KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

ひぐらし-その2 「嘘だッ!」〜そして彼女は豹変する。

2020年03月16日 | カノンの記録

「ひぐらしがなく頃に」でもっと有名なセリフはやはりレナのこの一言。

過去の殺人事件を探る圭一にそっけないレナは逆に圭一に隠し事がないか詰め寄るのですが、否定する圭一に対して、彼女は「嘘だッ!」と凄まじい表情で言い放ちます。

あまりの豹変ぶりに誰もが驚く有名なシーンとなりました。

SDキャラやデフォルメされた顔はよくありますが、可愛いヒロインたちがこれほど恐ろしい顔つきになるのはあまり見たことがないのでは・・・?

(ちなみに猫の目のように光る目は「オヤシロモード」と言われておりました。)

このシーンは鬼隠し編3話で登場。

罪滅ぼし編の熱演と合わせて、ひぐらし1期の主演女優賞はやはり竜宮レナさんかな?

「嘘だッ!」の擁壁 ブロックのある通学路

レナ達と圭一が待ち合わせする場所

連続殺人事件を捜査する大石刑事が所属する興宮警察署

ダム建設跡地のゴミ捨て場

レナにはとって宝の山であり、秘密基地でもある。

 

レナの「嘘だッ!」はこちらの秘密に深入りするなという拒絶感として強く印象に残りますが、

今、現実の世界では

ウィルスの蔓延で封鎖された武漢の市民たちが中央政府側と体制側に逆らえず嘘の報告をする役人に抗議の叫びを上げています。

「嘘だ!全部嘘だ!」と。

そして世界は今新型コロナウィルスのパンデミックです。

すでにたくさんの人々が感染し、命を落としています。

この悲劇と恐怖こそ嘘であって欲しい、信じられない、なんとかして!という気持ちを込めて「嘘だ!」と叫びたい。

 


2006年の仕事①〜ひぐらしがなく頃、惨劇が始まる

2020年03月12日 | カノンの記録

 

☆ひぐらしのなく頃に 第1期   (2006年4月〜9月放送 全26話)  

 

原作 竜騎士

監督 今千秋

シリーズ構成  川瀬敏文

キャラクターデザイン・総作画監督 - 坂井久太

美術監督 柴田千佳子

色彩設計  松本真司

撮影監督 森下成一(第25話を除く奇数話、第26話)、伏見真一(第26話を除く偶数話、第25話)

音楽 川井憲次

アニメーション制作  Studio DEEN

 

 人気同人ゲーム原作のアニメ化作品。

昭和58年初夏、雛見沢という小さな村を舞台に次々と繰り広げられる惨劇を描いた衝撃作です。

第1期は鬼隠し編、綿流し編、祟殺し編、暇潰し編、目明し編、罪滅し編 の6編で構成され、ほぼ同じ登場人物でそれぞれ違った物語が展開されます。

実はこのパラレルワールドは古手神社に祀られている「オヤシロ様」の生まれ変わりと言われる少女梨花によって巻き戻されている世界です。

梨花は過去の連続怪死事件と連動して自らも命を落とす運命にあるため、

自らの死を防ぎ、事件の真相を解き明かすために、何度もリセットすることによって納得できる結末を導こうとしている_といったところでしょうか。

第1期ではこれが明確には明かされず、ゲームを知らない視聴者には戸惑う展開だったかもしれません。

登場人物はそれぞれ一見ごく普通の少年少女ですが、忌まわしい過去の出来事によって心の奥底に抱え持ってしまった怒りのようなものが、

何かをきっかけに一気に爆発してしまうと、驚きの豹変を見せつけます。

理由がよく呑み込めないうちに、物語は唐突に残虐な悲劇となって終了し、また次の編で新しい物語が展開されるのです。

この謎めいた驚愕のストーリーに思わずゾクゾクしてしまうのか、 

真相を待たずして「ひぐらし沼」にはまる人が急増したようで、小学生にも人気があると知って驚きました。そういえば子供って怖いもの、残虐なもの、結構好きなんですよね。

(制作中は マニアックなオタク向けとばかり思ってましたが)

そのためか、子供たちへの悪い影響を憂慮されました。

 

