歳をとると涙もろくなると言いますが、その反対に子供の頃よりも心が動かされることが少なくなるということもあります。
確かに、いろいろな経験を積んで、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりましたが、それは単純に心動かされる機会が少なくなるというだけで、全く動かないというわけではありません。
というようなことを実感したのがこの漫画作品です。
《卒業生-冬-》《卒業生-春-》中村明日美子著(2010、茜新社)
この作品も、いつものように絵が気に入って読みました。
線の細さや絵の流れが独特で、絵画でいうとミュシャAlphonse Maria Mucha(1860-1939)っぽい雰囲気です。
フェミニンだけれど中性的、冷たい印象なのにしっとりと艶っぽい。
古風という言葉が似あう画調なのに、それが逆に洗練された新しさを感じさせて、全体的にどことなくアンバランスなところが魅力です。
近づく人を警戒しながら、全く興味がないわけではなく、隣にいながら話しかけてはこないものの、内心ドキドキしながら全身でこちらの様子を窺っているような。
そんなふうに、そっと微妙な距離を測られているような気にさせられる作品です。
その筋(?)では大人気の漫画家さんですし、この作品も前作・本作・後作、さらにはスピンオフと一連のお話が続いているほど、作家さんにはもちろん、読者さんたちに愛されている作品なので、改めて内容を云々する必要はありませんが、何が良いって、とにかくエピソードの一つ一つが愛おしいです。
主人公は、同じ高校に通う男子生徒二人(恋人同士)です。
この二人は、前作で晴れて恋人同士になり、本作では高校生活や家庭での出来事を交えながら、二人が関係を深めていくという内容になっています。
たとえば、下校時の雨宿りの最中にかわされる会話の内容であったり、どういうわけか面倒見のいい教師のお節介だったり、頭からパスタをかぶっても気にせずに恋人を助けに来るとか、昭和の時代ではありそうだけど、やっぱり今の時代では起こり得ないこと。(まあ、フィクションですから…)
だからこそ、余計に愛おしく感じるのかもしれません。
読んでいると、不思議な懐かしさを感じます。
言い遅れましたが(今さらですが)、この作品はBL(ボーイズラブ)ジャンルのものです。
個人的には、「男同士の恋愛」という色眼鏡なしで、この作品のレトロな初々しさ、懐かしさを感じ取っていただけたらいいなと思います。
BLジャンルの漫画なり小説を毛嫌いして、その分野の愛好家をも苦手とする方もいらっしゃると思います。
そんな方々に、このジャンルの作品を無理に読んで欲しいとは言いませんが、どうか誤解だけはなさらないようにしていただきたいです。
一言にBLと言っても、その内容は本当に千差万別です。
もしも、BLジャンルをアダルトジャンルの延長線上(性的好奇心をそそるもの)に考えておられる方がいるのなら、それは違います。
確かに、性的表現に特化して書かれているものも沢山ありますが、それは、男女間の恋愛を描いた漫画についても同じことが言えますよね。
BL漫画に「卑猥」とか「汚らしい」という言葉を投げつけるのならば、女性の視点からすれば、男性向けのアダルト漫画の方がよっぽどそれらの言葉が相応しいと思います。(所詮、目くそ鼻くそですがね…)
BLジャンルの漫画作品の中には、真剣な恋愛を描いているものもありますし、長く愛されるのはむしろ、人の気持ちを大切に描いている方の作品だと思います。
(性的好奇心に特化した作品の需要が全くないとは言いませんけどね。)
ただ、男同士だという偏見を持たずに作品に接して欲しいとは思いますが、個人の嗜好の問題が絡んできますので、生理的に嫌悪を感じるのであれば、無理にとは言いません。
私も品性に欠ける(ディスった!)男性向けのアダルト漫画を読みたいとは思いませんし。
それにしても、BLファンというのは圧倒的に女性が多いですね。(たまに、男性ファンもいると聞きますが。)
そもそも、恋愛というカテゴリーのものを嗜好するのは、男性より女性の方がその傾向が強いということが言えるので、自然なことかとも思われますが。
(恋愛漫画に熱心な男性に引いてしまうのも、性差別になるのでしょうか?笑)
このジャンルに限らず、本や漫画を愛する人たちは、作品の中に現実では手に入らないものを求めて作品を読んでいます。
現実では異性同士の恋愛が日常を占めていますが、その中では希薄な関係しか築けない場合がある一方で、フィクションの世界で、同性という障害を越えて愛し合う男性たちの姿に、女の子たちは夢を見ることができるのかもしれません。
女性であれば(男性はどうか知りません)、永遠の愛、揺るぎない愛を持っている男性と巡り会って、愛されたいと思うけれど、現実世界でそんな男性に出会える確率は極めて低いのです。
(まったくゼロとは言いません。)
それに、「永遠の愛」とかいうものは目に見えないし、分かりづらいものです。
現実の過酷さを知り尽くした女性たちは、男女の恋愛を描いた夢物語に出てくる男性のまさに「絵に描いたような愛」では生ぬるいワケです。
「もっとキョーレツな愛が欲しいわ!」という彼女たちの切実な要求に応えるもの。
それが、BLジャンルです。(すみません。勝手な解釈です。)
一言でいえば、「刺激が欲しい」のでしょうなぁ…
知的(&性的)好奇心を満たすために、他人の紡いだ文字を追いかけるという。
考えてみれば、人は面白い性癖を持っていますね。
