという感覚がいつまでも残り鬱々としていました。

ところが、ようやく「これだ」と思える著書に出会いました。
ジェフ・ホーキンスの『考える脳 考えるコンピューター』(ON INTELLIGENCE――How a New Understanding of the Brain Will Lead to the Creation of Truly Intelligent Machines, 2004) (2023年新版,早川書房)(以下、H-1と記す)、 『脳は世界をどう見ているのか』(A THOUSAND BRAINS――A New Theory of Intelligence, 2021)(2022年,早川書房)(以下、H-2と記す)な る2冊です。
何となくタイトルは平凡でとらえどころがないような印象ですが、これまで読んだものと全く異なり、的を得ているという感触を持ちました。

そもそも人間の知的な営みが脳容積の約7割を占める大脳新皮質によってなされることは周知のことなのに、その特徴のないひだとシワの白質・灰白質の塊とイメージがつながらなかったのです。
さらに、軸索や樹状突起をもつニューロンやシナプスという連結機能によって情報が伝わると言われれば、それが知性の発生かと、何となくと納得しようとしてきました。
ついには、脳の中のニューロン間の動きを人工的に模したとされるニューラルネットワーク(NWW)により機械学習で生成AI――そして今をときめくChat-GPT――が出現しました。
その危険性については、開発者も含めて警告を発しており、各国で規制も始まってはいますが、――市場の力には勝てません。
私は、NNWが現実の脳とは違うこと、故にブラックボックス問題やハルシネーションを起こすことを指摘しましたが、その原因として少なくとも量子力学的考察が必要ではないかと提案することしかできませんでした。

ホーキンスは、新皮質で具体的に何が生じているかを、その階層構造の下に長年かけで解明してきました。
その手法は大方の研究者と違って、例えば「長年にわたって、ほとんどの科学者は逆方向のつながりを無視してきた。
新皮質が感覚の入力を受けとり、それを処理し、必要な行動をとるという観点で脳の働きを解明しようとするかぎり、情報に逆の流れは不要だ。感覚野から運動野へといたる、順方向の流れだけを考えればいい。
だが、新皮質の重要な機能が予測をたてることだと気づいた途端に、脳のモデルは逆方向のつながりが必要になる。
最初の入力を受けとる領域へと、情報を送り返してやる必要がある。
予測をするためには、起きると思ったことと実際に起きたことを、比較しなければならない。
実際に起きていることが階層をあがっていき、起きると思うことが階層をくだっていく」(pp.169-170)という具合です。

本来であれば、その具体的な内容をこそ紹介すべきですが、私自身未消化部分もありで、ここでは割愛し、その代わりH-1の「まえがき」にある自問自答を紹介します。
というのも、ここに彼の考え方のエッセンスが要領よく述べられているからです。
H-1の方がH-2より17年も前に書かれているにもかかわらず、その考え方は基本的に同じで、しかも課題意識が鮮明にでていて分かりやすいのです。
実際、日本におけるAI研究の第一人者である松尾豊はH-1の解説(2023年6月)で「…新米の研究者としてAIの活動を始めてすぐ、先輩の研究者から勧められて読んだ。
そして、衝撃を受けた。
何度も繰り返し読んだ。
これほど繰り返し読んだ本は後にも先にもないというくらい精読した。
その後の私の研究者としての考えを形作った本である」(H-1, p.369)と述懐しています。
関心のある方はH-1だけでも読まれることをお勧めします。

さてその自問自答の概略ですが――番号は私がつけたものです:
① コンピュータは知能を持つことができるか?
     ➡ そう思わない:脳とコンピュータの働きは根本的に異なっている
② NWWは知能を備えた機械に発展しないのか?
     ➡ 脳のニューロンの働きを解明することなく、単純な構造のNWWに頼っているので 
       はコンピュータのプログラムと同様、知能を備えた機械に発展する見込みはない。 ③ 脳がどのように働くかを解明することは、なぜそれほど難しかったのか?
     ➡ いくつかの直観的な仮定が間違っていたために、研究者がまどわされてきた。
       最も大きな誤りは、知能が知的な振舞いによって定義されるという思い込みにある。
④ 知能が振舞いで定義されないのなら、その本質は何なのか?
     ➡ 脳は記憶にもとづくモデルを使い、将来の出来事を絶え間なく予測する。
       未来を予測する能力こそが知能の本質だ。
⑤ 脳は実際にどのように働くのか?
     ➡ 知能は(大脳の)新皮質に宿っている。
       新皮質はきわめて柔軟で、さまざまな種類の能力を発揮するが、細部の構造は驚く
       ほど均一だ。
   部位によって、視覚、聴覚、触覚、言語などに機能が特化されていても、すべての
       働きはいくつかの同じ原理に支配されている。
       新皮質の謎を解く鍵は、これらの原理と、とくに、その階層的な構造の解明にある。
⑥ 新しい理論によって、つぎに何がわかるか?
     ➡ 創造性、意識、先入観、学習など・・・突きつめれば、人間とは何か、その行動は
       なぜ起るのかという考察だ。
⑦ 知能を備えた機械をつくることは可能か? 
     ➡ もちろんつくることは可能だし、実際につくられるだろう。
       但し知能を備えた機械が人類に危害をおよぼすという考えには真っ向から反論する。

