科学基礎論学会発表(2025年6月22日)の要旨が出来上がりましたので紹介します。
趣旨:人類史上未曾有の危機的時代に突入しつつある現在、その危機の原因を探りこれを克服する方向を示すべき科学が、すでにその使命を放棄しているかのような様相を呈していること(=科学の非科学化現象)を明確にしたい。
Ⅰ. 近代科学の歴史的位置
①西洋におけるNatural Philosophy という出発点
近世哲学の祖デカルトの物心二元論(心身二元論:人間の身体~自動機械)
→ 宗教と科学の分離
『方法序説』(理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法)(1637)
数学を基にした4つの規則:
明証性の規則/ 分析の規則/ 総合の規則/ 枚挙の規則 → 機械論的方法
②自然科学の確立と発展
ニュートン『プリンキピア』(自然哲学の数学的原理)(1687)
(天上と地上の機械論的統一)ニュートン力学~ マックスウェル電磁気学
→ 19世紀末:古典物理学の完成(マクロ世界の掌握)→機械論的自然観の確立
③科学と技術の連携・統合 → 産業革命(第一次、第二次:軽、重工業の機械化)
→大量生産、自動化(機械論の全盛期、常識としての機械論)
機械論=機械をモデルとして対象を考察する態度(物質的な諸要素の集合とその
決定論的運動)~目的論、生気論、超自然と対立)
↓
*西洋による世界支配が進む:原料供給・市場としての植民地など
*科学・技術の発達により神を真面目に信じる人の減少
→ ニーチェ「神は死んだ」(『喜ばしき知識』第五書・われら恐れを知らぬもの)(1886)
Ⅱ. 破綻した機械論とテクノロジーの暴走
①20世紀科学のミクロ世界への侵入
ミクロ世界~量子力学という形式(数式)はできたが、機械論と矛盾。
マクロ世界とミクロ世界を認識論的に統一する哲学が未確立
→ノイマン『量子力学の数学的基礎』(1932)
観測問題の提起とAbstract Ego による「妥協」;物心平行論の擁護
②第二次世界大戦:核爆弾の製造・投下(←機械論的発想)
~人類史的危機の到来の始まり~思考停止の始まり
『狂ったサル』セント・ジェルジ(The Crazy Ape and What Next?)(1970)
「科学者という蛮族」高橋源一郎(サンデー毎日2024/4/21映画『オッペンハイマー』)
③戦後、第三次産業革命(コンピュータ革命):哲学(世界観)なき機械論の暴走
地上の物質の根源である核の破壊。生命の物質的根源である遺伝子の機械論的操作。
トータルに見れば、人間の知性・知能そのものを劣化させつつある現在のAI開発。
これらが現在の地球人類を危機的状況に追い込んでいる。
Ⅲ. 現代科学の非科学化現象~「部分的機械論(部分的実証主義)+オカルト」の横行
①量子的世界の異質性の誤った理解
・対象の状態は、抽象的な複素ヒルベルト空間内のベクトルとして表されているにもか
かわらず、リアルな3次元空間にすりかえて理解(イメージ)している。
(例:重ね合せの原理→シュレーディンガーの猫?、多世界論→パラレルワールド?)
