雨の中、雨降るコクーン歌舞伎を見る

土曜日は、午後から雨が降り出してきた。前の週に「紗合せは雨に強い」とやっぴーさんに言われ、この日、紗合せデビューをしようかと考えたのだが、コクーンのほかに、知人のギャラリーやらあちこちでかけなければならず、しかも荷物が多いため断念。結局、軟弱にも洗える着物を着用。






＜着物も帯もネットで買った。雨ということでかたつむり柄の帯の登板。苦心の末のお太鼓撮影！＞

余談だが、この着物は最近「着物スタイルズショップ」で同じものが売られているのを見た(色はもう少しグレーだったかもしれない)。1万いくらの金額がついていたが、私なんてリサイクルの、さらにアウトレットで格安で買ったもんねーと、ややドヤ顔気味の私である。（でも結構汚れたりほつれたりで、手間をかけて再生しなくちゃならなかった）

さて今年のコクーン歌舞伎は、鶴屋南北の「盟三五大切（かみかけてさんごたいせつ」。
実は「コクーン歌舞伎」を見るのは初めて。勘三郎丈の出るこれまでのコクーンは、なかなか競争が激しくて、気が付いたら売り切れということが多かった。今年こそはと気合いを入れて臨んだが、勘三郎丈がお休みのためかあっさりとゲット。

勘三郎丈のいないコクーンって…と懸念したが、それは杞憂だった。
大衆演劇としての歌舞伎の原点に帰るような、イロあり、グロありの面白さ。
「清純派」のイメージの強かった菊之助丈が、男をたぶらかす芸者の色香をたっぷり匂わせていて新鮮。一昨年あたりから人妻を演じることの多くなったこともあって、新境地を開きつつあるのだろうか。

勘太郎丈のうまさも相変わらず。ますます口調と声が勘三郎丈に似てきた。最後に勘三郎丈が声だけ出演するシーンがあるのだけれど、一瞬、勘太郎丈の声かと思ったぐらい。

しかしなんといってもこの日の私にとっての一番の収穫は橋之助丈。同年代ということもあって、昔から気になる存在ではあったが、どうも舞台の相性が悪いのか、あまり良いと思った記憶がない（そもそも中村座系の舞台を、私はあんまり見ていないのだ）。しかし、今回のはっしー、薩摩源五兵衛役には感服いたしました！

女に騙される前半の世間知らずの甘ちゃん、後半は復讐の狂気にはまる殺人鬼。芸者小万(菊之助）の夫（勘太郎）がちょっと妬くぐらいのいい男。
たぶん、いい男だからそれなりにもてただろうし、だからついうっかり世なれた芸者の、小万が演じた自分に夢中の様子も、いい男だからさもありなんと、本気にしちゃったのだろう。過去には女を泣かせたこともあるんじゃないの？…そんなふうに舞台にはないこれまでの人生の様子を想像させるほどキャラが立っていて、この人物そのものに興味を掻き立てられちゃった。（史実とはぜんぜん違うみたいですが）

愛する小万を殺した後に籠る御堂のシーン、本水の雨がざあざあ降り小さなお堂を包み込む。殺してきた小万の首を前に全てを失ってしまった源五兵衛がこれまでを振り返るシーンはぐっときた。彼は恨んで小万を殺したのではない。自分のものにしたくて、恋い焦がれた、ある意味で愛情表現での殺人だったのだと、このシーンで伝わってきた。


橋之助丈、今回、初めて勘三郎丈のいないコクーン歌舞伎を背負うことになり、プレッシャーは大変なものだったのだろう。それを見事乗り越えたことに拍手を贈りたい！