以上ですが、彼の考えに対する私自身のコメントを述べます:
〇 ③で研究者が惑わされてきたという「知能の定義」――知的な振舞いによって定義される――
 は、行動主義の影響が大きかったからと説いています(H-1, pp.35-36)。
 それはいわゆるチューリング・テスト「もしもコンピュータが人間の質問者をだまし、自分を人
 間と思わせることができれば、知能が備わっているものと定義される」(同p.33)にもよく現れ
 ています。
 私にはこの行動主義の影響というのが、量子力学の解釈問題に対する真の解決を遅らせている実
 証主義やプラグマティズムの影響に似ているように思われます。 

〇 ⑦の結論「知能を備えた機械は作ることができる」については、大いに疑問を抱いています。
 これについてはH-2の最後の章である「第16章 遺伝子vs.知識」でさらに展開されています。
 「脳の70%を占める新しい脳は、新皮質というひとつのものでできている。
 新皮質は世界のモデルを学習し、このモデルこそ、私たちが知的である所以だ。 
 知能が進化したのも、遺伝子を増殖させるのに役立つからである。
 私たちは遺伝子に奉仕するためにここにいるのだが、古い脳と新しい脳の力関係が変わり始めて
 いる。・・・
 私たちがどれだけ賢くなっても、新皮質は古い脳とつながったままだ。
 テクノロジーが強力になればなるほど、利己的で短絡的な古い脳の行動が。私たちを絶滅に導く
 か、社会の崩壊と暗黒時代に追い込むおそれがある。・・・
 私たちはジレンマに直面している。
 「私たち」――新皮質に存在する知能による私たち自身のモデル――はとらわれている。
 死ぬようにプログラムされているだけでなく、無知なけだものである古い脳の支配下にある、体
 の中に閉じ込められているのだ。・・・
 古い脳は過去に遺伝子の複製を助けてきた行動を引き起こすが、そうした行動には愉快でないも
 のも少なくない。
 私たちは破壊的で争いを引き起こす古い脳の衝動を抑制しようとするが、いまのところ、必ずし
 も抑制できていない。
 地球上の多くの国々がいまだに、財産欲、性欲、そしてお山の大将的支配欲という、主に古い脳
 が決める動機をもつ専制君主や独裁者に治められている。
 専制君主を支えるポピュリスト運動も、人種差別や外国人嫌いのような古い脳の特性にもとづい
 ている」(H-2, pp.281-283)。
 
 こうして彼は、古い脳を切り離して新皮質と同様の原理で作動する「知能を備えた機械」という
 (私にとっては)驚くべき結論に到達します。
 ここで最も問題と思われる部分は、古い脳と新皮質とを機械的に分離して考えている点です。
 ここには、社会の崩壊をもたらすものは古い脳から発生していると想定し、これを切り離せば、
 純粋な知能が取り出せるという機械論的発想があります。
 実際、新皮質は哺乳類しか持っていません。
 ということは、哺乳類以外は古い脳しかないので、悪の塊ということになるのでしょうか。
 
〇 さらに言えば、知能を定義するのに本質的と見なされる「予測する能力」において、予測する
のは誰か――予測しようとしているのは誰か――という主体の問題があります。
 新皮質も元はと言えば、生物が環境の中で生きてゆくために古い脳から進化してきたものです―
 ―ホーキンスも知能の発達史を記述しています。
 人間の場合、(人類史的な)問題が発生してきたのは、環境として自然だけだはなく社会環境の
 比重が大きくなってきてからです。
つまり、我々の知能は自然の認識(自然科学)という点ではかなり成功してきたが――これとて
 も私のテーマであるミスマッチの問題が発生しているが)――社会科学や人間科学の分野ではあ
 まりにお粗末です。
 「知能を備えた機械」の開発の前に、社会や人間の認識の解明が急がれるのではないでしょうか。
 
 
 
 
  
                             

   

エマニュエル・トッド『西洋の敗北』

2025-02-09 16:13:53 | 日記
エマニュエル・トッドの『西洋の敗北――日本と世界に何が起きるのか』(文藝春秋2024年11月発刊2600円)を読みました。
この書はウクライナの反転攻勢が行われた2023年7月~9月に執筆されたものです。
著者トッドはフランスの歴史人口学者・家族人類学者で、「ソ連崩壊」「米国発の金融危機」「アラブの春」「16年米大統領選でのトランプ勝利」「英国EU離脱」などを次々と予言し、これらはいずれも的中しました。
彼の方法のユニークさは、通常の地政学的・政治経済学的手法に加え、家族形態や宗教・教育など、より深いレベルから説明されるところで、具体的には国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態などに着目することにより、より見通しよく説得力を持たせている点です。
今回は「西洋の敗北」――ウクライナの敗北はその1つの帰結――を予言しており、しかもここでいう「西洋」には、広い意味で日本も含まれているのであるから、我々にとってもそのインパクトは尋常ではありえません。

実はこの著書の要約をする予定でしたが、少々冗長になりそうで困っていましたら、都合よくドットに対するインタビュー動画を見つけました。
それは文藝春秋PLUS公式チャンネル(YouTube―2週間前)による本書の紹介動画でした。
そこで思い切って、このインタビューを中心に紹介することにしました。
著書からの補足も加えました(ただし超端折り)――括弧内の数はその著書からの引用頁です。
重要な箇所の割愛も多いので、関心を持たれた方は是非ご一読をお勧めします。

