≪第90回選抜高校野球大会≫
【総合展望】
ダントツの1強、大阪桐蔭のセンバツ連覇は濃厚。果たして止めるチームは現れるのか?!
今年は高校野球にとっては記念すべき年。
夏の選手権大会がついに100回を迎えるのと同時に、
この選抜大会も90回の節目を迎えます。
ここしばらく、
選抜大会はいろいろな意味で、
曲がり角を迎えてきたという感覚を、
ワタシは持っています。
昔は選抜大会が「春を迎える日本の風物詩」として完全に根付いていて、
世間の興味も高かったのではないかと思います。
しかし最近は、
過度に「夏偏重」の空気が熟成されている感じで、
夏の大会の盛り上がり方は予選を通じて尋常ではない感じがしますが、
その熱は春の選抜までは波及してきていないように思います。
それどころか、
「高校野球の熱」は完全に夏の大会に奪われてしまっているかのようです。
かくいうワタシも、
昔に比べると選抜への興味はやや下がってきているようにも感じます。
そんな中で迎える選抜。
今年は「タイブレーク導入」という、
『21世紀枠導入』以来の大改革が行われることになりました。
果たしてこのタイブレーク、
今年のこの選抜で、
見ることができるのでしょうか。
まあ、
タイブレークという方式自体は、
何も珍しいことではないのですが(近年学生野球で取り入れられているし、国際試合やジュニアの試合などではおなじみの制度ですから)、
「甲子園で・・・・・」
というところに興味があります。
ということで、
今年も大会の展望を。
予期せぬ事態に陥らぬ限り、大阪桐蔭は揺るがない。”世代最強”から”史上最強”へ駆け上がれるか。
今年の大会の図式は単純だ。最近ではあまりなかった、「鉄板の優勝候補」大阪桐蔭の存在が、光り輝いているからだ。今年の大阪桐蔭は、現在のところ「世代最強のチーム」という形容で語られることが多い。昨年の選抜をダントツの強さで制したチームから主力がことごとく残り、新たなチームを結成して、その力強さは昨年以上なのは間違いない。そして有り余る経験値をも持っていて、さらに「主力抜きで戦っても、甲子園では優勝候補に上がる」ぐらいの控え陣の層の厚さを誇っている。こんなチーム、最近では見たことがないレベルだ。投手陣ではドラフト上位候補のエース柿木に加え、
190センチの上背から投げ下ろす左腕の横川も好投手。そして抑えには150キロに届かんとする速球を投げる、投げて打っての二刀流”桐蔭のサファテ”根尾がマウンドに上がる万全の布陣だ。さらに2,3人は”他校なら完全にエース”クラスがそろっており、盤石の態勢だ。そしてこのチームの強みである打力は、硬軟織り交ぜた攻撃が可能な”史上最強レベル”の打線。「ドラ1確実」と言われるU-18全日本コンビの根尾、藤原を軸に、あの夏の「踏み忘れ」で悔しさを持って臨むキャプテンの中川がおり、山田、青地、宮崎がそろい・・・・・・・いやあ、書いているだけでもすごさが脳裏によみがえる猛打線だ。そして大阪桐蔭の更なるもう一つの武器は、そのアグレッシブで超高校級の守備力。西谷監督が鍛えに鍛え上げた守備力は、こちらもダントツで大会NO1の力を持っている。つまり、「力でいえば、過去最強レベルのチーム」ということが言える。あのKKコンビの時代のPL学園の向こうを張れる存在だと、ワタシは見るチームだ。
KK時代のPLも、まさに「鉄板の優勝候補」であったが、新時代の大阪桐蔭も、それに匹敵するチームで、この選抜次第では「史上最強チーム」という称号を、1985年のPL学園から奪い取ることも可能ではないだろうか。
サッカーのプレミアリーグのように1年間のリーグ戦で高校野球が戦われるのであれば、大阪桐蔭は「負けるはずのないチーム。優勝確率100%」と自信を持って言えるのであるが、そこは一発勝負のトーナメント戦である高校野球。何が起こるかは、確かにわからない。実際の大会に入ると、”1試合だけの間”では何が起こっても不思議ではない。数年前の選抜準決勝では、優勝候補の1番手と思われていた大阪桐蔭は、相手の敦賀気比になんと満塁アーチを2本食らって大敗。もちろん敦賀気比も好チームではあったが、この両者が対戦してこんなに大差がつく試合になろうとは、戦前はだれも思っていなかったはず。それが「一発勝負」の怖さだ。かつての”史上最強”PL学園も、KKコンビが2年時には岩倉に決勝で完封負け、最上級生になった年は伊野商の渡辺に、準決勝で完ぺきに抑えられて一敗地にまみれた。