時には目食耳視も悪くない。

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オヤジ好きのルーツ。

2017年06月02日 | 漫画
 いきなりですが、私の好みのタイプは「ぽっちゃりした優しそうなオジサン」です。

 そんな私の好みド真ん中のキャラクターを描かれる漫画家さんがいます。

 主に歴史長編漫画を手掛けておられた、横山光輝さん(1934-2004)です。
 《鉄人28号》(1956-66、光文社)や《魔法使いサリー》(1966-67、集英社)など、子供向けの漫画作品もあり、アニメ化されていますね。

 サリーちゃんのパパなど、横山さんの描かれるオジサンキャラは魅力的で、ほとんど好物なのですが、一番の萌えキャラは《武田信玄》全5巻、新田次郎原作、横山光輝著(1997、講談社漫画文庫)のお館様です。

 言わずと知れた戦国武将、武田信玄が若い頃から描かれているので、私好みになるのは出家した3~4巻くらいです。
 どっしりした体格と、理知的な顔、冷静沈着な思考、全体的に頼もしい感じがたまりません。
 (女好きなところは、ちょっと…)

 横山さんの他の作品でも探してみたのですが、なかなか私的萌えキャラが見当たりません。
 みんな野望でギラギラしていて(当たり前です)、安らぎが見出せません。
 戦乱の武将たちに、ゆるキャラ要素を加えていいのは、産業戦略の世界だけですね。
 (とはいえ、ゲーム業界での男性戦国武将の女性キャラクター化にはついていけませんが…)

 野望でギラギラしていると言えば、横山光輝さんの作品に登場する悪女は本当にワルい顔をします。
 《武田信玄》に出てくるお館様の奥様の三条の方もそうですし、《史記》全12巻(1996、小学館)に出てくる孋姫(りき)さん(第1巻第3話登場)も相当です。
 作者さん自身、女の人の恐ろしさを骨身に沁みて知っていたかのようです。

 そんなキャラクター1人1人の表情といい、動作描写の躍動感といい、横山光輝さんの作品は本当に魅力的だと思います。
 何気なく手に取ってパラパラ見ているうちに、どんどん引き込まれて、時間がたつのも忘れて読み入ってしまうのです。

 うちには、兄たちが揃えた《三国志》全60巻(1971-87、希望コミックス)があり、まだ中国の歴史もよく知らない子供の時から、夢中になって読んでいました。
 《三国志》の私的萌えキャラは南蛮王の孟獲さんです。あまりぽっちゃりはしていませんが、恐妻家でツメが甘いところが可愛らしいですね。

 この《三国志》がアニメ化(1991-92、テレビ東京)された時、理由は分からないのですが、子供心に漫画で読んだ方が面白いなぁと漠然と思ってしまいました。
 もともと、そんなにテレビが好きじゃないせいもありますけど。(動画よりも静止画の方が好きなので。)

 話を《武田信玄》に戻しますと、この作品では悪い女性だけでなく、格好いい女性が何人か登場します。
 他にも、いかにも女性らしい、か弱い人も登場するのですが、同じ女として読んでいて嬉しいのは、強く賢く、凛々しい女性たちが活躍する姿です。
 
 新田次郎さんの原作は読んでいませんが、横山光輝さんがこうもタイプの違う女性たちを見事に描き分けている点に、漫画家さんとしての表現力の凄さを感じます。
 歴史を小説や漫画にすると、どうしても男性が中心の描写になり、女性たちは付随的、いわばお飾りのように扱われがちですが、横山さんは男性も女性も平等に、それぞれの短所や長所を誇張したり誤魔化したりせず、あるがままの人間像をそのままに描かれます。

 私は横山さんの作品のそういうところが好きです。私的萌えキャラを大量に描いて下さった横山さんがお亡くなりになった時は、色んな意味で悲しく寂しい気持ちになりました。
 私好みのオジサンキャラを描いてくれる漫画家さんの登場を願ってやみません。



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