その前に著書の目次を掲げておきます:
日本の読者へ――日本と「西洋」(2024年7月7日)pp.1-6
序章 戦争に関する10の驚き pp.21-46
第1章 ロシアの安定 pp.47-80
第2章 ウクライナの謎 pp.81-128
第3章 東欧におけるポストモダンのロシア嫌い pp.129-150
第4章「西洋」とは pp.151-174
第5章 自殺幇助による欧州の死 pp.175-210
第6章「国家ゼロ」に突き進む英国――亡びよ、ブリタニア! pp.211-248
第7章北欧――フェミニズムから好戦主義へ pp.249-260
第8章 米国の本質――寡頭制とニヒリズム pp.261-290
第9章 ガス抜きをして米国経済の虚飾を正すpp.291-308
第10章ワシントンのギャングたち pp.309-326
第11章「その他の世界」がロシアを選んだ理由 pp.327-358
終章  米国は「ウクライナの罠」にいかに嵌ったか 1990年―2020年 pp.359-392
追記  米国のニヒリズム――ガザという証拠 pp.393-397
日本語版へのあとがき――和平は可能でも戦争がすぐには終わらない理由(2024/7/8) pp.398-412

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Ⅰ.『西洋の敗北』の趣旨
 ・海外では21カ国語以上で翻訳されるベストセラーですが英語訳は出版されておらず、それだ 
けこれは的を得ている――故に英米圏は読みたくない――証拠だと、トッドは「人生最高の 
知的成功の1つだ」と言う。

 ・2つの西洋:
  「“西洋”をいかに定義するか。二つの方法がある。一つは、教育の離陸と経済発展から見た 
広義の“西洋”だ。この“西洋”は、大国だけに限定した場合、イギリス、アメリカ、フラン
ス、イタリア、ドイツ、日本が含まれる。・・・もう一つはより狭義の“西洋”だ。自由主義
的かつ民主主義的革命を成し遂げたかどうかが基準となりイギリス、アメリカ、フランスだけ
になる。・・・広義の“西洋”は、歴史的に見て“自由主義的”ではない。イタリアのファシ
ズム、ドイツのナチズム、日本の軍国主義を生み出しているからである」(p.154)――イギリ
スの名誉革命(1688年)、アメリカ独立宣言(1776年)、フランス革命(1789年)が「自由
主義的西洋」誕生のきっかけとなった。

  以後は広義の「西洋」の定義を使用する。
「理由は単純だ。それがアメリカの覇権システムに対応する“西洋”だからである。
ただし、そこには“自由主義的西洋”と同時に“権威主義的西洋”も含まれていることは留意
しておきたい。1990年から2006年にかけてのロシアの発展がきちんと認められていたなら
ば、ロシアをこの“権威主義的西洋”に含めることができただろう」(p.155)

  「広義の“西洋”においてこそ、世界のその他の地域より早期に経済発展が起きており、これ
については、イタリアのルネッサンスとドイツのプロテスタンティズムという二つの文化的革
命が説明してくれる。
つまり私たちの近代は、権威主義的地域で最初に開花したというわけだ」(p.155)

 ・プロテスタンティズム:
  ヨーロッパの経済発展に寄与したプロテスタンティズムについては、マックス・ウェーバーが
言及しているが、「本質的な要因はもっとシンプルで、プロテスタンティズムは支配下にある
人々を常に識字化する、という点にある。
プロテスタントの信者は、誰もが聖書に直接アクセスできなければならないからだ。
そして読み書きできる人々の存在が技術および経済の発展を可能にする。
こうして、プロテスタンティズムは、意図せずして、非常に有能な労働力を形成したのである。
もちろん産業革命が起きたのはイギリスで、最も目覚ましい最後の経済的飛躍はアメリカで起
きたが、西洋の発展のそもそもの中心は、ドイツにあったというわけだ。
さらにそこに、プロテスタント国で早期に識字化したスカンジナビアを加えると、“第一次世
界大戦前夜の先進諸国”を表す地図ができあがる」(pp.155-156)

「西洋のプロテスタンティズムの中心は、“自由主義”と“権威主義”という二つの構成要素
にまたがっていると言える。一つの極はアングロサクソン世界、もう一つの極はドイツ(三分
の二がプロテスタント)にあるからだ。
フランスはカトリックの国だが、その地理的な近さから(基本的にプロテスタンティズム圏の)
西洋の最も発展した先進地域の内に居続けることができた」(p.156)

「プロテスタンティズムの良い側面には教育と経済の発展があり、悪い側面には、人間は不平
等だという考え方がある
さらにプロテスタンティズムは、国民国家の最初の発展の原動力にもなった。・・・
プロテスタンティズムこそが・・・特殊な集団意識の形態を各国民に最初に与えたのである。
・・・プロテスタンティズムは、聖書を読みすぎたことで“我こそは神に選ばれし者”という
自己認識に至った人々を出現させたのだ」(p.157)

 ・自由民主主義の危機(pp.158-164):
イギリスのプロテスタンティズムは議会と報道の両方で自由を開花させ、自由民主主義はイギ
リスにおいて他よりも早く誕生した(←絶対核家族構造:兄弟姉妹は皆平等)。
→英・米・仏が自由民主主義を競い合うように生み出した。

