身震いしながら言

身震いしながら言

るところなんですよ

2017-08-14 11:07:54 | 日記

ジェイコブは口を引き結ぶと、白分の体が少しずつさかさまになっていくことを意識すまいとしながら、ループを登りつづけた。通路のあちこちには、壁面や床に收缩毛孔、アクセス・プレートの標識があった。半分ほどまわりこんだところで、あるハッチの前を通りかかったが、それには〝時間圧縮装置〟の文字が刻まれていた。
ループはゆるやかなスロープを描いて終わっていた。さかさまという感覚をまるで感じないままに、下部半球側のハッチの外へ出る。外がどう見えるか、感覚的にわかってはいたものの、それでもジェイコブは、思わず声をあげずにはいられなかった。
「うわっ!」両手で目をおおう。
頭上数メートルのところに、格納洞穴の床が、四方へどこまでも伸び広がっていた。サンシップの船架のまわりを歩きまわっている人間たちは、天井にとまった蠅のようだ。
ひとつあきらめたようにため息をつくと、デッキの縁近くに立って複雑そうな機械の内部を覗いている、ケプラーのもとへ歩いていった。ケプラーは顔をあげて、ほほえんだ。
「じつは、責任者の特権を利用して、あちこち重箱の隅をつついてまわってるところなんですよ。もちろん、出発まぎわですから、もうとっくに万全のチェックがすんでいるんですが、わたしは自分の目であちこちをよく見ておきたい性分でしてね」いとおしげに、機械をぽんぽんとたたいた。
ケプラーはジェイコブをうながして、デッキの縁に行った。そこから見ると、さかさまの感覚がいっそうきわだった。靄のかかった洞穴の天井が、足もとのはるか〝下〟に見えたからだ愛樂維
「これは多層偏光カメラといって──干渉光ゴーストがはじめて発見された直後にとりつけたものでず」ケプラーは、縁にそって等間隔にならんでいる、数基の同型の機械のひとつを指さした。
「われわれが彩層の錯綜する光のなかからゴーストを識別することができたのは、偏光面がいかに移り変わろうとも、目標を追跡し、光の干渉が現実のものであって、時間に対して安定であることが確認できたからなのです」
「カメラが全部下側に配置されているのはどうしてです? 上には一台も見かけませんでしたが」
「それは、生ある観測者と機械とが同じ面上にあった場合、干渉しあうことが発見されたからです。それやこれやの理由で、計器類はすべてこの下部半球に集中させ、わたしたち人間は、上部半球に乗っていくわけです。
もっとも、デッキの縁が観測したい現象に向くように、船の向きを変えることによって、どちらの半球からも目標を見ることはできますがね。これはなかなかうまい妥協策であることがわかりました。重力が問題とならないのですから頭頂稀疏