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投資家の目線

投資家の目線41(IPOによる創業者利益について考える)

 今年4月4日に株式会社エコミックが、札幌証券取引所アンビシャス市場に新規上場する。それを例に創業者利益を見ていきたい(有価証券報告書などは札幌証券取引所のホームページで取得できる)。同社は平成9年4月に設立され、平成12年5月にキャリアバンク社が株式を70%取得して子会社化した。その後、平成16年1月に65,000円で47株、75,000円で777株、平成17年1月に80,000円で1,700株を第三者割当等で増資し、キャリアバンク社の出資比率は87.6%(発行済株式数2,724株のうち2,386株)を所有している。同社が受けた平成16年と平成17年の増資の平均単価は約79,413円{=(200株×75,000円+1,503株×80,000円)÷(200株+1,503株)}と計算できる。また、平成16年1月に78,000円で682個(平成18年2月末現在664個)、平成17年1月に83,000円で205個(平成18年2月末現在163個)のストックオプションが付与されている。
 今回、エコミック社は550株を公募増資する。また、キャリアバンク社は現在保有している株式のうち250株を売り出し、保有するエコミック株式は2,136株まで低下するが、引受価格(112,200円)で売却できたとすると(取引コストは考慮せず)、約820万円(=(112,200円-79,413円)×250株)の売却益が得られる。キャリアバンク社の平成18年5月期の連結予想当期純利益は7,500万円なので、10%以上を占めることになる(なお、引受会社の収益=(120,000円-112,200円)×(550株+250株)=624万円と計算できる)。
 もうひとつ興味深いのは新株予約権(ストックオプション)である。キャリアバンク社長のS氏は行使価格78,000円で500個の新株予約権が割り当てられている。またエコミック社長のK氏は78,000円で30個、83,000円で100個割り当てられ、それらを含めた潜在保有株式数は170株となる。S氏は(市場株価-78,000円)×500が、またK氏は(市場株価-78,000円)×30+(市場株価-83,000円)×100に出資した株式評価益を加えたものが創業者利益になるといえよう(取引コストを除く)。
 一般的に、株式公開日の終値は公開価格より高い場合が多い。そうなればより高い創業者利益を上げることができる。特に公開価格の決定が個人投資家中心の入札方式から機関投資家中心のブック・ビルディング方式になってから、さらにリターンが大きくなったようである。逆に市場での株価が正しいとすれば、公開価格が低めに決定されていることになり、この現象は「IPOパズル」とも呼ばれている。
 現在、キャリアバンクの株式保有比率は最初に書いたとおり約88%だが、250株の売出しを行ったうえで、株価が行使価格を上回り新株予約権が行使されれば約52%まで低下する。しかし、権利行使によりS氏の株式保有比率は約12%、K氏の保有比率は約4%になるので3者を合計すると約68%と、株主総会の特別決議に必要な議決権の3分の2を超える。そうすることで、創業者利益を享受しながら経営権を十分に維持することができることになる。今回のストックオプションで利益を得るであろう方々は、その分を業績向上で他の株主に報いていただきたいものである。
 このようなIPO時の新株予約権の利用の仕方は特に珍しいものではない。もし他のIPO銘柄の有価証券報告書を入手したなら、チェックしてみてはいかがでしょうか。

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