舞台となった雛見沢村は、言わずと知れた世界遺産の白川郷がモデルとなっています。

前年にスタッフ陣で取材に行きましたが、

当時あった前原圭一の家とされた建物や学校の校舎はもう現存していないようです。

古手神社のモデルとなった白川八幡神社では「綿流し」ならず、どぶろく祭りが開催されるそうです。

そのどぶろく関連の製品や竹編みの籠など民芸品のお土産屋が並び、素朴でのどかな村という印象でした。

OPに使用された夕方の雛見沢村全景 

古手神社のある展望台からの眺めです。

生徒数が少ないため、小中合同の学校です。

転校生前原圭一はここで、レナ、魅音、沙都子、梨花らと親しくなります。

 

学校の廊下

 圭一の家外観

圭一の部屋

鬼隠し編では主人公圭一の妄想がおどろおどろしく変化して、悲劇に至ります。

レナと魅音が学校を休んだ圭一を心配しておはぎの差し入れを持ってやってきますが、甘くて美味しいおはぎまで恐ろしいアイテムとなってしまうとは!

 

 

 

最近、新型コロナの陽性患者がバスツアーで白川郷も回っていたと知って、

ウイルスが拡散していたら、リアル「オヤシロ様の祟り」となってしまう惨事になりかねないと思いちょっとゾクッとしてしまいました。

まだ感染者が出たという話は聞きませんが、村の皆様のご無事を願わずにおりません。

ひぐらしの聖地巡礼として訪れるファンも多いでしょうから尚更この村のことは気にかかります・・・・。

 

つづく

 

 

 


 2005年の仕事③〜 奥様は箒に乗って恋をする。

2020年01月11日 | カノンの記録

☆奥様は魔法少女 2005年7〜9月放送 全13話

原作  J.C.STAFF 、錦織博 池口和彦

監督  錦織博

シリーズ構成  錦織博、松倉友二、池口和彦

キャラクターデザイン 長谷川眞也

美術監督  柴田千佳子

色彩設定 石田美由紀

撮影監督  福世晋吾

アニメーション制作 J.C.STAFF

 

「天使になるもん!」「あずまんが大王」の監督である錦織さんの作品に再び参加となりました。

 原作がなくJ.C.STAFFのオリジナルアニメーションのため、まだ具体的なストーリーがない段階でしたが、とりあえず山口県の萩市を舞台にするということで美術だけ先行して取材に行くことになりました。

街の全体の景観や空気感を抑えて、オススメの名所をいくつか回り、あとは温泉でまったり。

作品には登場しませんでしたが、秋吉台の鍾乳洞も見学できて充実の取材旅行となりました。

 

萩市といえば、なんといっても吉田松陰の松下村塾があります。

伊藤博文や久坂玄瑞など幕末の志士たちの生家なども観光名所となっていました。

古くは毛利家が築いた萩城の跡があり、歴史が紡ぐ素晴らしい景観の街です。

で、なんで萩?魔法少女とどう関係が?というところですが、そこはアニメの勝手なこじつけで、27歳の人妻である嬉子(うれしこ)さんは実は魔界からこの街の管理者として派遣された魔法少女だったのです。

都会でなく、大きすぎず風情があって特徴的な街として、なんとなくこの萩が抜擢された感がありますが、背景美術的には、名所旧跡おりまぜて風情ある舞台作りに貢献したつもりです。

ただし、のちにここがアニオタの聖地巡礼の場になったかは不明。

(場所当て探しのブロクはあったような。)

キスしたら魔法が使えなくなるという理由で夫とは別居中なのに、冴えないメガネの下宿男と恋に落ちるとか、お話や設定には???なところ多々あれど、そもそも声優の井上喜久子さんに色っぽい人妻役をやらせたいがための当て書きのお話だったのでは?と勝手に推測したりして。

もちろん諸事情は何も伺っておりませんが。

(井上さんは近年、「あまんちゅ!」でおばあさん役を演じ、多彩な役者ぶりに感心しました。

でも「あまんちゅ!」の打ち上げ会では嬉子さんのような雰囲気そのままの素敵な方でした!)

