高校野球を見始めてン10年。
毎年夏が近づくと、
ワクワクが止められなくなるという年月を過ごしています。
若かりし頃は、
どのチームが強い、どの選手がすごい、
そして自分の地元のチームはどうかな。。。。
そんなことばかり見ていた気がします。
しかし年月を経るとともに、
なんだかストーリー性を求める自分がいるのに気が付きました。
特に「自分の中で作ったストーリー」が格別で、
「野球の神様がいるんじゃないだろうか?」と思うようなシーンに出会ったりすると、
もううれしさが倍増しちゃったりするんですよね。
例えば、
「ああ、あの時の夏もこの学校、同じようにこういう追いつきかたしたよなあ・・・・」とか、
「ああ、そういえばこの選手たちのおやじたちも、確かこうやって対戦していたんじゃ・・・・・」とか、
そんなことを思い出すともう、
画面を見ながら思い出し笑いをしたりしている自分がいたりするものです。
そんなワタシをこの夏思いっきりワクワクさせていること。
それは大船渡高校の佐々木投手。
大船渡高校と言えば、
かつてたった一度、
1984年に輝きを放ちました。
その当時でも「大船渡高校?強いの、その学校?」
という程度の認識で、
秋季東北大会を制して選抜を確実にしても、
「まあ、1回勝てるかどうかかな?」
という期待を持っていたぐらいでしたかね。
その時の秋季東北大会で決勝を戦った相手が、
何を隠そうあの金足農業でした。
こちらもその当時から県内の強豪ではあったものの、
甲子園の出場はなく「まだ見ぬ強豪校」でした。
この当時は、
東北では東北高校、秋田商業、秋田経大付(のち秋田経法大付)、福島商らが東北地区を席巻しており、
なかなか岩手、青森の学校は上位にいけないという勢力図でしたね。
そんな中で現れた初出場の大船渡と金足農。
期待は大きくなかったものの、
新時代の清新さにあふれた学校という感じで、
期待は大きかったですね。
東北という地区、
今とは違いその頃は、
打線は小粒なチームが多かったものの、
時に本格派の好投手を生むという感じの土壌。
この年代でも、
秋田経大付の松本に福島商の古溝、
その前は秋田商の高山、東北の薄木、仙台育英の大久保など、
本格派の系譜にはいとまがないという感じの「好投手の宝庫」でした。
その前の「昭和40年代」にも、
三沢の太田幸司あり、”小さな大投手”と言われた磐城の田村ありと、
高校野球の話題を席巻するような投手を生んできました。
そして大船渡と金足農。
決して派手ではないこの”地元感”いっぱいのこの好チームにも、
素晴らしいエースがいました。
しかしこの両校のエース、
決して「東北が生んだ本格派」ではなく、
小さな体をいっぱいに使って投げる「甲子園で輝くエース」でした。
春に輝いたのは大船渡の金野投手。
この小さな左腕は、
ゆったりとしたフォームからいわゆる”伸びる速球”を内外角に投げ分け、
全国の好打者たちを、
その頃の言葉を使っていうとまさに”きりきりまい”させました。
後にも先にも、
この金野投手のように、
ほとんど速球だけしか投げず、
内外角への出し入れだけで打者を抑えきったという投手を、
見たことがありません。
それほど球の切れとコントロールがいい投手でした。
その投球で大船渡は4強まで文字通り駆け上がっていきました。
準決勝では優勝した岩倉にサヨナラホームランを食らって悔しい敗退でした。
それでも金野投手のピッチングが「大会の華」だったことに間違いはありません。
初出場初優勝の岩倉の名とともに、
大船渡、そして金野投手の名前は長く球史に刻まれました。
その大船渡の大活躍を受けて、
今度は夏、金足農の出番がやってきます。
金足農は選抜では2回戦で、
大船渡をも破って優勝した岩倉に敗れましたが、
夏は一段戦力アップして甲子園に乗り込んできました。
そのマウンドを守るのは、
キップのいい投球で相手を抑える水沢投手。
この水沢投手は、
速球と変化球のコンビネーションが見事な投手で、
相手に的を絞らせない好投手でした。
コントロールも抜群で、
まさに「甲子園向き」の投手。
しかし世は”最強PL”全盛時代。
あの桑田、清原のKKは2年目を迎え、
どのチームも「打倒PL」に執念を燃やしていました。
しかしどこのチームも、
試合の前半でその力の差を見せつけられて、
粉々に砕け散る・・・・・・・
そんな大会でしたね。
ちなみに清原は1回戦の享栄戦で、