そんなことを思う時、大阪桐蔭が「絶対に優勝する」とは言い切れないと思うが、この類まれなる強力チームが、史上最強の称号の下、快進撃を続けるのを見たい気もしている。本音を言うと、あの98年の松坂を擁した横浜高校に続いて、史上2度目(ワタシが確認したところで)の『年間公式戦全勝』をこの大阪桐蔭には達成してほしかった。横浜は、秋の県大会、関東大会、明治神宮大会、選抜高校野球大会、春の県大会、関東大会、夏の県大会、全国高校野球選手権大会、そして国体と、9つの大会のすべてを勝ち、1年間無敗という「前代未聞」どころか、「空前絶後」と言われるような素晴らしい記録を達成した。エース松坂は”伝説”となって輝いているが、チーム全体の力から言えば、今年の大阪桐蔭は、強力な打線に加えて投手陣の層の厚さではあの横浜よりもずっと上を行く気がする。ただしエースのすごさでは1歩も2歩も譲るが。。。。そんなことを考えながら明治神宮大会を見ていて、大阪桐蔭が負けるのを目にした。勝った創成館は確かに素晴らしかったが、それにしても「年間パーフェクト勝利」が止まったのには、心底がっかりした。しかし大阪桐蔭は、昨夏の甲子園でのあの「踏みそこない」での敗戦という悔しさを味わい、そして秋も優勝できなかったという事実が突き付けられた。このふたつの悔しさをもってチームは、春に向かってくる。その分だけ、”史上最強”PLも、”空前絶後”横浜も経験していない「負けるという悔しさ」をもっているということで、かえって春以降、その強さは盤石になるのではないかとみている。この選抜大会での優勝?間違いないだろう・・・・とみているが、果たしてどうなるか。逆に今年のチームで大阪桐蔭が甲子園で光を放てなければ、今後数年間、チームとして苦しむことにもなりかねないとみている。そういう意味では、チームとしてとても大切な年ということが言えよう。
”打倒大阪桐蔭”の1番手は「秋全国制覇」の明徳義塾。
東の候補1番手は東海大相模、西は智辯和歌山、創成館の勢いにも注目だが、どこも盤石ではない。
【大阪桐蔭 VS ほか35校】という図式になりそうな今大会だが、秋の明治神宮大会で久方ぶり2度目の優勝を成し遂げた明徳義塾が、”打倒大阪桐蔭”のトップチームに上がる。今年は02年に全国制覇したチームと似たレベルに仕上がってきているようだ。智将・馬淵監督に率いられ、常に出場すれば「有力候補」に上げられる明徳だが、近年敗れる試合は必ず「力負け」を喫しており、上位に上がって来た時のたくましさがチームの弱点とされていた。しかし今年は、上位の戦いでもしっかりとマウンドを守れるタフネスエースの市川が君臨。この大黒柱の存在で、馬淵監督の思い描くチームに、一歩近づいてきたといえるだろう。しかし打線はさほど破壊力があるわけではなく、つなぎ中心の構成。優勝を狙うならば、本気で市川に連投を強いなければいけないという場面が、必ず来るとみているがどうか。春の選抜は夏もまだあるため、選手にどこまで無理をさせられるのかという課題が、いつも横たわっている。馬淵采配は、ここぞという時、どのような選択をするのか。しかしそういった意味では、今年から導入されるタイブレーク制というのは、ある意味明徳躍進のキーになるかもしれない。そのほかのチームは正直、スケール的にもち密さでも、大阪桐蔭に伍していける力はないとみる。そうであるがゆえに、「勝つのであれば試合展開がはまった時」となるだろうが、そのうえで考えると、数校にチャンスが転がっているとも思われる。東で最も力を持つといわれるのは東海大相模。今年のチームは、新チーム結成時から大型チームと言われ、結局68試合を行って公式戦、練習試合にそれぞれ1敗ずつの64勝2敗2分で秋シーズンを駆け抜けた。それだけ力を持っているということなのだろうが、負けるときは決まって打線が火を噴かず、淡白な試合っぷりになるという”悪癖”はまさにこのチームもそのまま。いくら連勝を飾っていても、関東大会で中央学院に屈した試合などを見ていると、「トーナメント向きのチームではない」と思ってしまう。秋の県大会決勝で、死球から骨折を負って秋シーズンの後半を欠場したエース斎藤が、「本当のところどこまで戻っているのか」がこの選抜での浮沈のカギを握っている。もちろん、春シーズン開始の初戦からマウンドに登ってはいるが、それと『本調子に戻る』ということは似て非なること。