カラダを科学する本格的整体ブログ

人間のカラダのおもしろさを、生命科学、スポーツコーチング、認知心理学、動物行動学など、越境しながら学ぶ未来派整体術。

上まぶたの不思議

2008-11-01 07:42:47 | Weblog


先週、身体均整師会の全国講習会がありました。せっかく書きはじめたブログですが、会の学術部門の責任者をしていることもあって、資料の作成や当日の司会進行などなどに追われ、すっかりごぶさたになってしまいました。残念。

あまり時間に追われるのは考えものですが、忙しさのなかで知らず知らず充電されることもあるように思います。とくに、いつもお客さま相手に一人で仕事をしておりますから、いろいろな先生たちとあって議論を交わす機会は貴重です。ちょくら本を読む機会もありました。また少し、「姿勢」というものを深めてみたいと思います。

上まぶたを持ち上げる筋肉に上眼瞼挙筋という筋肉があります。目を開く時に活躍する筋肉です。上方を見上げる時に、この筋肉のありがたさが切々と感じます。目(眼球)の動きに連動して、上まぶたを上げ下げしてくれているわけですね。

目の周囲の筋肉の動きは、日頃ほとんど意識することがありませんが、じつは、身体のなかでももっと反応速度の早い筋群(速筋)によって構成されています。つまり、わたしたちの日常にとって、「重要度とりわけ大きいですよ」と身体の仕組みは教えているわけです。

目の周囲の筋肉の働きに問題が生ずると大変不快です。まぶたの動きを肩代わりしようとして、眉間に皺がよったり無意識にまつげをあげるような動作が生まれます。顔の表情筋はなんとか代償しようと頑張る訳ですね。

前々回に、少し紹介しましたが、赤ちゃんにとって、目でものを追うという動作は、頚が座るより少し前に身につける基本的な動作です。頚の運動をうながす重要な先導役でもあるわけです。むろん、目の動きは、姿勢を保つ上でも重要な意味をもっています。

ものを見る時、わたしたちは無意識に対象の輪郭線を意識します。たとえば3D(立体視)のパズルを見るとき、左右の目を寄り目にして日常とはちょっと違う「見方」をしますが、そこに明瞭な輪郭線が浮び上がると「見えた!」という実感が起こります。

うまく目の焦点があわず、ぼんやりした画面を見ているときにはとくに喜びも驚きもありません。「ううん、どうもうまくいかないなあ」という感じです。しかし、隠れていた立体的な輪郭が浮び上がったとたん、「こういう絵だったのか」というある種の確信が生まれますよね。

次の図は、ゲシュタルト心理学でよくとりあげらえる例です。3Dではありませんが、わたしたちの視覚の不思議を考えさせてくれます。わたしたちの視覚は、ある種の指向性(おそらく人類に共通のもの?)のなかで、ものを見、感じている訳ですね。

こういう些細な確信(周囲の世界との了解)のことを、東洋医学では「気が通う」といいます。わたしたちは、周囲を了解して、つまりあたりの世界と「気」を交わしながら生活しているというわけです。

一般に「気」というとなにか神秘的なものと思われがちですが、おそらくもともとの「気」の考え方は、しごく自然的なもの、無意識的なものだったのではないかと考えています。じっくりと日常を見つめていると、表れてくるものですね。だから、武道でも、芸能でも、ごく当たり前のこととして、「気」という考えと親しみ修練することが出来たのだと思うのです。

さて、上眼瞼下垂という症状があります。上まぶたがうまく上がってくれない状態です。形成外科などでは、上眼瞼挙筋を短くする手術がおこなわれます。上方視と下方視の時のまぶたの位置を測定すると、下垂の程度を客観的に計測することも出来ます。

この上眼瞼挙筋の筋力を測ってみましょう。目を閉じてまぶたの上から押さえますから、コンタクトをしている人は要注意です(はずしてからおこないましょう)。

方法は、このページの最初に掲げた絵のとおりです。目をとじ、まぶたの上から指を当てます。そのまま顔を動かさないで上方視します。つまり眼球を上転させるわけです。そうすると上まぶたは自然に上に上がろうとします。この上まぶたの動きを指で止めていると、張力を感じますよね。この張力が、左右の上眼瞼挙筋の筋力ということになります。

次に目を閉じ左右のまぶたに指をあてて、さまざまな姿勢で上眼瞼挙筋の筋力を測ってみましょう。姿勢を正した時と猫背にした時、あるいは右左どちらか一方に頚を倒した時。

どうですが? 姿勢の変化によって、上眼瞼挙筋の筋力に変化が起こるのがわかりませんか? 上まぶたの力は、姿勢に影響される宿命のようなものをもっているのでしょうか。現在わたしは、姿勢というもののなかに、わたしたちの身体に変化をもたらしすさまざまな仕組みが働いているのではないかと考えています。

次回から、またすこし掘り下げて考えてみることにしたいと思います。

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