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歯科技工士・岩澤 毅

福沢諭吉著作集〈第5巻〉学問之独立・慶応義塾之記

2010年09月13日 | amazon.co.jp・リストマニア
その危険は小児をして利刀を弄せしむに異ならざるべし, 2010/9/13

By 歯職人

 私の本書との出会いは、次に掲げる由来によります。
 慶應大学商学部権丈善一教授は、『講座 医療経済・政策学』(勁草書房 編集委員会:二木立、田中 滋、池上直己、西村周三、遠藤久夫)の第1巻『医療経済学の基礎理論と論点』(2006.6)第1章「医療経済学の潮流-新古典派医療経済学と制度派経済学」の「はじめに」を、「政治経済学を学ぶことのリスク」と題し、本著作集に収められた「経世の学亦講究すべし」を冒頭に引用する。即ち、『講座 医療経済・政策学』6巻+関連1巻のシリーズ全体の冒頭を福澤の「その危険は小児をして利刀を弄せしむに異ならざるべし」の引用から始め、医療経済学の初講義を「学ぶことのリスク」の指摘から始めなければ、確実に害悪に至る道が待っていることの重大性を警告している。
 権丈善一教授は、更に幾つかのエピソードを交え、その上で「福澤の言う『必ず益なく害に致すべき』状況は、やはり改善されていないのである。」と現代の経済学と経済学者の不毛の再生生産の状況を示し文を結んでいる。
 権丈善一教授を離れ本書〈第5巻〉であるが、慶應義塾大学出版会による福澤諭吉著作集(紀伊国屋等のネット書店ての表記は福沢)として編まれた巻である
 幕末維新を生き抜き後の世に独自に参画した福沢諭吉の教育事業・学への向き合い方の側面(より具体的には、設立時期の慶應義塾等の周辺)を知る上で有益な一冊と思われる。直接に本著作集第5巻を手に取り、読み始める方は稀と思われるが、その偶然(必然)を楽しんでみるのも一興と思う。
 私は本著作集では、「教育の基本方針」の中の「物理学之要用」「経世の学亦講究すべし」〔学問に凝る勿れ〕を繰り返し読み込みたいと思う(権丈善一教授が良く引用される)。
 急ぎ足で「正解」を求める安直で思考能力と学ぶ力の低下した時代に、本書は、アンカーとなる一冊と言える。細切れの短文・雑文が飛び交う時代に敢えて本書を身近に置き、噛む力を鍛え、明治を紐解かれることも現代を知る上で一助になるものと思われる。強くお勧めする一冊です。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4766408810/ref=cm_cr_mts_prod_img

フクザワユキチチョサクシュウ 5
福沢諭吉著作集〈第5巻〉学問之独立・慶応義塾之記

福沢 諭吉【著】 西川 俊作 山内 慶太【編】
慶応義塾大学出版会 (2002/11/15 出版)

463,13p / 19cm / B6
ISBN: 9784766408812
NDC分類: 081.6
価格: ¥2,730 (税込)

詳細
政治からの教育の独立をめざし、慶応義塾における実践とともに多岐にわたる啓蒙活動を行った福沢による教育論。
学校教育・家庭教育から社会教育まで、現代人が直面する様々な問題にも多くの示唆を与える、全60著作を収録。


第1部 慶応義塾(慶応義塾の命名;慶応義塾の改革と維持;一貫教育体制の確立;演説事始め;教育の基本方針 ほか)
第2部 学問と教育(学問の独立;学者の志操と矜持;教育論;家庭教育;専門教育 ほか)

著者紹介
西川俊作[ニシカワシュンサク]
1932年生まれ。1955年慶応義塾大学経済学部卒業、1961年同大学院経済学研究科博士課程修了、1972年同大学商学部教授。現在、慶応義塾大学名誉教授、経済学博士

山内慶太[ヤマウチケイタ]
1966年生まれ。1991年慶応義塾大学医学部卒業。1996年慶応義塾大学医学部助手(医療政策・管理学教室)。2001年より、慶応義塾大学看護医療学部助教授・医学部兼担助教授。また、慶応義塾福沢研究センター所員を兼ねる。医学博士。専門は、医療政策・管理学、精神医学、塾史

http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/4766408810/

福澤諭吉著作集 5
学問之独立 慶應義塾之記

福澤 諭吉 著
西川 俊作 編
山内 慶太 編

四六判/上製/432頁
初版年月日:2002/11/15
ISBN: 978-4-7664-0881-2
(4-7664-0881-0)
Cコード:C0300
定価:2,730円 (本体:2,600円)