圧巻の1試合3発を叩き込むという離れ業をやってのけています。
しかし金足農も甲子園で一戦ごとに力を蓄えて快進撃。
初戦で2年前の準優勝校である名門・広島商を破り波に乗ると、
秋田県勢として初めて甲子園で4勝を挙げて準決勝へ。
そして運命のPL戦を迎えるわけです。
PL戦は去年の「金農旋風」の時に何度も紹介されたので割愛しますが、
この試合の終盤まで、
秋田のみならず東北の高校野球ファンのだれもが、
「東北勢初の全国制覇」という事が頭によぎっただろうと思います。
それほど見事な戦いでした。
「あと4人」と迫ったところで、
あの清原は打ち取ったものの、
次の桑田に痛恨の一発を浴びる。。。。。。
『野球の神様は、本当に残酷なことをする。。。。。』
それがその時の、
ワタシの偽らざる感想でした。
しかし。
春は全く無名の大船渡が快進撃で4強へ、
そして夏はこちらも初出場の金足農が王者・PLを土俵際まで追いついて4強に進出。
東北勢が、春も夏もキラキラと輝いた年となりました。
ワタシにとっては、
『大船渡高校』と『金足農業』は、
一つのセットで語られるような、
そんな思い出深い学校として心に刻まれました。
あれから35年。
近年ではすっかり高校野球も様変わりし、
公立校は甲子園に進出することすらままならなくなったという時代の流れに抗えず、
両校ともに長い冬の時代を過ごしてきましたね。
金足農は嶋崎監督の情熱でチームを強くしましたが、
その嶋崎監督でも時代の波に逆らうことはできず、
すっかり古豪の名で呼ばれるようになってしまっていました。
甲子園での勝利は95年以来20年以上ありませんでした。
大船渡に至っては、
あの輝ける84年以来ただの一度も甲子園出場はなし。
近年は県内の3強である花巻東、盛岡大付、一関学院の独壇場に風穴を開けることはできず、
今ではかつて強豪であったことすら語られることはなくなってしまった感じでした。
しかし。
野球の神様が、
100回の甲子園大会を迎えて、
金足農業に大舞台と稀有な好選手を用意しました。
それが昨年の大会です。
ご存知の「金農旋風」。
獅子奮迅の大活躍でチームを決勝まで導いたのが、
『甲子園の球史に残る大エース』吉田投手でした。
その凄すぎる活躍は、
彼を一躍「時の人」に祭り上げ、
東北の高校野球ファンのだれもが待ち望んでいる『深紅の大優勝旗』を、
手をかけるところまで押し上げていきました。
すんでのところでその優勝旗は、
「最強軍団」大阪桐蔭によって金足農の手にわたることはありませんでしたが、
100回目の甲子園は間違いなく「東北の金足農業の大会」となりました。
そしてその翌年の101回大会が、
これから始まろうとしています。
野球の神様は、
ここでまた粋なことをしました。
『金足農があれだけ活躍したんだから、大船渡にもその場を用意してやろうか』
ということで、
大船渡にとんでもない怪物を出現させました。
それが佐々木投手です。
何しろ佐々木投手、
これまでの高校野球最速を更新する163キロを、
もうこの春の段階で出しています。
これまでの最速記録を持っていたのが、
ご存知”日本の至宝”大谷翔平選手。
この大谷選手も岩手・花巻東出身というのも、
なんだかすごく示唆に富んでいる気がします。
岩手が生んだ新怪物・佐々木は、
今年甲子園デビューを狙っています。
昨年の金足農に続いて、
今年は大船渡が、
甲子園の話題を独占するかもしれませんね。
そうなってくれたら、
どんなにか素晴らしいことでしょう。
しかしチーム構成は、
昨年の金足農同様、
「エース一人で投げぬく」タイプのチームです。
公立の普通校なので、
当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。
佐々木クンがまた、
毎試合「ちぎっては投げ」の好投を見せて連投なんぞすると、
またぞろ”騒ぎ”は大きくなるに違いありませんが、
甲子園の神様はどうやら、
ワタシの同じ「ストーリー好き」なのかもしれません。
「一度は佐々木を、甲子園で投げさせてみたいんじゃ」
というつぶやきが、
空の上から聞こえてきそうです。
ということで、
東北勢が紡ぐ甲子園ストーリー。
今年は果たして、
昨年の金農フィーバー以上のものになるのか否か。
静かに心をフラットにして、
見守っていきたいと思っています。
Twitterでリツイートいたしました。