あさひ健康通信

健康情報のエッセンスやその時感じたことを書いています。

即興詩人

2007-08-13 15:33:41 | 健康ポエム

それは気まぐれ天使

風とともにやって来て

あなたに優しく語りかける

ささやくように

歌うように

微笑むように

それは森の泉のように

静かに湧き上がり

生まれてくる

美しい言葉の宝石が

あなたに見えるように

それは気まぐれ天使

風とともに消えていく

でも残っていたんだ

一つ一つの美しい言葉が

あなたの心の宝石箱に

美しい思いになって


糸でんわ

2007-08-07 16:01:48 | 健康ポエム

糸でんわが見つかった

でも途中で糸が切れている

片方の筒もない

子どものころよく遊んだのに

そっと呼びかけると

何か聴こえる

あなたは誰

もう一度話しかける

たしかに聴こえる子どもの声

それは子どもの時のあなた

糸はつながっていたんだ

時をつなぐ思い出の糸になって

さあ話してごらん

きっと応えてくれるよ

あなたの純粋で美しい心が

あなたの心の糸でんわが


達人

2007-08-02 12:37:12 | 健康小話

江戸時代、一人の茶道家がいました。そのお茶が美味しいと、武家やお寺の評判も高く、その茶会はいつでも人気です。いつかは、その茶を口にしてみたいという、江戸っ子の憧れでもあります。その茶道家は、研究熱心で、常に自分のお茶を高めていこうと精進しているのです。ある時、おもしろいお茶を出す、茶人の噂が耳に入ってきました。早速、茶道家は、修行僧の姿で訪ねてみることにしました。自分が茶道家であることは隠して、その茶人を試してみたくなったのです。

その茶人の家は、ひっそりとした山里にありました。修行僧姿の茶道家は、裏庭に回り、「旅の僧だが、喉が渇いたので、茶を頂きたい」と所望しました。すると、中から、老人が出てきて、今、主人はいないとのこと。きっと、その茶人の弟子なのでしょう。茶人がいないのなら、また出直そうかとも思いましたが、その弟子の技量でも、試してやろうと考え、再度、茶を所望したのです。それなら、ここでお待ちをと、縁側に案内されました。腰掛けていると、どこからともなく、涼やかな風が心地よい。小鳥のさえずり、虫の音も聴こえてきます。ここにいるだけで、心が和んできます。ややしばらくした頃、先ほどの老人が一椀を運んで来て、勧めました。茶道家は、これを口にふくんでみて、驚きました。それは、茶ではなく、水だったのです。でも、なんて軟らかくて、美味しい水でしょう。茶道家は、できれば、茶室も見たいと、老人に頼みました。すると、老人は困った様子もみせず、茶室に案内したのです。その茶室は、2畳位で土壁の質素な造りです。床には、古い感じの書軸、床の柱には、花入れに、露に濡れた一輪の白い花。まるで、そこに亭主がいるかのようです。茶室へ向かう、飛び石の庭の打ち水、茶室の中の素晴らしい書や美しい花。それに、茶釜の湯も用意してあります。茶道家は、はっとしました。これは全て、あの老人が用意したに違いない。あの老人が、噂の茶人だったんだ。

「私は、今まで、立派なお茶、人々から賞賛されるような、美味しいお茶を目指して精進してきた。だから、道具も一流のものを揃え、茶室も大勢の人が楽しめるよう、大きくて立派なものを造った。でも、あの方は、道具も、茶室さえも、こだわっていない。このわずか2畳の空間に全てがある。この大きさで十分、しかも、最適だったんだ。客と亭主が過ごす空間としては。私が縁側でしばらく待っていた、その間に、客の好みを想い、野の花を活け、そのときに合う、書を選んで掛けていたんだ。なんという柔軟で、感性豊かな亭主の対応、そのもてなしの心。その心を、客は味わうんだ。試されていたのは、私自身、そして、私の感性だったのかもしれない。ここでは、客と亭主という関係だけでなく、お互いの身分さえも忘れ、一人の人間として、心の触れ合いを楽しむんだ。なんて、巣晴らい。私が、最初に茶を所望したとき、茶ではなく、出してくれた一椀の水。あれは、茶人が早朝の内に、名水の湧き出る泉まで出かけ、心を込めて汲んで来た水。それを茶釜で湯にしてから壺に入れ、家の井戸で冷やしていたんだ。いつ、客が訪ねて来ても対応できるようにと。ああ、あの一椀の水が、最高のもてなしだったんだ。あの茶人は、修行僧姿の私が、茶道家であることをすぐに見極め、あえて、自身も亭主であることを伏せていたんだ。あの方こそ、江戸一番の茶人、そして、「もてなしの達人」だったんだ。」

帰り際、お互いの身分を名乗ることもなく、修行僧と老人のまま別れたように。この家には、弟子も、使用人もいなく、全て、亭主一人で、もてなしていたように。

江戸へ帰る夕暮れの道。そこには、あの爽やかな風が。そう、茶道家の心の中で。いつまでも、いつまでも・・・