ドイツを含む広義の「西洋」の定義からすると、「西洋とロシアの根源的な対立」という見方
自体が奇妙。
全体主義の誕生(直系家族がナチズムを、共同体家族が共産主義を生み出した)に関して言え
ば、ドイツとロシアは、むしろイトコ同士の関係。
「今日の西洋は、(たとえば)“ロシアの専制体制”に対抗する“自由民主主義”を体現するの
は自らだと主張しているが、自由民主主義の発祥地であり、核心部であったイギリス、アメリ
カ、フランスにおいて、その自由民主主義が危機に陥ってしまっている」(p.159)

自由民主主義=国民国家、共通言語、普通選挙、多党制、表現・報道の自由、多数決の原理(た
       だし少数派の保護の保障の下で ←(リベラル:“自由な”))
「実は“最も保護されている少数派”は、全人口の1%、0.1%、あるいは0.01%を占めてい
る超富裕層である。
ロシアでは、同性愛者は保護されていないが、オリガルヒも保護されていない。
こうした観点から、西洋で「自由(リベラル)民主主義」と呼ばれてきたものは「リベ
ラル寡頭制(オリガルシー)」と位置づけ直される」(p.164)

ウクライナ戦争のイデオロギー的意味も変わってくる:
西洋の主流派の言説:「西洋の自由(リベラル)民主主義」VS「ロシアの専制体制」
➡「西洋のリベラル寡頭制」VS「ロシアの権威主義的民主主義」とすべし

 ・プロテスタンティズムの崩壊~ニヒリズム(現実の拒否)の出現
「1930年代のドイツのダイナミズム(~ナチズム)と現在のアメリカのダイナミズムは、空
虚を原動力としている点で共通している。
いずれも、政治は、価値観なしに機能し、暴力に向かう動きでしかなくなっている。・・・
今日のアメリカに私が見るのは、思想面における危険な“空虚さ”と強迫観念として残存して
いる“金”と“権力”である。
金と権力は、それ自体が目的や価値観にはなり得ない。
この空虚が、自己破壊、軍国主義、慢性的な否定的姿勢、要するにニヒリズムへの傾向をもた
らす」(p.266)
「高等教育の発展は人々を再階層化し、大衆の識字率が広めた平等を求めるエートス、さらに
は集団の帰属意識を消し去った。
宗教的結束もイデオロギー的結束も不可能となり、社会的アトム化と個人の希薄化のプロセス
が始動する。
共通の価値観によって統御されなくなった個人はこうして脆弱化してしまうので。
“高等教育を受けた人口が25%以上”という閾値にアメリカは1965年に到達した(ヨーロッ
パは少なくとも一世代分の後れをとった)。
興味深いのは、それがほぼ即座にあらゆるレベルでの知的衰退を伴ったことである。・・・
この教育成果の低下は、教育こそが切り札の1つだったプロテスタンティズムの消滅に結び付
けないわけにはいかない。
福音主義の異端性もここで再び明らかになった。
というのも、福音主義の普及は、白人アメリカ人において、教育水準がカトリックより低い層
と合致しているからだ」(pp.278-279)。

 ・「ロシアの権威主義的民主主義に対する西洋の戦いを主導しているのは、“自由民主主義”で
はなく、ニヒリズムによって磨き上げられた“リベラル寡頭制”なのである。・・・
アメリカの寡頭制の悲劇は、・・・大部分が虚飾でしかなく、しかも崩壊の過程にある経済の
上に君臨しているという点にあるのだ」(p.286)。

Ⅱ. ウクライナ戦争のゆくえ
 ・「ロシア社会の安定、ウクライナ社会の崩壊、旧ソ連圏の社会主義国の不安感と不信感、ヨー
ロッパの自立という夢の挫折、イギリスの国民国家としての衰弱、スカンジナビアの逸脱を順に
検討することで世界の危機の核心に近 づいてきた。
その核心とは、アメリカというブラックホールである。
政界が直面している真の問題は、ロシアの覇権への意思――ロシアの権力は非常に限られてい
る――ではなく、世界の中心としてのアメリカの衰退――限りがない――なのだ」(p.263)。

 ・「この戦争は、1990年に始まった一つの歴史 [ソ連崩壊] のサイクルを閉じる出来事である。
アメリカの対外的拡張主義の流れは、自国の中心部分の実体とエネルギーを枯渇させながら、
ロシアという無気力だが安定した国と衝突して、打ち砕かれたのである」(p.362)。

 ・ウクライナ戦争は、ベトナム、イラク、アフガニスタンと続く世界覇権の崩壊を受け入れられ
ずに戦争を拡大してきたアメリカの最後のリスクである。
トランプは、世界におけるアメリカの敗北をマネジメントすることになる大統領だ。
真の脅威はロシアではなくアメリカである――EUの敵はロシアではない。
  ウクライナ軍とキエフ政権の崩壊は近い。

Ⅲ. 日本への提言――日本はアメリカとどうつきあったらよいか
 ・日本は非常に困難な状況にある――中国、韓国といった隣国への対応も難しい。
日本にとってアメリカはパートナー、同盟国というより主人、支配国である。
しかも約束も守らず、信頼もできない相手である。
 