斎藤が本調子に戻らず控え陣でしのぐも、攻撃陣がリズムに乗れず・・・・その試合展開だけは避けたいところだろう。主砲・森下はすでに通算50本塁打に届こうかという本塁打を放つスラッガー。彼の前にいいリズムでランナーがたまるようだと、打線の破壊力は増すのだが。戦績という面では、東邦も凄まじい。東海大相模を上回る、秋シーズン44勝1敗3分。そのたった1敗は、東海大会決勝で静岡に敗れたもの。一昨年の出場時よりも、さらにスケールアップして選抜に登場だ。エース扇谷は速球を武器にした本格派。彼を破壊力満点の打線が強力援護するチームだ。しかしこちらのチームも、秋の東海大会では投手陣が大崩壊。3試合で21失点、1試合平均7失点と苦しんだ。リズムがつかめなくなった時の修正力が発揮できるかどうかが、上位進出のカギか。練習試合を見てみると、全国の実力上位校と戦った時は「打ち合い上等」という戦いにはなっておらず、かといって凌ぎ合いの接戦になっても負けてはいない。そのあたり、東邦の「秘めたる勝負強さ」を垣間見ることができるのだが、選抜ではどんな戦い方を見せてくれるのだろうか。「大阪桐蔭に一泡吹かせる」と昨年の夏の甲子園で敗れた後闘志をむき出しにしていた”甲子園最多勝”高嶋監督が率いる智辯和歌山も、今年は期待できる戦力になっている。ここ数年、どうも甲子園でかつてのような戦いができなくなっていた智辯和歌山だが、高嶋監督がまた情熱をたぎらせるということになると、話は違ってきそう。甲子園でも対戦のある大阪桐蔭・西谷監督をはじめ、明徳・馬淵監督、東海大相模・門馬監督や東邦・森田監督など、有力校には「倒したい監督」ばかり並ぶ今年の甲子園。高嶋采配は、本当に楽しみである。引退も取りざたされる年齢となった高嶋監督。まだまだ「これが最後」とは言わないが、まさに「一戦必勝」で臨むことだろう。今年のチームは、かつての打線をほうふつとさせるような振りの鋭い選手が並ぶ。そして昨夏の甲子園で大阪桐蔭を2失点に抑えたエース平田の復調が何よりも待たれる。秋は夏の疲れを引きずって本調子ではなかったが、復調するようだと十分に上位を狙っていける布陣だ。兄弟校の智弁学園も、戦力的には一昨年の選抜優勝チームに劣らないものを持つ。特に打線は強力だ。公式戦の打率が優に4割を超え、出場校中でもNO1の実績を残す。しかし今年は、投手陣に軸が育っていない。一昨年のエース村上のような”大エース”が出現すれば、一気に「有力候補」に上がってきそうなチームである。秋の九州大会を制し、勢いに乗って乗り込んだ明治神宮大会ではあの大阪桐蔭に土をつけた創成館は、今大会最大の注目チームと言っても過言ではない。とにかく秋の明治神宮大会で見たこのチームは、投打ともに伸び伸びと実力を発揮していて、まさに「怖いもの知らず」のチームだった。ひと冬超えて、この勢いが持続できているかが焦点となる。投手陣では、エース左腕の川原が切れのいい球を投げ込む。七俵、戸田といった控え組は、控えというのがはばかられるような、しっかりとした投球をマウンドで出すことができる。明治神宮大会では、聖光学院、大阪桐蔭を破り、明徳義塾に肉薄。勢いだけでは、こうはいかないはず。長崎勢2度目のVも、あながち夢物語とは言えない。
東北初制覇へ駆けあがりたい聖光学院も候補にあがる。駒大苫小牧の復活にも期待。
まさに「大阪桐蔭1強」と言っていい大会だが、大阪桐蔭以外のチームは、戦力的に大きな差はない。組み合わせ次第では、どの学校も大きく上位まで駆け上がってくる可能性が十分だ。そんな中東北勢初の全国制覇を狙っているのは聖光学院。こちらも昨夏の甲子園を経験した選手が多く残り、チームの骨格を成している。特に秋に大ブレークしたエース衛藤の右腕に期待だ。打力は斎藤監督をして「過去最高レベル」と言い切るほどバットが振れており、8強の壁を破り一気に浮上できるのか、地元の期待も大きい。また、今大会で非常に期待されるのは、連続出場を果たした静岡か。打線の破壊力は例年並み。エース春中心の投手陣も層が厚く、おまけに東邦や日本航空石川などのチームを接戦で破っているという勝負強さも見逃せない。ことしは8強とはいわず、優勝争いになんとしても食い込みたいところだ。佐々木監督率いる駒大苫小牧も、なかなかいいチームを作ってきている。あの田中マー君を擁した夏以来、甲子園でなかなか勝利をつかめていないが、今年は浮上するチャンスもありそう。明治神宮大会で大阪桐蔭と対戦した試合では、終盤まで互角に渡り合った。エース大西が緩急を使ってうまく相手打線を抑え、打線はワンチャンスをものにしていったが、最後は守備の乱れが続いて涙をのんだ。お得意の「雪上ノック」で冬場にどれだけ守備力がアップしているのか。
