『このうちは何かとちょっと変わっているの』 葵さんにそう説明された住吉神社での暮らしは、ちょっとどころでなく変わったことの連続だった。でもまあ、概ね神社での経験は楽しいことの方が多い。楽しい、というのとは違うか。悲しいこととかつらい事情も多いおうちなのだ。でも知れば知るほどイヤだな、と思うよりも私にできることをしたいと思う。風変わりだけど、魅力的な人ばかりだからだ。むしろ面倒なのは神社の外の世界だ . . . 本文を読む
新幹線の駅はいつも緊張する。天井が高くて建物が大きいし、とにかく人通りが多い。お店が多くて目が回る。でも王子様の護衛が3人も一緒なので大丈夫。ノン太と鷹史さんと先生。 実はあの夜以来、鷹史さんと話すのを避けていた。何と言っていいかわからなくて、できるだけ考えないようにしていた。だいたいノン太とセットなので、鷹史さんと2人で話す機会などないから、避けていてもなんとかなっ . . . 本文を読む
トン介は怒っていた。「どうして人のおらんとこでそんなん勝手に決めとるんや」 トン介は自分が住吉の長男だという責任感が強いので、館長にきちんと挨拶して、右近を収蔵してもらえる件の御礼もちゃんと言った上で、礼儀正しく館長と岩井さん、葵さんの雑談にも付き合っていたのである。 そしてどうやら今回、トン介は留守番の流れなのだ。サクヤがだいたい住吉神社の半径5キロからせいぜい1 . . . 本文を読む
演奏中に踊り場ホールからウルマスとリューカの姿が消えたのも気がついた。楽器の片付けなどをキジローに頼んで探しに出ると、村主に親指で”来い”と合図された。多分ここだろうなと予想つけた場所にいた。裏手の池の傍でリューカがベンチに伸びていた。「だから言っといただろう」村主がペットボトルの水を差し出しつつ言う。ヤツは何だかんだ言いつつも面倒見がいいような気がする。リューカとの付き . . . 本文を読む
前段はこちら。(その1)、(その2)ーーーーー ○ ーーーーー ○ ーーーーー ○ ーーーーー ○ 少し遅い昼食は手打ちうどん屋でとった。桐花のリクエストだ。最近父親のキジローが手打ちうどんに凝っていて、少しお手伝いなどしたものだから、家でも外でも桐花はうどんに夢中なのである。お店の人が足でぐっぐっと踏んでいるのを、トン介に抱っこしてもらって一生懸命見学していた。運ばれて来たかけうどんを、トン介 . . . 本文を読む