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【動画紹介】ヒトコトリのコトノハ vol.53

2024年05月10日 | 動画紹介
☆本記事は、Youtubeチャンネル『本の林 honnohayashi』に投稿された動画を紹介するものです。
 ご興味を持たれた方は是非、動画の方もチェックしてみて下さいね!

 ●本日のコトノハ●
  一九四一年に、小学校は国民学校と改称され、そこでの音楽教育では、外国語のドレミに代わって、
  日本音名が使われました。生徒たちは、ドレミファソラシドの代わりに、ハニホヘトイロハと歌い、
  ドミソの和音をハホトの和音と呼びました。しかし、政府が音名の呼び方を日本化しても、使ったのは、
  西洋音楽の音階や和音で、日本音楽を盛んにしたわけではありません。

 『ものがたり日本音楽史』徳丸吉彦(2019)岩波書店より


 バイオリンには四本の弦が張られています。
 低い方から、G線、D線、A線、E線と呼ばれ、私は習い始めた時に、ゲー、デー、アー、エーというドイツ語読みで教えられたので、大人になった今でも、音楽上ではアルファベットをドイツ語読みすることに違和感を抱きません。
 そういうものだと慣れてしまっているからです。

 私が子供の頃に出版されていたバイオリンの教本や、音楽理論の解説書には、当然のようにドイツ語の発音が使われていましたが、学生の頃(2000年代)になると、英語の発音でも教本や理論書が増えてきたような気がします。
 それまでは、ドイツ語音名を使うのはクラシック音楽分野、英語音名を使うのはジャズやポップス(特にギター)という勝手なイメージが自分の中にできてしまっていて、新しいバイオリンのテキストの中で英語音名を見ると、いまいち腑に落ちない感覚になりました。

 音楽教室で教える立場になった現在、基本的には使うテキストの表記に合わせて、それぞれドイツ語音名と英語音名を使い分けるのですが、生徒さんによっては、どうしてアルファベットをドイツ語読みするのか不思議に思ったり、ドイツ語の読み方に馴染めなかったりするようです。
 教える立場としては、まずは、楽器の音を正しく出せるようにすることに注力し、それから楽譜に記されている音を出せるようにすることを主軸にしており、音の名前の読み方については正直なところあまり重視していません。

 ドレミの「ド」という読み方は、そもそもイタリア語ですし、アルファベット表記すると「C」となり、英語なら「シー」、ドイツ語ならば「ツェー」と読み、さらに日本語では「ハ」と呼ばれます。
 しかし、実際のコンサートやライブなどの演奏の場で、音の読み方が問題になることなどないのです。
 演奏を聞いている人は、「この演奏者はドをシーと呼ぶタイプの人だな」とは考えないでしょう。
 要は演奏者自身がどんな方法でも各音を識別し、演奏することができれば問題ないのではないかと私は考えます。

 もちろん、自分が認識している音名以外を使いたくないという人もいます。
 それはそれでいいと思いますが、そうじゃない人もいて、それもそれでいいという寛容さを持ってもいいのではないかと思います。
 日本のクラシック音楽愛好家のみなさんの中には、自分の知識、価値観に合わない他の愛好家の人を否定したり、攻撃する人がいます。
 クラシック音楽は元来、西洋で育まれた文化であり、クラシック音楽の本場であるヨーロッパから見れば、日本で営まれているクラシック音楽は亜流にしか過ぎないということは忘れてはいけないと思います。

 第二次世界大戦を契機に使われ始めた日本語音名は、戦時体制下における教育の名残のようで、本来ならば使用するべきではないのかもしれませんが、戦争の悲劇、悲惨さを忘れないために、戒めとして伝え残していくという考えもあるのかもしれないと思いながら、今日もバイオリンのレッスンに臨みたいと思います。



ヒトコトリのコトノハ vol.53


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