今回の投稿はなかなかうまくいきません。
ちょっと時間があいたせいかな。
とても短いバレンタイン小話です。
「マリア、これ、余りもので悪いんだけど」
そう言って差し出された小さな箱に、早川マリア警邏長はいささかの戸惑いを隠せなかった。
その日がいわゆる聖バレンタインデーだと言うことを勘案すれば、箱の中身は十中八九チョコレートだろう。
それに問題はない。それどころか、大歓迎だった。マリアはアイスを愛していたが、この時期のチョコも同じくらい大好きだったからだ。
だが。それが親友のアリーからのもので、しかも店内には矢島もいるというのに自分だけがチョコを貰ってもいいものなのだろうか?
前者の疑問はともあれ、後者に至っては、後で矢島にどんな難癖をつけられるか分かったものではない。
アリーには申し訳ないが、ここは断りを申し出る場面だろうか。
と、目まぐるしく考えていたのも、自分の手の中にあるチョコの箱を改めて見るまでだった。
小洒落た小さな箱は可愛くリボンがかかっていて、そのリボンには、マリアでも耳にしたことがある高級パティシエの名前が入っている。
確か、一粒が2500円すると、何かで見かけた気がする。一つぶがその値段なら、そりゃおいしいよね、と思ったものだ。
その魅惑の味が、今まさに掌の中に…!この魅力に抗えるものなどありはしない。
後で矢島がぐずるようなら、尻を蹴飛ばすか、頭を撫でてやればおとなしくなるだろう。あるいは、その両方か。二号室主任のエアーズあたりが知れば目をむきそうなことを考え、 マリアはチョコレートをありがたく頂くことにした。
案の定、矢島はアリーに、自分の分はないのかとしつこくせっついている。アリーは仕方なさそうに微笑むと、一本の酒を取り出してきた。
「あなたはチョコよりこちらの方がいいでしょ?」
ラベルの文字はバランタイン111。
「ただし、一度に飲みすぎて、マリアのご機嫌を損ねないようにね」アリーは釘を刺した。
飲み過ぎて、その後の厄介ごとをわたしのところへ持ち込まないでね、とその表情が語っていた。
それからマリアに向き直ると、「あなたには他にもプレゼントがあるの。こんな、店の経費で落ちるチョコだけじゃ悪いから」
そう言って、驚くマリアの頬にキスを送った。…極めて唇に近いところに。
マリアは矢島が見ていなかったかとはらはらしたが、もちろん、アリーは矢島の視線を計算して、彼女が見ていることを確認してから警邏長にキスを贈ったのだった。
この夜の矢島が、キスに当てられたことは言うまでもない。
「あんた、アリーにはキスを許しておいて、あたしにはキスもさせてくれないの??恋人なのに?」
「矢島さんも見てましたよね?あれは、アリーが勝手に…」
「へー、あたしが、他の女の子が勝手にキスしてきたって言っても浮気だって言って許さないくせに、ずいぶんと都合のいい言い訳じゃない」
「それは…」
こんな矢島は頑是ない子供のようだ。意地になっている。マリアはだんだん面倒くさくなってきて、覆いかぶさってくる矢島を押し返す力をゆるめた。
今日も勤務だったのに…と思いつつ、翌朝のマリアは、あのキスはアリーから矢島への贈り物だったのでは、と疑わずにいられなかったが、アリーはもちろん、心よりマリアに贈ったキスだったのだ。
その後の矢島の行為を含めて。
ちょっと時間があいたせいかな。
とても短いバレンタイン小話です。
「マリア、これ、余りもので悪いんだけど」
そう言って差し出された小さな箱に、早川マリア警邏長はいささかの戸惑いを隠せなかった。
その日がいわゆる聖バレンタインデーだと言うことを勘案すれば、箱の中身は十中八九チョコレートだろう。
それに問題はない。それどころか、大歓迎だった。マリアはアイスを愛していたが、この時期のチョコも同じくらい大好きだったからだ。
だが。それが親友のアリーからのもので、しかも店内には矢島もいるというのに自分だけがチョコを貰ってもいいものなのだろうか?
前者の疑問はともあれ、後者に至っては、後で矢島にどんな難癖をつけられるか分かったものではない。
アリーには申し訳ないが、ここは断りを申し出る場面だろうか。
と、目まぐるしく考えていたのも、自分の手の中にあるチョコの箱を改めて見るまでだった。
小洒落た小さな箱は可愛くリボンがかかっていて、そのリボンには、マリアでも耳にしたことがある高級パティシエの名前が入っている。
確か、一粒が2500円すると、何かで見かけた気がする。一つぶがその値段なら、そりゃおいしいよね、と思ったものだ。
その魅惑の味が、今まさに掌の中に…!この魅力に抗えるものなどありはしない。
後で矢島がぐずるようなら、尻を蹴飛ばすか、頭を撫でてやればおとなしくなるだろう。あるいは、その両方か。二号室主任のエアーズあたりが知れば目をむきそうなことを考え、 マリアはチョコレートをありがたく頂くことにした。
案の定、矢島はアリーに、自分の分はないのかとしつこくせっついている。アリーは仕方なさそうに微笑むと、一本の酒を取り出してきた。
「あなたはチョコよりこちらの方がいいでしょ?」
ラベルの文字はバランタイン111。
「ただし、一度に飲みすぎて、マリアのご機嫌を損ねないようにね」アリーは釘を刺した。
飲み過ぎて、その後の厄介ごとをわたしのところへ持ち込まないでね、とその表情が語っていた。
それからマリアに向き直ると、「あなたには他にもプレゼントがあるの。こんな、店の経費で落ちるチョコだけじゃ悪いから」
そう言って、驚くマリアの頬にキスを送った。…極めて唇に近いところに。
マリアは矢島が見ていなかったかとはらはらしたが、もちろん、アリーは矢島の視線を計算して、彼女が見ていることを確認してから警邏長にキスを贈ったのだった。
この夜の矢島が、キスに当てられたことは言うまでもない。
「あんた、アリーにはキスを許しておいて、あたしにはキスもさせてくれないの??恋人なのに?」
「矢島さんも見てましたよね?あれは、アリーが勝手に…」
「へー、あたしが、他の女の子が勝手にキスしてきたって言っても浮気だって言って許さないくせに、ずいぶんと都合のいい言い訳じゃない」
「それは…」
こんな矢島は頑是ない子供のようだ。意地になっている。マリアはだんだん面倒くさくなってきて、覆いかぶさってくる矢島を押し返す力をゆるめた。
今日も勤務だったのに…と思いつつ、翌朝のマリアは、あのキスはアリーから矢島への贈り物だったのでは、と疑わずにいられなかったが、アリーはもちろん、心よりマリアに贈ったキスだったのだ。
その後の矢島の行為を含めて。