・測定の瞬間(測定値を得た瞬間)における、非因果的変化――いわゆる波束の収縮―
という確率事象を古典的な確率(存在確率)にすりかえて理解(イメージ)している。
実際は、測定装置を設定して初めて得られる発見確率であり、測定と同時にその(認
識のための)ヒルベルト空間は消える(不要となる)。
この確率事象が、人間が制御できる能力の本質的限界を示すものであるという自覚が
ない(例:原発や放射能汚染に対する楽観論)。
(高林武彦『量子力学――観測と解釈問題』2001年、参照)
②ミクロとマクロを統一した全体を見通す哲学(自然観、世界観)がないため、個別部
分の実証主義的研究で満足し、最終的にこれらを機械的に、或はオカルト的につなげてゆくと
いう非科学を許している。
そこで現代人にとっては、ミクロ世界を利用したテクノロジーはマジックに近くなる。
しかもこれえが「科学的」と称し押し付けられるため、人々はますます真の理解から遠ざけられ、非科学が一層進むことになる。
③核開発に見られる機械論的・非科学的発想が人類滅亡の危機を招いている
地球上の生命活動の基礎である物理・化学的反応は基本的に核の安定の下で行われる。
その核の破壊から莫大なエネルギーが得られる(この部分は正しい機械論)事を兵器
として利用したことは人類にとって致命的――正に、猿が鉄砲を持ったようなもの。
その後は核兵器開発競争や原発(事故)等の放射能汚染拡大という自滅路線を進んでいる。
④バイオテクノロジーにおける、一面的で機械論的発想による開発――カット&ペース
ト(命なき機械論)の遺伝子操作など――が40億年という歴史によって形成されて
きた生命や生態系の秩序の崩壊をもたらす可能性(危険性)がある。
(例:人工的遺伝子ワクチンの世界規模の接種)
⑤現在のITとりわけAIの急激な開発は主として市場原理(軍事を含む)によるもので
あり、結果的に社会の混乱、社会的病理現象、知の劣化を招いている。
AIは極めて有効な側面もあるが、AGI(汎用人工知能)という幻の目標の下に、非
公開の危険な開発競争が世界を蝕んでいる。
(フェイクニュース、ネット依存症、ネット犯罪、エコーチェンバー効果、格差と分
断の進行、自分の頭で考えることを止める、等々)
⑥地球環境汚染や気候変動(の一部)もグローバルな人間活動によるものであるが、こ
れらは典型的な地球規模の複雑系で、極めて多くのパラメーターによるコンピュータ
ー解析のシミュレーションを用いざるを得ず、一般人にはその真偽の判定が難しい。
そこで、場合によりその結果をとりあえずは信じるしかないが、この方法が有効であ
るためには、科学者や技術者が少なくとも人類に対して公平無私である必要がある。
そのためには戦争のない平和な世界の実現が大前提となる。
趣旨:人類史上未曾有の危機的時代に突入しつつある現在、その危機の原因を探りこれを克服する方向を示すべき科学が、すでにその使命を放棄しているかのような様相を呈していること(=科学の非科学化現象)を明確にしたい。
Ⅰ. 近代科学の歴史的位置
①西洋におけるNatural Philosophy という出発点
近世哲学の祖デカルトの物心二元論(心身二元論:人間の身体~自動機械)
→ 宗教と科学の分離
『方法序説』(理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法)(1637)
数学を基にした4つの規則:
明証性の規則/ 分析の規則/ 総合の規則/ 枚挙の規則 → 機械論的方法
②自然科学の確立と発展
ニュートン『プリンキピア』(自然哲学の数学的原理)(1687)
(天上と地上の機械論的統一)ニュートン力学~ マックスウェル電磁気学
→ 19世紀末:古典物理学の完成(マクロ世界の掌握)→機械論的自然観の確立
③科学と技術の連携・統合 → 産業革命(第一次、第二次:軽、重工業の機械化)
→大量生産、自動化(機械論の全盛期、常識としての機械論)
機械論=機械をモデルとして対象を考察する態度(物質的な諸要素の集合とその
決定論的運動)~目的論、生気論、超自然と対立)
↓
*西洋による世界支配が進む:原料供給・市場としての植民地など
*科学・技術の発達により神を真面目に信じる人の減少
→ ニーチェ「神は死んだ」(『喜ばしき知識』第五書・われら恐れを知らぬもの)(1886)
Ⅱ. 破綻した機械論とテクノロジーの暴走
①20世紀科学のミクロ世界への侵入
ミクロ世界~量子力学という形式(数式)はできたが、機械論と矛盾。
マクロ世界とミクロ世界を認識論的に統一する哲学が未確立
→ノイマン『量子力学の数学的基礎』(1932)
観測問題の提起とAbstract Ego による「妥協」;物心平行論の擁護
②第二次世界大戦:核爆弾の製造・投下(←機械論的発想)
~人類史的危機の到来の始まり~思考停止の始まり
『狂ったサル』セント・ジェルジ(The Crazy Ape and What Next?)(1970)
「科学者という蛮族」高橋源一郎(サンデー毎日2024/4/21映画『オッペンハイマー』)
③戦後、第三次産業革命(コンピュータ革命):哲学(世界観)なき機械論の暴走
地上の物質の根源である核の破壊。生命の物質的根源である遺伝子の機械論的操作。
トータルに見れば、人間の知性・知能そのものを劣化させつつある現在のAI開発。
これらが現在の地球人類を危機的状況に追い込んでいる。
Ⅲ. 現代科学の非科学化現象~「部分的機械論(部分的実証主義)+オカルト」の横行
①量子的世界の異質性の誤った理解
・対象の状態は、抽象的な複素ヒルベルト空間内のベクトルとして表されているにもか
かわらず、リアルな3次元空間にすりかえて理解(イメージ)している。
(例:重ね合せの原理→シュレーディンガーの猫?、多世界論→パラレルワールド?)