 ・アメリカの世界覇権で鍵を握っていたのは欧州、中東、東アジアという3つの地域。
ここでアメリカがしてきたことは、「同盟国」というより「属国」と呼ぶにふさわしい国々を
支配し続けるために、緊張を高め紛争や戦争を引き起こしてきた――しかもこうした国々の生
産物を使って。

 ・日本に勧めたいのは、「何もしないこと」「できるだけ何もしないこと」。
今日、「日本は国際政治にもっと関与すべきだ」という声が聞かれるが、むしろ「ある種の慎
重さ」を勧めたい。
可能な限り紛争を避け、事態をじっと見守ることが大切――これはドイツも同じであるが、ド
イツには好戦主義もあり、難しいかもしれない。。
戦争や中国の経済的台頭の意味は、この「米国一極支配の世界」から我々が抜け出しつつある
ことを示している。
「多極化した世界」というロシアのビジョンに近づいている。
歴史を踏まえれば、日本は「多極化した世界」への適応力がある。

 ・そこで日本への提言は、「慎重さを保ちつつ、多極化した世界に自らを位置づけること」。
もう一つ、日本の真の問題である「人口問題」に集中して本気で取り組むこと――適度な移民
の受け入れを進めると同時に出生率を上昇させること。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上ですが、現実のウクライナ戦争、ガザ紛争は極めて流動的な動きもあり、これからも慎重に注視したいところです。
いずれにせよ、トッド氏の考察のおかげで――必ずしも十分に理解しているわけではありませんが――明るい視野が開け、身も心も軽くなりエネルギーが沸いてきました。
なお彼のジェンダー論については、第7章のタイトル「フェミニズムから好戦主義へ」にも示唆されるように私には疑問が残るので、彼の他の著書『彼女たちはどこから来て、今どこにいるのか』(目下、日本語への翻訳中とか)を読んでから再考する予定です。

トランプ砲のゆくえ

2025-01-26 17:24:51 | 日記
いよいよトランプ砲の全開である。
1月20日(日本時間21日未明)の大統領就任式演説は「アメリカの黄金時代が今始まる(The golden age of America begins right now)」から始まり、聴衆の面前で次々と大統領令に署名して見せた。
彼は「ディープステートとの戦い」も明言していた。
日本でも「反グローバリズム」を掲げる人たちの中には、彼を救世主のように崇めている人もいる。

私はといえば、彼のWHO脱退・パンデミック条約離脱の方針や、ロバート・ケネディJr.の保健福祉長官への登用の意向には大いに期待する部分もある――それにしても最近、ロバート・ケネディJr.の報道がぱったり途絶えているのが気がかりではある・・・。
また戦後80年にわたる、アメリカべったりに洗脳させられてしまった日本の政府・国民が、いよいよ自分の頭で考え、自分の足で歩かざるをえないところまで追い詰められ、新しい歩みを踏み出すチャンスになるのではと、これまた期待してしまう。
しかしながら、就任する前から示唆された「メキシコ湾の改名」「パナマ運河の奪還」「グリーンランドの買収」といった一方的で攻撃的な外交戦術、就任式当日にまるで機関銃のように42個の大統領令や覚書(パリ協定再離脱、WHOから脱退、関税強化、不法移民の強制送還、議会襲撃事件の恩赦、TikTok再開、石油採掘推進、テレワーク禁止、大量解雇可能、性別「男」「女」のみとする等々)を発する姿を目の当たりにするとき――しかも彼は署名に用いたペンを観客席に投げるというパフォーマンスまでみせてくれた――悪質なフェイク動画でも見させられているような気分に陥った。

ネット上の報道で、私が最もストンと胸に落ちたのは、『デモクラシータイムズ2025/1/22(山田厚史の週ナカ生ニュース)<世も末・・・斎藤・立花・フジ・トランプ>』であった。
トランプ現象に割り当てられた時間は短く10分程度であったが、その本質を直截に教えてくれた。
即ち、アメリカでこれまで取り残された人々の支援によって当選したトランプであるはずなのに、集まってきたのはアメリカの権力でさらに一儲けをしようとする大金持ちばかりであった。
トランプは世界を賭博市場にしようとしている。
黄金時代といっても、それはトランプの黄金時代で、しかも今がピーク。

とりわけ「デジタル課税」――余り知られていない――の話は、興味深く分かりやすかった:
現在、GAFAMを中心として巨大IT企業が世界中で途方もない金稼ぎをしている。
しかもタックスヘイブン等を駆使して、実質、税金を払っていない。
そこでOECD(経済協力開発機構)を中心に140カ国が何年もかけて協議し、ようやく2021年に大筋合意が得られ、現在、この国際課税改革の枠組みを作成している最中であった。
そこへトランプ新政権が現れ、20日にこの課税改革からの離脱を示唆したのである。
つまり、ホワイトハウスが発表した政権の優先事項に「米国の税制はこれ以上、米企業を苦しめる外国組織に左右されない」と明記した。
トランプ得意の“ちゃぶ台返し”である。