例年夏に好チームを輩出する関東勢。秋の上位が進出してくる選抜と夏ではその顔触れがガラッと変わるのがお約束。今年もそういう面において、上位が期待できる顔ぶれではない。秋に関東を制した中央学院は、あの大谷翔平と同じ名前ということで”2刀流”と言われる大谷投手が軸。しかし”本家”とは何もかも違うのは当たり前で、中堅クラスの実力を持つチームという見立てだ。狙いは地道に初勝利だろう。日大三は、桜井・金成・井上らを擁した昨年のチームとは全く別のタイプの「全員野球」で臨む。スケールはダウンしたが、かえって勝負強さは増しており、こういう”ポスト年”のチームが甲子園で活躍するケースは、まま見られるので期待してもいいだろう。
そのほかでは、甲子園でいつも勝負強さを発揮する花巻東にも期待。今年は例年よりも雪が多く、コンディション調整に一抹の不安を残すが、いつものように元気なプレーが見られるはずだ。甲子園初参戦の明秀日立は、元光星学院の金沢監督が率いる強打のチーム。投手陣の踏ん張りが甲子園の勝利を呼び込む。日本航空石川は、選抜は初出場だが、昨夏甲子園で見せた見事な最終回の逆転劇は記憶に新しい。ドカベン・上田の打棒にも期待。星稜もいいチームを作ってきた。山下総監督お気に入りの「守って勝つ野球」が復活しそうだ。カギはエースの奥川。水準以上の好投手だ。中国勢2校はいずれも、昨夏「甲子園初登場」からの連続組。おかやま山陽は昨夏から、一気に全国レベルのチームとの対戦が増えた。その経験値を生かしたいところ。下関国際は、強打が持ち味だが、エース鶴田の成長も見もの。普通の県立校が快進撃をつかんだと話題の富島の戦いぶりにも注目。決して侮れない実力を持っている。文武両道校として名高い東筑も夏春連続の甲子園。甲子園のマウンドも踏んだエース石田が相手をほんろうして、県勢としては昨春に続いて8強以上を狙う。
昨年以上の、水準の高い激戦になる予想。上位進出には、組み合わせの妙も絡むか。
そのほかでも面白いチームがそろい、虎視眈々と上位を狙っている。「滋賀3校出場」という輝かしい年に出場の近江と彦根東は、どちらも「先に負けては帰れない」と気合十分。特に彦根東は、昨夏の甲子園で開幕試合のマウンドに登った増居投手が健在。経験豊富な「超技巧派投手」の見事なピッチングが披露されるか。同じ近畿の乙訓は春夏通じての初登場。なんと秋の試合数は78試合と全出場チーム中ダントツの試合数を誇る実戦派。隙あらばと狙う試合巧者のチームだ。四国から出場の英明・松山聖稜はいずれも「まさかの甲子園」と監督が驚く成長ぶりを秋に見せたチーム。自信をつけて甲子園に乗り込む。高知はライバル・明徳にもらった春。それだけに、「明徳より早く負けては帰れん」と気合十分だ。瀬戸内は1試合4本塁打の主砲・門叶のバットに期待。
九州では、甲子園準優勝以来の出場となる延岡学園も力を持っている。自信を持っている打線で勝負をかけたい。三重も甲子園準優勝以来の聖地登場。投打ともにあの時よりスケールはダウンしたが、穴はなくどこと対戦しても好勝負が期待できそうだ。日大山形は昨夏に続く連続。昨夏は明徳に食い下がり「日大山形強し」を強烈に印象付けた。慶応は9年ぶりの春。信頼の厚いエース生井の出来次第か。選考が激戦になる”関東第6のイス”を射止めた国学院栃木は、全国で勝負するには小粒な戦力だが、投手陣は3本柱でつなぐ。21世紀枠の3校は、例年通り「1勝の壁」に挑む。由利工は秋の東北大会でも1勝を挙げ、エース佐藤という”飛び道具”も併せ持つ。伊万里も九州大会を経験して、チームが一皮むけるか。初めての全国の舞台を楽しみたい。膳所は鮮烈な印象を残すチーム。勝ち負けよりも、地元の大声援に乗って伸び伸びと戦いたい。
今年は3月23日開幕の甲子園。
90回目の大会も、いよいよ幕を開けます。
そして注目の組み合わせ抽選会は、16日に行われます。
さあ球春到来。
今年はどんな大会になるのでしょうか。
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