以前、横浜LIVEで大変お世話になり、その後も親交を深めさせて頂いている「チームリンクス」の
メンバーの方から東日本大震災のチャリティLIVEの話をいただいたのは、一ヶ月ほど前の事。
(趣旨)被災地支援ライブキャラバン 実施情報!
東日本大震災から2年5ヶ月。被災地の多くは未だに震災の爪痕が残ったまま、行政の対応の遅れから現在も不便を強いられています。
そこで、横浜の市民団体で構成される「Team Links」では、来る8月15日、16日、岩手県上閉伊郡大槌町にて、被災地への祈りを捧げるために、神戸と横浜2つの港町からのメッセージ(歌と寄せ書き)を届ける復興支援ライブキャラバンを開催いたします。
今回の計画は、現在も三陸鉄道・JR山田線、岩泉線、気仙沼線などが...運行再開されずにバスによる仮復旧という状態であること、そして、未だ多くの仮設住宅が稼働していることなど、あまり公開されていない現地の情報を市民団体の活動として公開し、被災地への理解を全国に広めることを目的としています。
内容としては、阪神大震災の被災地、神戸からの実力派デュオ「Anwish」と、同じ港町の横浜からは「JIINO」、この2組のアーティストによる応援と祈りを込めた歌と、両地元の方々から託された被災地へのメッセージ(寄せ書き)を、お盆という魂が帰る大事な時期にお届けいたします。
被災地外の我々の意識が薄れていきがちな中、被災地の現状を伝えることと、他の地域からの応援や想いを現地に伝えること、この双方の架け橋(虹)として、音楽という我々にできる手段を使い、まずは行動を起こすこと、そして今後にも繋がり、活かせるような道を見つけていくことを目指しています。
(Team Links 笠原氏作成文章より引用)
というもの。
「私たちが出来ること」とは一体何だろう。
でも、少しでも力になりたいとの思いで行かせていただく事を決意する。
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新神戸から東京まで新幹線で4時間。
そして、東北新幹線に乗り換えて盛岡まで4時間。
ほぼ一日をかけて岩手に向かう事になった。
途中、福島の風景が目に飛び込んでくる。
美しい光景。
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でも、今、放射能がこの美しい福島を苦しめている。
非難区域の方々は、家にも帰れず、目に見えない放射能に怯え、測定器を持ち歩く。
発ガンのリクスは高くないとの発表があるも、実情は分からない。
妊婦の方、子供を持つ親は、どんな思いだろうか。
風評被害で、海産物が売れないなど仕事を失った方も多いだろう。
家も、仕事もなくし、将来の不安だけが重くのしかかっている。
そして、いまだ原発の現場で命を懸けて作業を行ってくださっている方々がいる。
自己被爆するだけでなく、自分が放射化し、周囲の人までを被爆させてしまう可能性も出てくる。
それは、もちろん人だけに限らない。
もう、福島だけの問題ではなく、日本、世界の問題だ。
誰が、「日本は平和」と言ったのだろう。
これが、日本の現実だ。
岩手へ向かう新幹線の中、行き場のない怒りと現実と向き合わなければならないという、気持ちが入り混じっていた。
岩手に行けばきっと、目を背けたくなるような光景があるだろう。
自分自身が視察する事ももちろんだけれど、それを写真に収め、こうやって発信する事を亡くなられた方々は、遺族の方々は許してくれるだろうか・・
何度も何度も考えた。
でも、伝える必要がある。
亡くなった方々の死を無駄にしない為に。
未来のために。
二年経った今の岩手を知ってもらうために。
そして、頑張って生きている岩手の方々と岩手の魅力を知ってもらうためにも。
そして、私は何度も「どうか、許してください」と祈りながらシャッターを切ることになる。
新神戸をお昼過ぎに出て、夜八時過ぎに盛岡に到着。
神戸と違って夜肌寒いことに驚く。
せっかく岩手に来たのだから、岩手の三大麺の一つ「じゃじゃ麺」をいただく事に。
麺は、もちもちきしめん。
味噌とニンニク、生姜が利いていて、辛うま。
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「食べ終わったら、卵を割って店員を呼んでね」と書いてあるので、付いてきた玉子を割って、店員さんを呼ぶ。
なにやら、だし汁のようなものを入れてくれ「チータンタン」というものを作ってくれた。
うましうまし。
盛岡に一泊し、翌日は朝9時出発。
震災後、6.500人の社員が岩手入りし、電話の復旧に尽力されたと聞くNTT。
今回、有りがたくもNTT東日本の方のご協力を得ることが出来、岩手の被災地を案内してくださる事になった。
まずは、陸前高田を視察させて頂く事になるが岩手は広い。
盛岡から林業で有名な住田町を抜け、陸前高田を目指す。
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山が深く、何とも言えない青々とした美しい山々に迎えられる。
途中、道の駅で小休憩。
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陸前高田はまだ、まだ先だ。
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そして、道の駅で、さまざまな物を売っている素敵なご夫婦に会った。
ご夫婦は、内陸に住んでいて被害はなかったそうだ。
良かった。
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手作りのコインケース。
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Ni-noも買いそうになったりして、なかなかの商売上手(笑)
そして、宮沢賢治の作品のモデルになったとも言われる「めがね橋」が壮大な山々と共にそびえ立っていた。
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夜は、ライトアップされるそう。
写真ではなかなか伝えきれないけど、スケールが大きくて、とっても気持ちよかった。
そして、鮎が良く取れるという、清流にも案内して頂いた。
釣りをしている人も多かった。
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NTTの岩手の方は、飲み会の時、人数分、鮎を釣ってから行くときもあるらしい。