これまで紆余曲折しながらも、ヨーロッパを中心にAI規制の議論も積み重ねられてきた。
しかし今まさに世界を動かしている巨大ITグローバル企業が一番多いのはアメリカ。
イーロン・マスクを筆頭に、トランプにすり寄るIT企業家たち――仲たがいも垣間見えるが。
トランプは豪語する「世界秩序はくそくらえ、アメリカ・ファーストだ!」と。
これはもう、世界を手玉にとるトランプ・ファーストではないか。
そして、このような人物の登場を許すアメリカという国はどこへ向かうのか。

しかしながらである。。
世界の歴史の中にトランプを置いてみたとき、その動きは特に唐突にも奇異にも見えてこない。
彼は実業界で養ったディールの感覚で、世界の流れをつかみ、その支配を試みているかのようだ。
しすて既にヨーロッパでは、各地で「自国第一主義」「反移民・難民」「反イスラム」「反気候変動政策」「反グローバリゼーション」等を掲げる右派勢力の拡大が顕著になってきていいる。。
例えば、イタリア、スウェーデン、フィンランド、ハンガリーで右派が政権に参加し、フランスやドイツ、ベルギーなどでも右派への支持が高まっていた。
特にフランスでは、EU懐疑主義は急進左派にも共通した政策となっている。
右派も左派も伝統的な経済政策を維持することが難しくなり、いずれもがポピュリズムに訴えることで支持基盤を広げる道を選んだ結果と考えられている。
こうしてみると、ヨーロッパそのものが、トランプ的な現象を生み出していると言える。

実際、エマニエル・トッドは最近の著書『西洋の敗北――日本と世界に何が起るのか――』(文藝春秋2024年11月第一刷)で、ウクライナ戦争を論じ、「西洋の敗北は確実」であり「西洋はロシアに攻撃されているのではなく、むしろ、自己破壊の道を進んでいる」という(p.28)。
そして「西洋の危機、とりわけアメリカの末期的な危機こそが地球の均衡を危くしている。
その危機の最も外部の波が、古典的で保守的な国民国家ロシアの抵抗の壁に突き当たったというわけだ」(p.29)と分析する。
トッドはここからさらに、日本への貴重な提言もすることになるがここでは割愛する――実は,
私はまだちゃんと読んではいない。

さてこうなってくると、いわゆる「ディープステート」だの「反グローバリズム運動」等というネーミングも、気を付けた方がよさそうだ。
因みにブログ[2024/10/20]で英国守旧派について紹介した藤井厳喜氏は、最近では「第4の勢力」の台頭について言及している――氏の主催する『ワールド・フォーキャスト』の宣伝より:
第1の勢力=先進国における民主的なナショナリスト。
第2の勢力=プーチンや習近平のような独裁的なナショナリスト。
第3の勢力=反国家的なグローバリスト。
これまでは「国際情勢とは、以上の3つの勢力の相克である」と説明できたが、2025年では第4の勢力を無視するわけにはいかなくなったと言う。
第4の勢力=世界中に争いの火種を撒き散らし、先進国を破壊して世界秩序の破壊をめざす存在。

藤井氏が何を言いたいのか、今の段階ではよく分からないが、私自身の考えは前回のブログでも示唆したように、500年の歴史の歪みの総決算が今、現れ始めているのではないかというものである。
つまりこの間、大航海時代から植民地時代を経て、西洋諸国が科学・技術の粋を集めて世界の支配を巡り覇を競ってきた――20世紀後半からは、その中心はアメリカであった。
スペイン・ポルトガル→・・→大英帝国→・・→アメリカ→・・→超巨大テック企業?
これを推進してきた思想は、キリスト教(とりわけそのベースである旧約聖書)の選民思想ではないかと私は思う。

だがこれは現在、避けられない矛盾に突き当たっている:
①地球は有限であるが支配層の欲望は無限に膨らむ→コントロール機能を失いつつある世界
②科学の権威失墜:世界に秩序を与える力を失った科学(←機械論を克服できていない)
③肥大化・暴走化する技術主義(←機械論というミスマッチ)  
④移民・難民化する被支配層→格差・分断の拡大→不安定化する社会
⑤自国第一主義は人類の生存要件である地球環境の破壊を導く(←現代テクノロジーの特性)
等々。
いずれにせよ、一見この出口なしの自壊しつつある西洋世界の中で、トランプ現象はその最後のあがきの始まりのように見える。
この解決には5000年前(縄文文化の時代)に視点を移してみると良い、というのが私の持論であるが、これはまたの機会に展開したい。

激動の年を退歩で迎える

2025-01-06 16:56:45 | 日記
この年末年始にかけ、怒涛のようにさまざまな情報が世界を駆け巡りました―むろん今も続いています。
そんな中で、私はといえば、目も耳も少々劣化を始めているのですが、逆に見通しが、というか見晴らしが良くなってきているような気がするのです。
生前、失明された高林先生が「目が見えなくなったら心眼が働くかと思ったが、そうはならなかった」と彼独特のユーモアで語っていたことを思い出しました。

日々流れてくる膨大な数のネット上の動画――テレビや新聞ではとうてい得られない、ニュースや解説や講座、むろんあくどい(偽)宣伝も――これらをここ数年見続けてきましたが、ようやく流れがつかめてきたように思います。
例えば、この年末年始で唯一、最後まで納得できた話は浜矩子氏の1月3日の動画「ニセ預言者に惑わされるな」(デモクラシータイムズ「山田厚史のここが聞きたい」20241226)でした。
彼女のいう「ニセ預言者」の見つけ方は2つ:
①敵は〇〇だと言う人
②敵の居場所は〇〇だと言う人
さすがと思いました。
合法的に全体主義国家を作りあげ、狂気の世界へと導いたヒットラーの「敵はユダヤ人だ」という単純明快なスローガン戦術を思い出します。
現在の、一部に見られる、手っ取り早く敵を指摘し煽ってゆく風潮には注意が必要です。

