Der König Hat Eselsohren

「ヘアスプレー」




レディースデイにしろ、映画の日にしろ、普段はなかなか来ることができないんですが、ちょうど今日から学祭休みだと言うことで、かねてから観ようと思っていた「ヘアスプレー」。


良くできてます。

あんまりメジャーな映画を観ないのと、ミュージカルに縁がないので、他の映画はわかりませんが、ミュージカル映画としてはかなり成功しているんじゃないでしょうか。
そもそもミュージカルって、あのいきなり歌い出す唐突感が日本人には馴染めなかったりしますが、これはそもそもがダンスを主軸にしているだけに、あまり違和感はない。

内容も、未だロングランを続けているブロードウェイミュージカルをもとに映画化しただけあって、脚本もよく練られていて、それだからこそ、エンドロールも含めて2時間近い長尺にもかかわらず、それを感じさせない仕上がりになっている。

しかも、トレーシー(主役)の女の子が、あれだけの体格でありながら良く踊る!!
エドナ(トレーシーのママ)役のジョン・トラボルタも、ラストでのダンスは圧巻!!
そのほかにも、シーウィード役の男の子はなかなか。
実にこう、すがすがしく、楽しい映画でしたな。













と、まぁ、普通の人なら楽しい感想を書き、多少ひねくれている人は、話が単純だとか色々と難癖をつけるんでしょうが。










もっともっとひねくれている私は、半分は、素直に楽しい映画であることを認めつつ、心のもう半分は辛くて仕方がなかった。

それはこの映画のせいではないのだろうが。


この映画(以下「新ヘアスプレー」)を観る前に、もう一度、本当のオリジナルである、ジョン・ウォーターズの映画(以下「旧ヘアスプレー」)を観たいと思い、レンタルで探したのだが見つからなかった。
しかたなくDVDを買おうと思ったが、2004年に発売になっているDVDは既に廃盤に。
どこかの店舗の片隅に残っている在庫を探し出すか、無駄にバカ高くなっている中古品を買うかしかない中で、結局観られずじまいだった。

今日、新ヘアスプレーを観たことで、やはりもう一度、旧ヘアスプレーを観たいという思いが再燃した。

私にとって、旧ヘアスプレー自体は、それまでのジョン・ウォーターズ作品に比べて毒気の薄い作品だった。
だからこそ、映画館で1回観たっきりだったのだ。
しかし、そこに至るまでの思いは強い。
88年に米国で公開された直後、エドナ役を演じた怪優・ディヴァインが急死。旧ヘアスプレーは彼の遺作となってしまった。
そして私は、1年間、公開される日を待ち続けていたのだった。
1年間ずっと、欠かさず「ぴあ」をチェックしながら。
当時、旧ヘアスプレーの最大の目玉は、それまで常に女装していたディヴァインが、エドナ役の他に、TVプロデューサー役として初めて男装して出演した、というものだった。

旧ヘアスプレーは、都内でさえ、単館上映しかされなかった。
そして私は、今日の定員120名のスクリーンとおそらくほぼ同規模のスクリーンで、今日よりももっと少ない観客の一人として、スクリーンを見つめていた。
あれは確か春だったから、二十歳になる直前のことだ。

そして今日。
新ヘアスプレーでは、私がかつて観た旧ヘアスプレーの「薄汚さ」はすっかり払拭されていた。
「洗練」と言うより「精製」といった感じだろうか。
登場人物が皆、旧ヘアスプレーの人間くささが消えて、スッキリと綺麗な物語の記号に変換されていた。
物語自体もきちんと整理されて、山場の持って行き方も実に教科書的。
本来ならば、旧ヘアスプレーが、旧ヘアスプレーのトレーシーがもっていた、無垢と言うよりも、バカな雌ブタのむちゃくちゃなエネルギーこそが時代を突き動かしたのだろうという、ある意味、説得力のある内容が、「現代から見たあるべき姿」からのアプローチに変えられているように思える。
しかも未だ議論の対象になっている同性愛を外して、人種差別だけに特化した辺りが、良い子ちゃん風だ。
もっともそうしなければ、ブロードウェイの舞台に上げることが難しかったのだろうが。

そして、観ていて一番辛かったのが、エドナ。
トラボルタのダンスは、心底、絶賛に値する。きっとディヴァインだったらあれほどには踊れない。
しかし、それ以外の場面では、どうしてもディバインを超えていない。
ディヴァインのママっぷりに比べると、どうしても付け焼き刃というか。詰め物が明らかに詰め物とわかるのも問題なのだが(笑)
おそらく、旧ヘアスプレーを知らない人が見たら、ママ役にトラボルタを起用する意味合いは、ダンスシーンにしか見いだせないだろう。
ブロードウェイでもママ役は男優という決まりらしいのだが、少なくとも、旧ヘアスプレーの存在がもはや風前の灯火となりつつある日本では、「わざわざ男優が演じる必要がないんじゃない?」なんて言い出しそうな気がする…。

そんなことをつらつら考えながら観ていたせいで、トラボルタが出てくるシーンでは、ついつい泣きそうになった。
ディヴァインが生きていたら…(ノ_<。)
もちろん、生きていたとしても、年齢的に今回の映画ではママ役は無理だろうが、プロデューサー役では出演できていたかもしれないと思うと、今回の映画のプロモーションではあまり触れられなかった彼のことをもっともっと多くの人に知って貰いたいとすら思う。
あともうちょっと長く生きていたら、カルトムービーの女王以上になれたかもしれないのに…。






あ。すんません。書きながら泣きました。てへ。

ちなみに、変質者役でジョン・ウォーターズが出演している場面で、「うぉ!」とか声をあげちまいましたf(^ー^;
特に隣に座ってた方、ごめんなさい。出てるのはわかってたのに(笑)
そのシーンだけは画面がジョン・ウォーターズ色でしたf(^ー^;
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