あるまこ~

ITコンサルタント&山岳ガイド協会公認 山岳ガイド&インターネットショップ ラブジアース店長&LOC代表の徒然日記。

坂村先生とTRON(トロン)

2005年02月10日 17時46分53秒 | ゆびきたすなとき
TRONに対して...コンピュータアーキテクチャに対して...熱い思いを語っている。
すべて下記URL引用。

■"幻の"国産OS・その孤独と栄光――TRONプロジェクトの現在
words/渡辺保史


●「生き残っていること自体驚き」...

...「生き残っていること自体驚きだった」と物語らせるほど、TRONの存在は人々にとって「遠い」ものになっているのは否めない。実際のところ、コンピュータに少しでも関心を持つ人々の大部分にとって、TRONとは「かつて一世を風靡した」と冠されるような、過ぎ去った存在としてしか認知されていないのが実情だ。「そういえば、アレどうなったの?」――TRONの話題を切り出した時に出るセリフは、大抵そんなものだろう。...

...果たしてTRONの目指すビジョンは何だったのか?...

...88年には未来型住宅におけるホームオートメーションをTRONによって実現する「TRON電脳住宅」が東京・西麻布に建設され、92年まで居住実験が行われ、「TRON電脳ビル」「TRON電脳自動車網」などの計画も立ち上がった。...

...TRONを理解するうえで重要な視点は、他にある。それは、TRONが社会システムの面から初めて本格的にデザインされたコンピュータ体系である、ということだろう。「電脳都市」や「TRONからの発想」などの著書の中で、坂村が繰り返し主張しているのは、TRONとは「未来をどんな社会にしたいか?という観点から、あるべきコンピュータの姿を考えること」の重要性だった。...

...全国の小中学校に導入される教育用パソコンの「市場規模」は当時の概算で9000億円とも言われ、必然的に「未来のユーザー」の獲得にも繋がる、との目算もあって互いに譲らず難航したが、日本電気側がMS-DOSとBTRONを切り換えられる機種を採用するという妥協案を示し、BTRONマシンに一本化がなされた。...

...合衆国からの「外圧」が水を差した。...

...「コンピュータそのものは何もしない無色透明な道具だと思うんだよ。自分がデザインしようとしているコンピュータは、そんなシンプルでクリアーなものを目指したいと常に心掛けてきた。だからこそ、そこに何を入れ込むか、コンテンツとかそういうことだけど、それが大事になる。そうした中身や応用の側から見た場合、今のコンピュータはやっぱり不満なんですよ。結局ね、ほとんどのコンピュータの専門家は応用で見ようとしない。そりゃ、昔は兵器のコントロールとか数値計算しかできなかったけれど、今は潜在的なハードウェアの能力が昔と比較にならないくらい上がっている。なのに、依然としてできないことが沢山ある。それは技術というより、人為的な理由だったりするんだよ。使い勝手がどうのという以前の問題として、当たり前にできていい筈のことができないのは、ハッキリ言って不愉快なんだよね」
 坂村は、早口だが、明晰な口調で自身の問題意識を語ってくれた。...

...96年10月16日にはセイコー電子工業がBTRON実装を前面に押し出したPDA(Personal Digital Assistant)の新製品「BrainPad TiPO」を発表した。TRON関係者にとってはまさに僥倖といっていい。...

...坂村は、「焦らず、じっくりやっている」と言う。「HFDSはTRONが目指すゴールとして重要であることは変わっていない。今から20年、30年後には生活環境に埋め込まれたコンピュータというのは、ごく当たり前になっているだろう。ただ、研究は進めているけれど、急ぐことはしていない。インターネットもARPAnetの時代から今まで、実用レベルまでのスパンは長いようで短い。急激に普及したために、セキュリティやプライバシーの面で色々危ない状況が出てきている。生活環境を電脳化していく上で、そうした混乱を招くわけにはいかない」...

...しかしユニコードは、2バイト(16ビット)で表現できる65536字の中に、合計で10万以上とも言われる漢字やその他の様々な文字セットを無理矢理押し込める、という操作がなされている。いわゆる「ユニフィケーション」というもので、本質的に同じシンボルと見做される(と判定された)文字は、多少の違いに目をつぶって一つにまとめてしまおうと言う考え方だ。だから、先に上げたような文字は、ユニコードの体系の中では別々の言語でもそれぞれ一つの文字に統一されてしまっている。文化を規定する差異の抑圧と破壊。当然、日本などからは反対の声が上がった。...

...とりあえずは97年中に約6万字のコード化を行い、それと並行して漢字データベースの構築・公開、またフォントセットの作成や配付も進めていくという。坂村は「日本語をまっとうに扱える最強の漢字コンピュータをTRONで実現したい」と意気込む。...

...「アーティストなんですよ、自分は。コンピューティングだってアートなんだよね。アートなんだから、どっちがいい悪いということじゃない。日本には日本の、アジアにはアジアの文化があり、アメリカにはアメリカ流のやり方がある。ぼくを右翼という人もいるけど、まあ確かに右翼チックではあるけれども(笑)、それぞれの文化の違い、多様性にメリハリを付けるようなやり方をしたいと思っているんだ」...

...TRONが普及しているかどうかは、実は瑣末な問題なのかも知れない。このプロジェクトが投げかけた「次代のコンピューティングはどうあるべきか?」という波紋が、どのように拡がっていくのか。文化あるいは思想としてのコンピューティング・アーキテクチャが21世紀に決定的な影響力を残すのは、まさにそうした意味においてであろう。コンピュータという技術体系の中に芽生え始めた文化。TRONはその成熟へ向けて進み続けている。

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