ということで、私自身の2025年を迎える心境を、カタカナまじりの漢詩で表現してみました:
今正ニ世界ハ混沌ニ叫ブ   五百年五千年ノ嘆キヲ
一退歩二退歩を要ス     而シテ集ヒテ縄文ノ空ノ下ニ遊ブ

少し注釈をすれば、ここで“退歩”という言葉、これは道元禅師の言葉「回向返照の退歩を学ぶ」に出てくる“退歩”に通じるものです。
回向返照(えこうへんしょう)とは、原因を外ばかりに求めず、真実の自己に照らして内省せよ、という戒めの言葉(臨済録にある禅語)です。
つまり、人はとかく外界に向きがち、他人に振り回されやすいが、自分の心を見つめて振り返る(退歩)ことが必要と説いています。

私の漢詩に出てくる“退歩”は、人類史を振り返る“退歩”です。
「500年の嘆き」は500年にわたる白人支配による歴史の歪みです。
「5000年の嘆き」は有史以来の男性支配による歴史の歪みです――日本はせいぜい2000年か。
従って、一歩振り返るだけでは500年の反省しか」できません。
二歩目の退歩は、5000年の反省です。

現在、人類は(互いに関係しあう)3つの側面で滅亡の危機に立たされています:
環境問題――生態系の一員としての人間という自覚がない
紛争・戦争――人類社会の平和共存は可能か
科学・技術――人類滅亡の危機を孕む力を持ってしまった
これらは、上記2つの退歩によって初めて、根本的な解決の目途が立つと思います――その詳述はここでは割愛します。
いずれにせよ、2つの退歩が意識されるようになった時、縄文の世界が、新たな段階で蘇ってくるように私には思えるのですが、いかがでしょうか。
今年もよろしく。

パンデミックはカオスの始まりか

2024-12-31 20:21:35 | 日記
今年の締め括りは、新型コロナ・ワクチン騒動は一体何であったかの最終報告にします。
幸い、宮沢孝幸氏がこの8月に『新型コロナは人工物か?~パンデミックとワクチンをウイルス学者が検証する』
をPHP新書で出版され、全体像を知る上で大いに参考になりました。
以下、箇条書き的に羅列します(括弧内の頁数は上記宮沢氏の著書の頁数)。

①コロナウイルス自体および(その)ワクチンに対しては未知の要素が大きい
 ・教科書にはコロナウイルスに対する記述も少なく、悪い抗体ができる(感染助長、病態悪化)  
  記述は皆無で、これを知らない医師も少なくない(p.115)。
 ・従来型風邪コロナウイルスに対してもワクチンの影響は未だ未知。 ・SARSやMARSでは
ADE(抗体依存性増強)による感染増強・病態憎悪の発生 → 新型コロナはSARSに類似 →
ADEが起こりうると考え、多くの研究者は新型コロナウイルスワクチンの開発は難しいと考
えていた(pp.116-117)。
 ・コロナウイルスでは、ワクチンによって抗体が誘導されればよいという単純なことではない。
良い抗体と悪い抗体が誘導され、その比率は人により異なる。
 ・多くの国民が一度に同じ型のコロナウイルスに対して、免疫をもつことが及ぼす影響が未知。
新型コロナに対するワクチンをヒトに大量に接種することは人類未踏 → ウイルスの進化に
及ぼす影響も未知(pp.110-112)。

②遺伝子ワクチンの登場
 ・そもそも従来型ワクチンそのものも完全ではない――成功しているのは天然痘のみ。
 ・従来型は、病原性をなくしたり弱めたりした病原体(ウイルスや細菌)の一部などを接種する
  ことで、免疫システムが次の病原体の侵入に備えられるようにして、重篤な感染症を予防する。
作り方は鶏卵でウイルスを増やす等、一般に手間がかかる。
 ・遺伝子ワクチンが、従来型と全く異なる部分は、接種されるものが病原体(の一部)ではなく、
病原体を作る遺伝子(の一部)だという点 → 細胞内にとりこまれたワクチンは(その遺伝子
の作用により)スパイクをせっせと作る。
今回は、新型コロナウイルスのスパイク(表面の突起)を作る遺伝子が用いられた。
 ・挿入する遺伝子も人工的に作り、ワクチンを作るプロセスが機械的で従来型に比べ極めてスピ
ーディに効率よく大量生産される――製薬企業はここで一儲けする狙いをつけた。
 なお、ここで用いられる遺伝子には、DNA(アストラゼネカ社)とmRNA(ファイザー社等) 
 の2種類あるが、DNA型の方には重篤な副作用がみられたので途中で中止となった。

