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あをまる日記

つれづれエッセイ日記ですv

危険な好奇心(オカルト板より)

2012-09-30 22:06:21 | ネット関係

「危険な好奇心」は2006年にオカルト板に投稿された長編恐怖体験談。
数多い投稿の中でも未だに人気の高い話らしい。

http://syarecowa.moo.jp/126/52.html(←全文はコチラに)

内容は創作っぽいが、一応実話体験談として投稿されたもの…なのかな?

『小5の夏休みの深夜、三人の少年がに裏山に作った秘密基地で遊んでいる時、他に人の居る筈もない場所で響く物音と人の気配。逃げ帰ろうとするも好奇心に負けて「見てはいけないもの」を見てしまい、そこから長い恐怖が始まる』

というお話。
以下、結末に纏わるネタバレを含みますので御注意下さい。




この話は文章を読んだ訳じゃなく、you tubeの怪談朗読動画でたまたま聞いて知った。
怖いと評判の人気作だが、個人的には他の投稿に比べて別段怖さが際立ってるとも思わなかった。

何しろオカ板には、他に怖い体験談が無数にある。
例えばこの「リアル」という長編。
http://syarecowa.moo.jp/264/5.html

リアル、というタイトルは投稿者ではなく、まとめサイトなどで後につけられたものと思われるが(危険な好奇心も、無論そうだろうが)
タイトル通り、読後感が他の怪談に比べてずっしりと重い;
描かれる怪異の描写は別段際立ってはいないが、難病や事故の怖さを伝える啓蒙映画同様、これ読んだ後は霊障というものの理不尽さと怖さ、「軽い気持ちで霊的なものに関わってはいけない」という投稿者からの警告が重く気持ちに圧し掛かる。
お坊さんや神主さんや、霊感のある友人などが解決に力を貸してくれたり、怪異が起きた理由などがある程度は提示される事が多い他の怪談とは並べると、付けられたタイトルに妙に納得してしまう別個の怖さ。

そして定番怪談のひとつ「猿夢」シリーズ
(注:この怪談は所謂「自己責任系」で、読んでしまうと怪異が伝染し祟られる、と言われている系統の物なので、気になる人は読まないで下さい)
http://syarecowa.moo.jp/1/009.htm
http://syarecowa.moo.jp/102/074.htm

「猿夢」は、妙に生々しい感覚で殺されそうになる夢を繰り返し見て、辛うじて目を覚まし夢の中の危機から逃げ切る事が出来たが、もし今度夢の続きをてしまったら、自分は現実に死んでしまうのだろうか?と締めくくられる怪談。
「夢」という、当人にはコントロールのきかない世界の事ゆえ、この怪談を聞いてしまった記憶に影響されて、今夜にもそんな夢を見てしまうのかもしれない、という怖さがじわりと後を引くのが特徴。
…実は私も遥か昔、二度(子供の頃と20代の頃)に「夢の中での行動が違えば生きて帰って来られなかったのだろうか?」と思う夢を見ているのだが、オカルトが好きだという知り合いに、何となくこの夢の内容を話した所「それって猿夢っぽいですね」と言われて、そういえば、と感じたのが最近の事。

夢の記憶など、日々どんどん流されて消えてゆく中(私は元々夢見は悪い方で、今朝もゾワリと来る夢を一つ見たが、多分この文を投稿する頃には細部は忘れているだろう)
そのふたつの夢は、目覚め前後の不可解な出来事を含めて今も妙に忘れられない;



で「危険な好奇心」だが、個人的にこれは怖いというより、ホラー要素のあるジュニア向け小説というか、夏休み映画のような感覚で普通に楽しんだ。
恐怖を体験する三人も、語り手である主人公、裕福な良家の子息で頼れる兄貴分の慎、優しく気弱な淳、と王道の配置で、モンスターである「中年女」も含めて登場人物が親しみやすいし、また夏休みに裏山の秘密基地で二匹の犬達と過ごす一夜から始まる物語のどこか懐かしい空気も含めて、この長編は人気が高いのだろうとも思った。

映画「スタンド・バイ・ミー」とか。こういう作りの話しは、皆好きだものね。そういえばスタンドバイミーも「事故死した少年の死体を探しに出かける話」(原作のタイトルは確か「死体」だったっけ?原作者は元々ホラー作家だし)で死体捜しの冒険、という要素と、終盤に画面に映し出される少年の亡骸の、しんと見開かれた青い瞳のインパクト。そんな身近にある「死」の鮮明な影が映画に影を齎している訳で。
「学校の怪談」しかり「夕闇通り探検隊」しかり、ホラー要素とノスタルジィは元々抜群に相性が良いのだ。


三人が目撃したのは、幼い少女の写真に一心に五寸釘を打ち込む見知らぬ中年女性の姿で、見られた事に気付いた女は、少年達を庇う犬達を惨殺し、正気を失くした形相で追って来る。

丑の刻参りは、呪詛が成就する前に他人に儀式を目撃されると呪いが自分に跳ね返ってしまう為、万が一見られたらその目撃者を消さなければならない、というルールがある為らしいが、それが理由というよりは、たまたま出会った子供達に理不尽な憎しみが向かってしまった、という感じだ(電波さんと化した人間にはよくある事だと思う。訳分からんキッカケで信じられない程他人を憎悪する人間は実際この社会に幾らでもいるのだ;)

