Be Natural

気取りも なんのてらいもなく  あるがままの自分を 感性の赴くままに そんな独りよがりの書き捨て日記です。

回想 ”夜叉”の舞台を訪ねた旅

2012-11-21 18:52:48 | 健さん【高倉健】

2010年の冬

元旦に自宅で映画”夜叉”のDVDを観てしまったことから 

その映像の美しさとBGM、そしてあの映画の中で醸し出された

えもいわれぬ雰囲気に酔いしれ

 

三が日だというのに

ネットでロケ地探しに没頭し ようやく見つけた”日向”という地名

 

そこがどんな場所なのかも知らず

ただただ真冬の荒れ狂う日本海と居酒屋”蛍”に恋焦がれてしまい

いても立ってもいられなくなって飛び出してきた無謀なヤツ

 

前日からの暴風雪警報下の猛吹雪の中

京都・敦賀と電車を乗り継ぎ、ようやく美浜駅に降り立ったものの

 

映画の中に出ていたツバメのエンブレムのついた国鉄バスは

時代の流れですでに廃止となって久しい様子

 

いまは地域の足としてコミュニティバスがあるとわかったものの

当然のことながら 一日に数本しか運行しておらず

時刻表をみると、次のバスまであと2時間近く待たなければならない

 

さて、どうしようか? ふと、駅前のロータリーを眺めてみると

寂れた駅にぴったりの場末感を漂わせた駅前食堂が眼に入る

 

ならば出発時刻までの時間潰しにと

道に積もった雪に足をとられぬよう注意しながらも 一瞬の躊躇もなく暖簾をくぐる

 

 

外観から想像していたとおり昭和の匂いがたっぷりとただよう駅前食堂

 

入り口近くに置かれた 石油ストーブ

 

店の奥にはカウンターがあり、内側には湯気を立てるオデンの容器と

ホワイドボードに書かれた肴のメニューが目にとまり

 

これは飲むしかない!と 

すかさずカウンターのイスを下げながら

「うー! 冷えるね~。(ひと息おいて) とりあえず熱燗もらおか」

「は~い♪ 熱燗やね」と明るい返事

 

一升瓶からコクコクと音を立てながらアルマイトの容器に酒を注ぎ

オデン鍋の厚みのある木の蓋をほんの少しずらしてできた空間の片隅に

そっと沈めたのを見計らって

 

店に入ったと同時に、実はしっかりと脳裏に焼き付けておいたホワイトボードの品書き

わざとらしくもう一度目をやりながら

 

「オッ! 寒ブリに生エビがあるやんか。 そしたらそこら適当に盛ってもらおかな」  

 

ほどなくしてカウンター越しにガラスのコップが手渡され 

オデン鍋から取り出したアルマイトの燗酒の取っ手を持って

「ほな、どうぞ」

「おっ! うん。 ありがと」 

と、つい頬をゆるませながらコップを差し出し、すっかりご満悦

 

熱くなったガラスのコップを人差し指と親指の先で持ち

唇を尖らせながら 慎重に口を寄せ、ズズッとすする

「うわ! 旨っま! たまらんな~♪」

 

思わず出てしまった声を耳にして 微笑む年のころ三十代半ばの女将

 

 

熱燗を口にしたのを見計らって

 

「お待たせいたしました」

どこにでもありそうな白地に紺の模様の描かれた瀬戸物の刺身皿に

無造作に並べられた刺身の盛り合わせが出てきた

 

見栄えはよくないものの、いかにも地元で獲れた新鮮そうな寒ブリの

厚い切り身を箸でつまみ

軽くワサビ醤油につけて頬張ったとたん

えもいわれぬ美味にビックリ!

 

無言で首をふりながら

美味しさに感動している様を表現してしまう

 

大雪の日に朝から熱燗を注文する客が珍しかったのか

なにげに見慣れぬヨソ者を伺う様子にほだされて

 

問わず語りに

「高倉健さん主演の”夜叉”って映画に惚れちゃってね。その舞台が観たくてこれから日向に行く」

と話していた

 

(三文小説&脚本風描写はココでおしまい 

 

 

そんな変わったお客が印象的だったのか 

翌年の冬に訪れた時にお店に入ったら、しっかり覚えててくれてたんですよ

 

「去年も大雪が降った時にきてくれたお客さんですよね?」って(笑)

 

 

その年は、日向からまた美浜駅まで戻ってから

来たときと同じルートで帰りたくなかったので、汽車で小浜まで行き

 

駅前の商店街を俳諧してみつけた居酒屋で

寒ブリとか日本海の魚貝類を肴に、

”夜叉”のシーンとついさきほど訪れた日向の風景を重ね合わせて

思い出に浸っちゃったのが災いして(言い訳です)

ついついお銚子を傾けすぎてしまって

 

居酒屋に入るまで鉄路で舞鶴から京都に出ようと思ってたのを

急遽変更してJRバスで鯖街道から近江今津に出て京都に戻ったんだったな~

 

汽車の車中では曇ったガラスを手で拭きながら車窓から日本海を眺め

バスの車中ではタイヤに巻いたチェーンが鳴らすジャラジャラという音を聴きながら

いつしか酒の酔いも手伝って、ついコクリコクリと

 

それもまた なかなかオツなものでしたヨ

 

 

 さて、この冬はどーやって行こ?

 

どーせだから熱燗をもっと美味しくいただくために

猛吹雪の中、京都から鯖街道を歩いてくってのは・・・

 

 

ないな! やっぱし(爆)


Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 男が男に惚れる | TOP | 明日からの三連休 »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | 健さん【高倉健】