 

瓦や塀が美しい城下町の通り

巽が下宿する嬉子さんが住む家。裏庭が広く、魔法で形作られたおかしな植物があります。

生活用水として活用された水路のある旧跡の街並み。床下にも水が流れている家があります。

嬉子さんの夫はこの辺りに住んでいる作家先生。

浅めの夕景

夕暮れの川辺も風情があります。

旧家の縁側でのんびりできます。

おなじみ松下村塾もデートコースで登場。

萩焼の窯場。たくさんあります。

このあたりの背景はパインウッドさんにお手伝いいただきました。ありがとうございます。

 

魔女友が集うアンティークな喫茶店。

そのほか、学校はもちろん明倫館が舞台となり、東光寺の石灯籠もバトルで壊され、見所いっぱいです。

 

 


ハチクロその3〜追いかける恋しのぶ恋、そしてきらめく恋の瞬間

2019年12月26日 | カノンの記録

ハチクロで一番多く出てくる場所は多分、花本先生の研究室。

浜美大の卒業生で先生となった花本修司は花本はぐみといとこ関係にありますが、はぐみにとっては兄であり父であり、そしてかけがえのない大切な人となります。

ここではぐみに出会った竹本くんは恋に落ち、それを目撃した真山巧。

しかし、はぐみはやがて天才森田と出会って、二人は恋に落ちてしまいます。

一方、真山は修司の学生時代の同志である原田の嫁となった理花に密かに、しかし熱烈に恋をしています。

理花は事故で無くなった夫への罪の意識もあって、新たな恋など受けつけようとしない。

そして陶芸科の山田あゆみは真山が好きでたまらないのに、その思いは叶わず、

恋する乙女の一途さで真山の後をつけ、理花と対峙したりもします。

 花本研究室前の廊下

 花本研究室。奥にはぐみの作業部屋があります。

天才はぐみの傑作が生み出される場所。

原田デザイン事務所兼の理花のマンション。クールでネガティブな雰囲気なので全体にブルーグレートーンでまとめました。

 

花本先生を中心にそれぞれの叶わぬ恋がトライアングルに展開していくわけですが

あゆみの切ない恋が一番読者の共感を呼び、恋敵の理花さんはどちらかというと嫌われキャラかもしれません。(根暗だし)けれどその壮絶で寂しい過去が明かされてくると、彼女の心もまた切なくて悲しいことがわかります。

ハチクロにはそれぞれ好みはあれど本当に嫌な奴は出てきません。どのキャラも愛おしく描かれている、そんな感じです。

ちょうどこのオブジェのように、周囲のいろいろなしがらみに束縛されながらも、恋に、人生に悩みながら、互いに絡み合って成長していくものなのかもしれません。

 

「ハチミツとクローバーパート2」は2007年の記録でまた紹介したいと思います。


ハチクロその2〜昭和臭漂う若者たちの巣窟

2019年12月25日 | カノンの記録

竹本祐太や真山巧、森田忍らが暮らすアパートは、「平成」といえども「昭和」30〜40年代ぐらいに建てられた古い木造アパート。共同玄関、共同炊事場、風呂なしなんて、今時の美大生がいかに貧乏でもチョイスしないのでは?というぐらいレトロです。(このレトロ建築が好みとなると話は別ですが)

 

3畳一間でない分、フォークソングの「神田川」の世界よりは新しい感じです。

昭和へのノスタルジーでこういうアパートを舞台にした漫画作品結構ありますね。

トキワ荘や「めぞん一刻」へのオマージュでしょうか。

 

外観の設定として杉並区、中野坂上あたりの木造家屋など取材しました。

(そういえばこのアパートの名前なんでしたっけ?)

ハチクロには羽海野先生お好みのイケメン男子や老人がわんさか登場しますが、(あとオネエキャラも)このアパートの住人にも伝説のローマイヤ先輩なんてお方がいらっしゃいました。普段は姿がないのに突然帰還するとローマイヤハムやソーセージをたくさんもってきて飢えている住人を喜ばせ、後光がさすほど頼りになる先輩でした。

  

「初期イメージボード」 こんな感じでいきますがいかがでしょうか?と提示した最初のボード。

で、本編はもう少しかっちりと収まりました。

 玄関とドアのガラス格子はちょっとおしゃれ。

玄関の靴箱の上にある昔の牛乳瓶箱はカンパ用募金箱として使用されています。

 何気に置かれたみかん箱も誰かの実家からの差し入れでしょうか。

竹本くんの部屋は2階の202号室でした。

室内は6畳。入り口にスリッパを脱ぐ三和土があります。

中古ですが、小型のテレビとVHSビデオデッキがあります。結構本がいっぱいで勉強家ですね。

俯瞰で見るとこんな感じ。

 共同の台所。湯沸かし器もあります。手前の103 号室がローマイヤ先輩の部屋。

ここから2階への階段があります。ぺらぺらのサンダルが懐かしい感じ。

 

 勝手口を出ると、森田が使用しているシャワーコーナーがあります。

森田は室内もかってに改造して怪しいコクピット風異空間になっていました。

 

つづく。