投資家の目線

投資家の目線529(アメリカのジレンマ)

 「アメリカのジレンマ」(渡辺靖著 NHK出版新書)は、現代アメリカ社会の状況を分析した書である。「超大国の自殺」(パトリック・J・ブキャナン著、河内隆弥訳、幻冬舎)に書かれていた、アメリカの分裂についても記述されている。右派と左派、学歴、人種・民族、宗教などの要素が加わって「個人化」し、簡単に色分けできなくなっているという。


 日系人の間にも分裂がある。1970年代以降の「新日系」と呼ばれる層と戦前に移住している層の間である。特に戦前から移住している層に対してだと思うが、『日系アメリカ人は「日本人」ではない』という項目がある(日系アメリカ人というよりは幼少期からアメリカで教育を受けた人といった方がよいと思う)。そのため、「日本つながり」で自動的に日本の肩をもってくれるわけではないという。民主党のマイク・ホンダ議員に、日系なのに日本の肩をもってくれないことを非難しても仕方がないということだ。


 アジア系で最大のコミュニティは中国系である(2010年の国勢調査)。同書で中国系は大陸系、台湾系、香港系、東南アジア華僑系などに分かれ必ずしも一致団結しているわけではないとしている。


 しかし、米国のなかで中国系の影響力は強まっていくのではないかと感じる。以下の記事によれば、そもそもペリーによる日本開国は、米中間の太平洋航路における補給基地としての役割を期待したものだという。

黒船が来た! 日米中衝突の宿命 文藝春秋SPECIAL 2015夏 2015年5月26日


 また、米中間には日米間とは比べものにならないほどの強い絆があるという。

過ちを認められない日本がドイツの謝罪に学ぶこと  ダイヤモンドオンライン 2015年8月13日


 米国の哲学者ジョン・デューイ(デューイから指導を受けた中に中国の哲学者胡適がいる)は、訪日後に中国大陸に渡りそこで長期滞在している。これも米中間の絆を感じる話だ。


 この本で、以前から聞いていた米国の変貌を確認することができた。米国政治に関心を持っていたり、米国で商売しようとしたりする人は予備知識として読んでおいた方がいい本だと思う。

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・先週の円安を要因とする悪影響・値上げ発表等記事
都内倒産10カ月ぶり増、7月5%増、185件 卸売業、円安響く。 2015/8/12 日本経済新聞 地方経済面 東京

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