・測定の瞬間(測定値を得た瞬間)における、非因果的変化――いわゆる波束の収縮―
という確率事象を古典的な確率(存在確率)にすりかえて理解(イメージ)している。
実際は、測定装置を設定して初めて得られる発見確率であり、測定と同時にその(認
識のための)ヒルベルト空間は消える(不要となる)。
この確率事象が、人間が制御できる能力の本質的限界を示すものであるという自覚が
ない(例:原発や放射能汚染に対する楽観論)。
(高林武彦『量子力学――観測と解釈問題』2001年、参照)
②ミクロとマクロを統一した全体を見通す哲学(自然観、世界観)がないため、個別部
分の実証主義的研究で満足し、最終的にこれらを機械的に、或はオカルト的につなげてゆくと
いう非科学を許している。
そこで現代人にとっては、ミクロ世界を利用したテクノロジーはマジックに近くなる。
しかもこれえが「科学的」と称し押し付けられるため、人々はますます真の理解から遠ざけられ、非科学が一層進むことになる。
③核開発に見られる機械論的・非科学的発想が人類滅亡の危機を招いている
地球上の生命活動の基礎である物理・化学的反応は基本的に核の安定の下で行われる。
その核の破壊から莫大なエネルギーが得られる(この部分は正しい機械論)事を兵器
として利用したことは人類にとって致命的――正に、猿が鉄砲を持ったようなもの。
その後は核兵器開発競争や原発(事故)等の放射能汚染拡大という自滅路線を進んでいる。
④バイオテクノロジーにおける、一面的で機械論的発想による開発――カット&ペース
ト(命なき機械論)の遺伝子操作など――が40億年という歴史によって形成されて
きた生命や生態系の秩序の崩壊をもたらす可能性(危険性)がある。
(例:人工的遺伝子ワクチンの世界規模の接種)
⑤現在のITとりわけAIの急激な開発は主として市場原理(軍事を含む)によるもので
あり、結果的に社会の混乱、社会的病理現象、知の劣化を招いている。
AIは極めて有効な側面もあるが、AGI(汎用人工知能)という幻の目標の下に、非
公開の危険な開発競争が世界を蝕んでいる。
(フェイクニュース、ネット依存症、ネット犯罪、エコーチェンバー効果、格差と分
断の進行、自分の頭で考えることを止める、等々)
⑥地球環境汚染や気候変動(の一部)もグローバルな人間活動によるものであるが、こ
れらは典型的な地球規模の複雑系で、極めて多くのパラメーターによるコンピュータ
ー解析のシミュレーションを用いざるを得ず、一般人にはその真偽の判定が難しい。
そこで、場合によりその結果をとりあえずは信じるしかないが、この方法が有効であ
るためには、科学者や技術者が少なくとも人類に対して公平無私である必要がある。
そのためには戦争のない平和な世界の実現が大前提となる。