確かに、いろいろな経験を積んで、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりましたが、それは単純に心動かされる機会が少なくなるというだけで、全く動かないというわけではありません。
というようなことを実感したのがこの漫画作品です。
《卒業生-冬-》《卒業生-春-》中村明日美子著(2010、茜新社)
この作品も、いつものように絵が気に入って読みました。
線の細さや絵の流れが独特で、絵画でいうとミュシャAlphonse Maria Mucha(1860-1939)っぽい雰囲気です。
フェミニンだけれど中性的、冷たい印象なのにしっとりと艶っぽい。
古風という言葉が似あう画調なのに、それが逆に洗練された新しさを感じさせて、全体的にどことなくアンバランスなところが魅力です。
近づく人を警戒しながら、全く興味がないわけではなく、隣にいながら話しかけてはこないものの、内心ドキドキしながら全身でこちらの様子を窺っているような。
そんなふうに、そっと微妙な距離を測られているような気にさせられる作品です。
その筋(?)では大人気の漫画家さんですし、この作品も前作・本作・後作、さらにはスピンオフと一連のお話が続いているほど、作家さんにはもちろん、読者さんたちに愛されている作品なので、改めて内容を云々する必要はありませんが、何が良いって、とにかくエピソードの一つ一つが愛おしいです。
主人公は、同じ高校に通う男子生徒二人(恋人同士)です。
この二人は、前作で晴れて恋人同士になり、本作では高校生活や家庭での出来事を交えながら、二人が関係を深めていくという内容になっています。
たとえば、下校時の雨宿りの最中にかわされる会話の内容であったり、どういうわけか面倒見のいい教師のお節介だったり、頭からパスタをかぶっても気にせずに恋人を助けに来るとか、昭和の時代ではありそうだけど、やっぱり今の時代では起こり得ないこと。(まあ、フィクションですから…)
だからこそ、余計に愛おしく感じるのかもしれません。
読んでいると、不思議な懐かしさを感じます。
言い遅れましたが(今さらですが)、この作品はBL(ボーイズラブ)ジャンルのものです。
個人的には、「男同士の恋愛」という色眼鏡なしで、この作品のレトロな初々しさ、懐かしさを感じ取っていただけたらいいなと思います。
BLジャンルの漫画なり小説を毛嫌いして、その分野の愛好家をも苦手とする方もいらっしゃると思います。
そんな方々に、このジャンルの作品を無理に読んで欲しいとは言いませんが、どうか誤解だけはなさらないようにしていただきたいです。
一言にBLと言っても、その内容は本当に千差万別です。
もしも、BLジャンルをアダルトジャンルの延長線上(性的好奇心をそそるもの)に考えておられる方がいるのなら、それは違います。
確かに、性的表現に特化して書かれているものも沢山ありますが、それは、男女間の恋愛を描いた漫画についても同じことが言えますよね。
BL漫画に「卑猥」とか「汚らしい」という言葉を投げつけるのならば、女性の視点からすれば、男性向けのアダルト漫画の方がよっぽどそれらの言葉が相応しいと思います。(所詮、目くそ鼻くそですがね…)
BLジャンルの漫画作品の中には、真剣な恋愛を描いているものもありますし、長く愛されるのはむしろ、人の気持ちを大切に描いている方の作品だと思います。
(性的好奇心に特化した作品の需要が全くないとは言いませんけどね。)
ただ、男同士だという偏見を持たずに作品に接して欲しいとは思いますが、個人の嗜好の問題が絡んできますので、生理的に嫌悪を感じるのであれば、無理にとは言いません。
私も品性に欠ける(ディスった!)男性向けのアダルト漫画を読みたいとは思いませんし。
それにしても、BLファンというのは圧倒的に女性が多いですね。(たまに、男性ファンもいると聞きますが。)
そもそも、恋愛というカテゴリーのものを嗜好するのは、男性より女性の方がその傾向が強いということが言えるので、自然なことかとも思われますが。
(恋愛漫画に熱心な男性に引いてしまうのも、性差別になるのでしょうか?笑)
このジャンルに限らず、本や漫画を愛する人たちは、作品の中に現実では手に入らないものを求めて作品を読んでいます。
現実では異性同士の恋愛が日常を占めていますが、その中では希薄な関係しか築けない場合がある一方で、フィクションの世界で、同性という障害を越えて愛し合う男性たちの姿に、女の子たちは夢を見ることができるのかもしれません。
女性であれば(男性はどうか知りません)、永遠の愛、揺るぎない愛を持っている男性と巡り会って、愛されたいと思うけれど、現実世界でそんな男性に出会える確率は極めて低いのです。
(まったくゼロとは言いません。)
それに、「永遠の愛」とかいうものは目に見えないし、分かりづらいものです。
現実の過酷さを知り尽くした女性たちは、男女の恋愛を描いた夢物語に出てくる男性のまさに「絵に描いたような愛」では生ぬるいワケです。
「もっとキョーレツな愛が欲しいわ!」という彼女たちの切実な要求に応えるもの。
それが、BLジャンルです。(すみません。勝手な解釈です。)
一言でいえば、「刺激が欲しい」のでしょうなぁ…
知的(&性的)好奇心を満たすために、他人の紡いだ文字を追いかけるという。
考えてみれば、人は面白い性癖を持っていますね。
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