そして、逃げる際運悪く名前入りの所持品を落とし、相手に身元を知られてしまった少年、淳は、女に名指しで盛大に呪詛されてしまい(「淳呪殺」とそこら中の木に刻まれ、所持品に釘を打たれた)そのショックからか体調を崩し、そのまま不登校になってしまう。
狂った女は怖いものの、親に嘘をついて外泊した事がバレるのもマズい、という子供らしい事情からあの恐ろしい一夜の出来事を大人に打ち明けられずにいるうちに、子供達の間である噂が流れるようになる。

夏場だというのに厚手のコートを着込んだ変なおばさんが通学路に現れ、子供の顔をひとりひとり物色し、誰かを探しているというもの。
少年達は「トレンチコートの女」はあの時の中年女性ではないかと恐れる。
…この辺、都市伝説とか現代妖怪っぽい。
口裂け女とかトイレの花子さんとか。

ちなみに「口裂け女が流行した頃集団下校した小学校」っつーのが伝説化してたらしいのはちょっと笑った;
それウチの母校ですよ;確かに下級生が集団で帰るの見てました。(口裂け女の噂発祥の地、の候補として挙がってる地域だったので)
ただ、あんだけ大流行し、校区である○○地区で目撃した!と校内大騒ぎだった割に、怖がりの筈の私が一ミリも怖かった記憶が無い。
…理由はごく単純。私がぼっちだったからだ;
インターネットが存在しなかった時代、現代妖怪が生きていたのは「子供の噂話」の中。
子供同士のコミュニティの中にしか存在しない妖怪だったから、集団下校騒ぎに至った辺りでようやく存在を知ったレベルの奴には、怖くも何とも無かったんだな~;


と、また話しがそれた;

少年達は不安と危険を感じ、再び山に入って証拠集めをして交番に届けたりと必死で抗うも、交番では「本当なら先生か親御さんと一緒に来て」とあしらわれたりと、親バレしない範疇での子供達だけの戦いには限界があり、下校時に尾行してくる女に自宅がバレないように遠回りして帰るといった、まるで子供にしか見えない幽霊と戦っているような孤独な攻防が続く。
(…しかし、変質者に付け回される危険よりも親にしかられるのが怖い、という心理はいかにも子供の発想だな)
不登校になって家から出てこない一人は置いといて、秘密を共有する二人の少年の孤独な戦い、という場面で、得体のしれない女の脅威により、主人公が自分の弱さに気付いた時、さらりと支えてくれる慎に励まされた時の一文。

『普段対等に話しているつもりだったが、慎はまるで俺の兄のような存在だと』

↑ここで私の心に若干の「萌え」が入った;
こりゃもう彼は他の二人よりやや背が高めのイケメンに脳内設定するしかないな、みたいな;

しかし結局自宅は突き止められ、敷地に侵入されて磨りガラス越しに覗きこまれたりと脅威はMAXに達し、ようやく親に全て打ち明ける決心をする。
大人が介入してからの展開は早く、女の身の上と動機、彼女が山で呪っていた少女の正体なども警察によって明かされ、事件は一旦の解決を見る。

ここまでが前編。
(モンスターもまた不幸な身の上であった事が明かされはするが、特に同情する気が起きないあたりもアメリカのホラーっぽい)



それから五年後、高校生となった三人は進路がバラバラになり付き合いも途絶えていたが、バイク事故で入院していた淳からの一本の電話によって三人は再び集い…。
あれから五年…スティーブンキングのノスタルジックホラー「IT」のようです。

ただ、
「語り手である主人公」
「良家の子息で頼りになる兄貴分」
「優しく気弱な少年、ずっと不登校の為出番少なめ」

と、小学生編はキャラ配置が絶妙だった事も魅力だったが、高校生編は皆「イマドキの子」に成長してて;特に前編にてやんわりと萌えさせてくれた慎くんが(東京に進学していた為、中々登場しない)満を持して(?)再登場した時は唯のギャル男になってたり、まー実際はそんなもんか、とガッカリしてみたり(笑)


夏休みの一夜、仲好し三人組と裏山の秘密基地、そこで飼ってる野良犬達。
少年達と狂人との深夜の遭遇と恐怖、ショッキングな出だし。
大人の介入のない子供の世界をじわじわと追い詰めてくる不気味な現代妖怪と少年達の孤独な攻防と友情の描写。
とうとう怪物に身バレし、留守番中の自宅で主人公が追い詰められるクライマックス。
その後の急展開と、事件の真相や怪物の正体など、全てが読者に提示される前編の終盤。
それから月日がたち、五年前の事件では不登校になっていた為、夜の山で遭遇したきり女の顔をまともに見ていない淳くんが入院先から「どっかで見たような気がする掃除のおばちゃんが、夜中にニタニタ笑いながらカーテンの隙間から俺の顔を覗きに来る」という相談を持ちかけてくる出だし。恐怖再び!
……そして苦い余韻を残すあっさりとしたバッドエンド。

オカルトのようでもあり、サイコホラーのようでもある。(淳くんが二度も変調きたしたのは、呪いの効果にも見えるし、多感な年ごろに受けた精神的ショックのせいかも、と思えば思える微妙さ)
そして実話のようにも、創作のようにも見える。そんな微妙なバランスもまた魅力的な怪談だと思った。

エピローグの「あれから八年」という締めくくりからすると、この話は現在25歳前後の語り手による少年時代の回想、になるんだけど、全般に妙に濃い昭和の香りがするなーとも思った。
や、小学生が学校の裏山を一時間歩いて遊べるくらいの田舎なら、案外今もこんな空気なのかもしれないが.




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