キジローはまだ呆然として、ビスケットの味もよくわかっていないようだった。無抵抗にサクヤの差し出したお茶を飲み、渡されたビスケットを口に押し込んでいる。
イリスはエクルーに耳打ちした。「どうしてあの黒い男は、サクヤにべったりはりついているんだ?」
「サクヤが医者で、彼はもっか患者だから」
「それにしても、ずうずうしすぎやしないか。俺がひとこと言ってやる」
エクルーが慌てて止めた。「イリス。いい . . . 本文を読む
「107全部閉じてたと思ったら、今度は一斉に全部開くなんて。この3年、こんなこと初めてだよ」
エクルーが言った。
「俺だって、17年生きてて初めてだ」
グレンは大きな息を吐いた。
ゲートが開いているかどうかは、一目瞭然だった。昨夜と泉の明るさが全然違うのだ。祠の上の縦穴から青く輝く光が漏れている。脊梁山地沿いに、少なくとも5つ向こうの泉の光まで見えていた。
「他の苗床の定点カメラ、ご覧に . . . 本文を読む