③mRNAワクチンの危険性
 ・mRNAを脂質性ナノ粒子(LNP)で包むことにより、受容体を必要とせず(血流に乗って) 
生体内のあらゆる細胞に届けられる可能性がでてくる → 体中のあらゆる組織でスパイク病
(後述)の可能性(世界中で報告されつつある)。
 ・実際には、細胞内で分解されにくくするため、修飾されたmRNAが使われた――この業績
でカリコ博士らは2023年のノーベル生理学・医学賞受賞。
修飾mRNAは細胞内では安定であるが、それでも数日以内には分解されると考えられていた。
ところが、4カ月経ってもスパイクタンパクが低レベルで検出されることが分かった。
一部の細胞ではスパイクが長期間産生される → ワクチンを3回接種した頃から超過死亡が
目立ち始めた!→ mRNAワクチンの頻回接種が超過死亡の原因である可能性(pp.146-176)。
 ・スパイク病(Spikeopathy)(p.143-147)
新型コロナウイルス → 受容体を通じて細胞に侵入 → 感染細胞はスパイクを提示 → 免疫
により攻撃 →スパイクと抗体と補体の結合 → 炎症 → サイトカインストーム → 血栓
このプロセスはウイルスのみでなmRNAワクチンでも発生し(しかも受容体不要)、さらに 
ワクチンによっ てできるスパイクの数は人によって異なり、コントロールできない。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
④オミクロン株は人工的に変異されている
・実は宮沢氏の著書では、この部分(第二章オミクロン変異体は人工物か:pp.47-101)が、これ
  までの彼の著書に出てこない新しい部分であり、以前このブログでも一部紹介してきた。
オミクロン変異体の出現がいかに衝撃的なものであったかの理由を、彼は2つ指摘する:
(i)最初の変異種(BA.1)の出現地が、南アフリカ共和国という、新型コロナが大流行してい
  たわけでもなく(当時)ワクチン接種率が高いわけでもない(30%)国に、突然出現した。
(ii)オミクロン変異体には変化する過程を示す中間体が見つからなかった。
 実際カラー写真で与えられた、人工的に変異を起こさせたとしか思えないシステマティックな
 変異種の表は強烈な印象を与える――関心のある方は是非直接ご覧ください。
・ところが、このデータを示す論文を海外のウイルス学専門誌に投稿すると、内容がセンセーシ
 ョナルであることを理由に審査にさえ進まなかった――論文の内容では人工ウイルスの合成に
 関与している国も容易に推察されてしまうため、欧米の雑誌では掲載は無理だという結論に至
 った(p.99)。  
・宮沢氏は「私は新型コロナウイルスが人工ウイルスであるならば、それはとてつもない犯罪で
 あり、二度と繰り返してはならないと思っています。
 その観点から、人工ウイルスであるのかに関して真剣に科学的な議論が必要だと考えています。
 しかし科学の世界ではこの議論すらも封殺されているようです」と言います(p.100-101)。                                                                                                                                                                                                                                         

⑤パンデミック・ワクチンのセットが意図したもの
 いまやウイルスは分子生物学的手法で簡単に人工的につくることができる。
 そこで宮沢氏は最後の章(第五章 誰が作ったのか:pp.177-194)で  
 「今のところ、武漢ウイルス研究所では、アメリカの研究者の指示によっ                                          
 て実験をしていたのではないかという説が有力です。
 それが事故で実験室から漏れたのか、あるいは故意にばらまかれたのかということですが、私は
 今となっては故意の可能性が高いと考えています。
 武漢型の新型コロナウイルスだけが流行したのだとしたら、事故説も有力なのですが、その後出
 現した変異体がいずれも人工ウイルスである可能性が高く、それが都合のよいタイミングで次々
 と事故で漏れたとは到底考えられないからです」(P.186)という。
 また「私はmRNAワクチンと新型コロナウイルスはセットで計画されていたのではにかと疑っ
 ています。
 あまりにも早くmRNAがワクチンが世界市場に投入されたことから、事前に周到に準備してい
 たのではないかと思ってしまいます」(p.188)。
 そして「新型コロナウイルスが人工であり、mRNAワクチンを広めるため、そしてその先のmR
NA製剤の普及のために新型コロナウイルスが利用されたのだとすれば、これは紛れもなく犯罪 
です」(pp.196-197)とも。

⑥混乱は始まったばかり
 宮沢氏は最後にいう「今、世の中は新型コロナウイルスに関してのみいえば以前よりは落ち着い
 てきましたが、私の目には混乱は始まったばかりではないかとすら映っています」(p.198)と。                                                                                     
 すでに戦後例がない程の超過死亡も出ている。

現在、近代西欧が築き上げた(かに見える)科学的精神が見事なまでに崩れつつあるようです。
核開発、気候変動、mRNA製剤、AI開発など、いずれも人類に致命的な打撃を与える可能性を持つものであるにもかかわらず、
これらに対する評価が科学的に定まっていません――トランプ政権になればパリ協定からは直ちに離脱するでしょう。
しかもテクノロジーは、個別の分野ごとに個々バラバラに加速度的に「進化」しており、トータルで人類がどの方向に向かっているかは誰も知りません。
そこには科学的精神のもつ真実に対する誠実さが失われ、無知に対する鈍感さ――レプリコンまで許す日本人!――と人を支配するためにテクノロジーを利用するという邪悪さがはびこってます。
これを解決するには、19世紀までの古典的機械論的自然観を克服する必要があります。
いつもの私のテーマです。
良いお年を!