なんてワイルド。
そして、いよいよ陸前高田入り。
死者1556人、行方不明者217人、家屋倒壊数3341人と、大きな被害が出た岩手県陸前高田市(2013年3月11日時点)。
死者・行方不明者を合わせると市の人口の7%以上が失われたことになり、市長も奥様を亡くされている。
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ただ、ただ、何もない平地。
「ここは、町の中心地だったんですよ」そう、言われるまで、そんな風にしか見えていなかった。
そこは海から2、3キロは離れているのに、根こそぎ、まるごと町一つがなくなっていた。
平地だと思っていた所も目を凝らすと、家の基礎が残っていたり、あちらこちらに花がたむけられていた。
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平地にぽつんと立つNTTのビル。
NTTのビルは、電話というライフラインである為、電話の設備が入っているビルは、ありえないぐらい頑丈な作りになっているそうだが、中はボロボロだった。
海から2、3キロはある、高いNTTのビルなのに、屋上の手すりが捻じ曲がっている。
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それほど、威力のある津波が力を緩める事なく襲ってきたという事だ。
ある方から、普通「波」というのは、上が早く、下は遅く押し寄せるものだけど
津波は高い壁が上も下も同じ勢いでどん!と何度も来るようなものだ、だから逃げ場がないんだと教えて頂いた。
想像を絶する水圧に加え、ありえない漂流物。
生き残られた方から「ひざまでつかれば、もう手遅れだよ」とも教えて頂き、自分の甘さを痛感した。
これは、集合住宅。
これは、球場。
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ライトだけを残し、球場はまるごと海に沈んでしまっている。
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戦後を想像させる光景。
本当に何もない・・・
「町の中心地だった」
その言葉を受け入れるのに、ずいぶん時間がかかっていた。
もう、原型を留めていない建物。
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防風林があった陸前高田だが、たった、一本だけが残った「一本松」
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自衛隊の方々が埋まってしまった町の中を棒で遺体を捜された時、
「遺体を見つけるためにしているが、本当は見つかってほしくない気持ちもある」と
悲痛な表情で話されていたという話もお聞きした。
ボランティアでよく被災地を回られる方も同じ話をしていた。
「現場に慣れている方の僕らでも、気持ち的にかなり厳しかったよ」と。
あらゆる現場に行かれているはずだが、それほど悲惨で悲しすぎる現実だったのだ。
そして、大船渡市。
死者340人、行方不明者80人、家屋倒壊数5515人(2013年3月11日時点)
死者・行方不明者を合わせると市の人口の1%以上が失われた。
ここは、商店街だった。
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そして、また見渡す限り何もない、光景が続く。
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四隅の柱らしきものだけが残っている。
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これはカラオケBOXだった。
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あらゆる所に津波の爪あとが強烈に残っている。
そして、ご案内くださった、お二人に連れられて、「まんぼう亭」で海鮮丼をごちそうになった。
岩手は、食べ物が本当に美味しい。
こんなに、美味しいお魚を食べたのは初めてだった。
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そして、腹ごしらえの後、釜石市入り。
死者888人、行方不明者152人(2013年3月11日時点)
死者・行方不明者を合わせると市の人口の2%以上が失われた。
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NTTのビルも一階を潰し、二階が一階になっていた。
そして、海。
以前は満潮になっても、海までは1mは距離があったのに、地盤沈下により
今、満潮時は、足元まで海が流れ込んでくる。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/b0/313076468a1c1ea8fb8524d0055f6fca.jpg)
ものすごい亀裂。
地震自体のすさまじさを物語っている。
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海を愛する岩手の方々。
でも、この海に愛する人達が飲まれていった。
それでも、この海と共に生きている。
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そして、この美しい海には、今も多くの方が眠っている。
未だ、ボランティアの方が、もぐり遺体を捜されているそうだ。
そして、ここで案内してくれたNTT東日本の方々とお別れをする。
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左のかわいい人が佐々木さん
右の優しそうな人が中村課長さん
佐々木さんは、入社3年目。
入社して、初めての仕事が救援物資の仕分けだったそうだ。
お二人とも、本当に素敵な方だった。
暖かな、あの笑顔が忘れられない。
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この日は、釜石市に宿泊。
次の日は、LIVEだ。
岩手の方々を少しでも笑顔にしたいと思ってきたのに、心は重く、沈んでいた。
「私たちが出来ること」とは一体何だろう。
その日は、なかなか寝付けなかった。