ジンがガタッと立ち上がった。
「目が開いているぞ!」
治療槽の中の子供が、目を見開いてガラスを叩いていた。瞳は焦点を結んでいない。閉じ込められた動物が出口を求めて闇雲に暴れるような、叩き方だった。
「セバスチャン、音楽落として! ジン、何か話してあげて!」
「何かって、何をだ?」
「何でも、この子が落ち着くようなこと!」
サクヤは薬品庫に走っていってしまった。子供は、両手両足でガラスを蹴りな . . . 本文を読む
F.D.(銀河連邦紀元)2524年 ヴァルハラ星系第七惑星 イドラ
地平線が不自然に明るい薄緑に輝いていた。嵐の兆候だ。急がなければ。
ジンは砂埃で見通しの悪い通りから、さらにうす暗い路地に入った。緊張で口が渇く。何度、通っても慣れないものだ。連邦警察法の通用しない辺境にあって、さらにこの惑星はとびきりの無法地帯だ。頻発する磁気嵐のために宇宙船が発着できるのは月に10日もない。結局、こ . . . 本文を読む
北東の空を3つ、流星が流れた。大きく弧を描いて西の岩山に落ちた。
祖父はよく、星がたくさん流れる夜には亡くなった人の魂が帰って来るんだ、と話していた。
……ばっちゃん、帰って来てるのかい? この花、ばっちゃんと同じ名前だろう?
私は祖母の墓に、青い花を供えた。今では、西の沼地を青く染めるほど咲き乱れる花。
祖母の生前にはごく稀少な植物だった。この花を見つける度、祖母はそれは喜んだそう . . . 本文を読む
イドラが「神隠しの惑星」でなくなったわけ。
庭守りや泉守りが ”神隠し”を繰り返して、イドラの生命と石の子供を救う物語。
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『かのこの博物館付属図書室』の感想掲示板は 『葉月書房』 に移動しました。
というわけでここは図書室別館というか……改訂版『神隠しの惑星:第一部』を掲載させていただきます。
毎年のように引越していてすみません。
皆様の変わらぬごひいきとご愛顧をお願いいたします。
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