あおこのぶろぐ

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堪能! 黒田博さん主演 二期会「ファルスタッフ」

2021-07-20 14:14:24 | 日記
三つ子の魂百までと言うけれど、オペラを観始めて3年目までに観た作品は「好きな作品」になる確率が高く、「ファルスタッフ」もそういった作品の一つです。

オペラ的に「幼子」だった1982年の二期会の公演を観に行きました。
栗林義信さん主演の組で、小澤征爾さん指揮の訳詞上演で、これは確かテレビ確かテレビでも放映されました。
ビデオデッキは当時家になかったので、映像は残っていませんが、録音してよく聴いていました。



同じ頃に、ラジオで放送されたカラヤン指揮、ウィーンフィル、ジュゼッペ・タデイ、ローランド・パネライ、フランシスコ・アライサ、ライナ・カバイヴァンスカ、ジャネット・ベリー、クリスタ・ルートヴィヒ他の演奏を、やはり録音してよく聴いていました。なかなか豪華キャストです。


その後舞台では、2001年の二期会(森麻季さんのナンネッタがやたら目立っていた印象)、新国立劇場の公演などを観ましたが、いつしか鑑賞がドイツ物優先になっていったこともあり、舞台で観るのはかなり久しぶりです。

今回の二期会公演、初日、2日目(金、土)と行く予定でした。
公演日が近づくと、頭の中を「ファルスタッフ」の中の一節が流れ、すっかりファルスタッフモードになっていたのですが。
出演者に陽性が出たということで、初日が中止になってしまいました。
4日間しかない、ダブルキャストで2日間ずつしかない公演の1日がなくなるって、無念です。
2日目からは、毎日当日に開催可否が発表になるという、かつてないことになってしまいましたが、3日間とも出来て良かった!

ということで、7月17日、観に行きました。




まず、ロラン・ペリーの演出、とても良かった。
舞台が近代に置き換えられているけど、プログラムにあったように、「読み替え」ではない。台本に添った演出でした。
また、最近はプロジェクションマッピングを使ったり、簡素な装置でいろいろな場面を工夫で見せる演出も多いけど、しっかりとした装置を左右上下に空間をうまく使った、「舞台らしい舞台」でした。

歌い手さんは、階段を上り下りしながらの歌唱で大変そうでしたが、大人数のアンサンブルオペラを、段のある装置で視覚的にもわかりやすく見せていました。
衣装の色で登場人物(女性陣)が判別し易いのも良かったです。
指揮はベルトラン・ド・ビリーの代役で若手のレオナルド・シーニ、オケは東フィル。
将来、この指揮者の演奏聴いたことある、と自慢出来るような大物になってくれたらいいな。

歌手の皆さん、個人的に、好みや理想と違うと思う部分もありましたが、全体的に大きな不満はありません。
突っ込みどころも少なく、いいバランスだったと思います。

敢えて言うなら、カイウス(澤原行正さん)がかっこよ過ぎたかな。
フェントン(山本耕平さん)は色気があったから、ナンネッタ(全詠玉さん)が夢中になるのも仕方無いけど、カイウス先生でもいいじゃん! と言うか、先を考えたら(それほど年にも見えないし)カイウス先生のほうが結婚相手としていいかもよ、と思えてしまった(笑)。

そして、なんといっても素晴らしかったのは黒田博さん!
今まで観たファルスタッフは、まん丸のじいさんで、二人のご婦人(夫人)に求愛するなんて、もうギャグとしか思えなかったけど、ドン・ジョヴァンニも得意とする黒田さんが演じると違って見えました。
昔はブイブイ言わせていた、年を取って太ってしまったけど、昔取った杵柄で「誑し込んでやろう」と思ったとしても不自然ではない。 

今回フォード氏(小森輝彦さん……びわ湖のテルラムントお二人の競演でした)はバーコード頭に黒縁眼鏡という見た目。
このファルスタッフとフォード氏を見て浮かんだのが、女同士でしばしば話題になるテーマ。
「殿方の頭髪と体型はどちらを重視するか」。
有り体に言うと「ハゲとデブならどちらを選ぶか」という論争。
陽気な女房たちも、日頃話題にしていたに違いない(笑)。

私は、もともと頭髪は気にならないほう。頭髪は自分ではどうしようもないけれど、体型は自分の努力等でなんとか出来るし。
恰幅がいい、くらいならいいけれど、不摂生、不健康そうなデブは嫌かな。
ファルスタッフは明らかに不摂生に見えた。
けど、黒田ファルスタッフならOKかも、と思っちゃいました(^_^;)
ファンの欲目からかも知れませんが。

ラストシーンは、ただファルスタッフが懲らしめられ終わったというより、もっと深く感じました。すべてはファルスタッフが仕組んだのでは? とさえ。
それだけにフィナーレの歌詞も深く響きました。

やはり黒田さんは、世界に誇る日本のオペラ役者さんですね!

18日は行けませんでしたが、今井俊輔さんの組も観てみたかったです。

とにかくヴェルディの音楽、作品の素晴らしさを堪能し、公演を観られる喜びを感じた1日でした。



上野のマチネの後、いつも写す、文化会館近くのムクノキです。↓