あるまこ~

ITコンサルタント&山岳ガイド協会公認 山岳ガイド&インターネットショップ ラブジアース店長&LOC代表の徒然日記。

【E遠征】#8 7/18 ヘルンリヒュッテ→マッターホルン登頂(4,478m)、ツェルマットへ

2012年07月18日 23時59分00秒 | 【2012年ヨーロッパ遠征】

 今回の遠征の1つの目的のマッターホルンへ。今年は状態が良くなく、まだツェルマットのガイド登山で1人?くらいしか登頂できていない。その1人も風強く、頂上付近でピックアップされたとのこと。雪は遠くから見る限りなさそうだけど、行ってみると全然融けていなくて、通常は上部にしかない雪が、ほぼ取り付きからすぐに出てきて1/4くらいのところでアイゼンを付けます。他パーティーは出発から30分くらいでアイゼンを付けたとのこと。上部で風が10~15m/sでほどほどでした。


■行程

3:30 起床
3:45 朝食
4:00 ヘルンリヒュッテ出発(3,260m)
5:50 岩屋根のポイント(5分休憩、アイゼン装着)
6:30 ソルベイ小屋(4,003m)
7:50 マッターホルの肩
8:30 マッターホルン山頂(4,478m)(山頂から少し下ったところで20分休憩)
9:50 マッターホルンの肩
10:40 ソルベイ小屋
13:00 マッターホルン取り付き
13:10 ヘルンリヒュッテ到着
14:15 ヘルンリヒュッテ出発
15:30 シュバルツゼー到着
16:20 ユースホステル到着
18:00 夕食
22:00 就寝


■登山道の説明

 とにかく、マッターホルンを登頂するには、2~3時間ゆっくりでも行動し続けられる体力、10時間程度の連続行動体力(2~3時間ごとに10分程度の休憩を含む)、10時間連続のクライミング中にミスを0にする精神力、クライミング能力(各種ムーブ、体重移動、岩と靴底のフリクション感覚等)、ルートファイディング力、高所・心拍数が高くなっても精神的に平静でいられること、登山における危険への認識能力と対処能力、岩場・ざれ場・クサリ場・ハシゴ等の難所の通過能力(ヘルンリ稜にはハシゴはありません)、などなど登山やクライミングの高いレベルが要求されます。日本でしっかりトレーニングして、フリークライミングや大キレット・ジャンダルム・剱岳等の難所の通過、ボッカ訓練やスポーツジムでの筋力トレーニング、持久走やインターバルトレーニングで心肺機能を高めて、余裕を持って臨みたい山岳です。登り応え、ルートの長さや多岐にわたるアスレチックなムーブ、ヨーロッパアルプスを代表する山岳は充実感と満足感を与えてくれるでしょう。
 また、(A)天気状況や(B)積雪状況以外にも、(C)登山パーティー数も重要な要素になります。自分の実力以外にも様々な不確定要素で登頂できるかが決まってきます。(A)マッターホルンは独立峰なので、風が強く上層の空気の流れや山麓から吹き上げる空気の流れが刻々と変化し天気予報も難しい山岳です。ブライトホルン近くのマッターホルングレッシャーパラダイスのクライン・マッターホルンが一番近い測候所ですが、マッターホルンとはまったく山岳条件が異なるので、クライン・マッターホルンの予報を過信しないようにしましょう。(B)積雪状況は年や月によってかなり差があります。年によっては、マッターホルン山頂までクランポン(アイゼン)をはかずに登ったパーティーもいるようです。8月でも寒気が入れば数十センチの積雪があり、かなり下のほうからアイゼン登攀で登ることになります。日本でもこういった練習をしていなければ、登攀途中でもガイドから即中止を宣告されるでしょう。(C)シーズンのもっとも多い時期だとガイドパーティだけでも25パーティになるそうです。これに個人で登っている人も加味すると、ヘルンリ稜に50人以上が登っていることになります。渋滞による遅延、落石、すれ違いによる時間ロス等が発生します。

(0)ヘルンリ小屋で準備すること。
・ヘルメットにヘッドランプをしっかり緩みなく取り付ける。取り付け具等が合わない場合は、ガムテープ等ではずれなようにしっかり止めておく。
・日焼け止めを塗っておく。
・特に重要な装備(行動食、水)を取り出しやすい位置に入れておく。
・ウェストベルトが外れるタイプの場合ははずしておく。ハーネスと干渉することと、下りは前向きで下りるので邪魔になるでしょう。
・マッターホルンに持っていく装備をパッキングしておく。小屋受付の左下にカゴがあるので、このカゴにいれて小屋にデポ(いらない荷物を置いていくこと)ができるので極力荷物を減らす。
・水は1L程度。ただし、真夏で気温が上がり日当たりが良い場合は、最大でも1.5L程度だろう。

(1)ヘルンリ小屋(3,260m)→マッターホルン取り付き【登り10分、下り10分】
・ヘルンリ小屋の裏手から稜線を目指し、稜線をマッターホルンに向かって登山道があります。雪渓が残っていましたが、危険な場所ではありません。軽トレッキングシューズでも取り付きまでは行けます。
・だれでも簡単に行けるので、取付きや稜線上は多くの観光客が居ました。 

(2)取り付き→岩屋根のポイント【登り1時間50分、下り1時間30分】
・取り付きは大きな綱がフィックスロープとして設置されているのでいきなり急な登りです。このポイントでしっかり三点支持を思い出し、ロープを両手で持つような登り方では無く、片手ロープ・片手岩場で登りましょう。
・ヘルンリヒュッテ出発はまだ暗いのでヘッドランプは可能な限り明るいものを選択し、大きなスタンスを目でしっかり確認し、足をのせます。雪渓の雪や泥が靴底に着くととたんに滑りやすくなるので、周りを確認して靴を岩場に蹴ってこれらを取り除きます。
・東壁をトラバースしながら左上するルートを取りますが、いくつかルートが取れます。風向きによって東壁はほとんど風が無い状態になるので、前日にガイドに出発時の衣類を確認しましょう。例)マッターホルンの肩に出る前の休憩でアウターシェルを着る、ソルベイ小屋で防水性のソフトシェル素材のグローブに付け替える・・・等。
・2012年シーズン7月中旬では、各ガイドパーティーは岩屋根でアイゼンを付けましたが、その下から雪が残っているので、他のパーティーは登り始め30分程度でアイゼンを付けたようです。前日気温が下がって雪が硬くしまっている場合は、トレースがしっかりしていますが、暖かい夜や雨が降った次の日は要注意でしょう。
・このポイントで水分補給、栄養補給、ウェアリングの調整、ヘッドランプの取り外します。

(3)岩屋根のポイント→ソルベイ小屋(4,003m)【登り35分、下り40分】
・岩屋根を過ぎるころに明るくなり、まもなくソルベイ小屋が見えてきます。このあたりから急な岩登りが始まります。アイゼンをはいている場合は、衣類や岩に引っ掛けないようにスタンスに前爪を乗せます。アイゼンをはいていない場合は、左右の壁にステミングでバランスを取れます。
・フィックスロープが設置された場所はそのまま左に通り過ぎて、ルンゼ状の場所をスタカット(ガイドのビレイは無し)で登ります。

(4)ソルベイ小屋→マッターホルンの肩(Axla, Shoulder)【登り1時間20分、下りXX時間】
・通常はこのあたりからアイゼンを付ける。
・肩をこえてOberer roter Trumというあたりから、最後のフィックスロープが直上40m程度あり、さらに左上するように数十m伸びる。アイゼンを付けており、雪がない場合は両手でロープを持ってさっさと登ったほうが良い。

(5)マッターホルンの肩→マッターホルン頂上【登り40分、下り1時間】※下りは、登ってくる3パーティーくらいのすれ違いで待ちました
・このあたりは雪の状態によって様々ですが、頂上までの50mくらいは支点がまったく取れず、ミスは許されません。その下は、4~6本程度支点があったと思う。確実なキックステップ、3点確保で進みます。
・頂上稜線はナイフリッジで風が強いときは、姿勢を低くし、耐風姿勢をいつでも取れるようにしておきましょう。
・スイス側の頂上はイタリア側より1m高い、リッジにあります。 


■動画

↓岩屋根のポイントでの休憩。

↓岩屋根のポイントからソルベイ小屋までの急な岩場。

↓ソルベイ小屋直下。

↓ソルベイ小屋での休憩。食べてばっかりですみません。時間がないのです。

↓頂上直下で休憩です。風がそこそこありますが、天気が良く眺め最高です。


■写真

↓難しい箇所にはフィックスロープが設置されていますが、下部のフィックスロープは雪に埋まっている場所もありました。

↓現地人いわく「アイロン」。中間支点、懸垂のロワーダウン等に使います。

↓山頂にて。360度の展望です。風でロープがしなってます。

↓山頂にて。ガイドのデイヴィットと。

↓もう一組のツェルマットガイド登山。今日は、ツェルマットのガイドパーティーは我々とこの2パーティーのみ。あとは、個人や外国人パーティーが全部で10つくらい入っていましたが、登頂したのは5パーティーくらいでした。

↓雪がべったり張り付いてて状態は悪かったですが、天気はよかったので、どっこいどっこいでしょうか。

↓マッターホルン取り付き。

↓登頂の喜びをジャンプで表現してみました。

↓今日は天気が良いのでヘルンリヒュッテは大にぎわいです。

↓ヘルンリヒュッテからシュバルツゼーの登山道付近になぜかモアイが居ます。

お疲れ様でした。


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