▼慶應義塾の創始者として私学の運営という実践にたずさわりながら、政治からの教育の独立をめざし多岐にわたる啓蒙活動を行った福澤諭吉の教育論。
▼学校教育・家庭教育から社会教育に到るまで、幅広い観点から説かれたその教育論は、現代人が直面する様々な課題にも多くの示唆を与えてくれる。


第Ⅰ部 慶應義塾
慶應義塾の命名
 慶應義塾之記
 中元祝酒之記
 〔僕は学校の先生にあらず、生徒は僕の門人にあらず〕 山口良蔵宛書簡
 慶應義塾新議
慶應義塾の改革と維持
 慶應義塾改革の議案
 〔教育資本の拝借を願う〕 大隈重信宛書簡
 慶應義塾維持法案
 〔膝を屈して無心するより廃塾を〕 浜野定四郎宛書簡
 漫言 私塾誤り証文之事
 〔慶應義塾生徒徴兵免役に関する願書〕
一貫教育体制の確立
 慶應義塾紀事
 学事改革の旨を本塾の学生に告ぐ
演説事始め
 〔演説事始め〕
 三田演説第百回の記
教育の基本方針
 物理学之要用
 経世の学亦講究すべし
 〔教育の目的は実業者を作るに在り〕
 〔学問に凝る勿れ〕
社中への呼びかけ
 〔教職員、編集局員への年頭の挨拶〕
 明治十二年一月廿五日 慶應義塾新年発会之記
 〔気品の泉源、智徳の模範〕
塾生に対する訓話
 〔塾政の自治〕
 〔人の権利は厘毫の軽重あるべからず〕
 〔郷里への文通を勧告す〕
 〔独立の大義〕
 〔独立自由の主義〕
 〔学問も亦唯人生百戯中の一〕
門下の早世を悼む
 故社員の一言今尚精神
 〔小幡仁三郎君記念碑誌稿〕
 〔和田義郎君の死去に際し幼稚舎にて演説〕
 〔和田義郎君墓誌〕
 〔小泉信吉君を弔す〕
 〔馬場辰猪君八周年祭追弔詞〕

第Ⅱ部 学問と教育
学問の独立
 学者安心論
 学問之独立
学者の志操と矜持
 人の説を咎むべからざるの論
 蘭学事始再版之序
 〔学問上の私会なれば、大臣も平民も区別はあるべからず〕 工学会と福澤先生
 〔伊藤伯に尾して賤名を記すを好まず〕 富田鉄之助宛書簡 二通
 大槻磐水先生の誡語その子孫を輝かす
 〔北里柴三郎の伝染病研究所長辞表〕
 人生の楽事
教育論
 〔教育論〕
 徳育如何
 徳育余論
家庭教育
 家庭習慣の教えを論ず
 家庭の遊戯
 読倫理教科書
専門教育
 商学校を建るの主意
 〔英吉利法律学校開校式の演説〕
 後進生に望む
学校教育の独立
 政事と教育と分離すべし
 教育の方針変化の結果
 教科書の編纂検定
社会教育
 〔時事新報発兌の趣旨〕
 時事新報第五千号
 交詢社発会之演説
 交詢社第十三回大会に於て演説
 〔交詢社第十九回大会に於て演説〕

解 説 山内慶太


西川俊作
1932年生まれ。1955年慶應義塾大学経済学部卒業、1961年同大学院経済学研究科博士課程修了、1972年同大学商学部教授。現在、慶應義塾大学名誉教授、経済学博士。『福澤諭吉書簡集』(全9巻、岩波書店、2001~)編集委員。
主な著作に『福澤諭吉の横顔』(慶應義塾大学出版会、1998)、『経済学[第4版]』(東洋経済新報社、1994)、『日本経済の成長史』(東洋経済新報社、1985)など


山内慶太
1966年生まれ。1991年慶應義塾大学医学部卒業。1996年慶應義塾大学医学部助手(医療政策・管理学教室)。2001年より、慶應義塾大学看護医療学部助教授・医学部兼担助教授。また、慶應義塾福澤研究センター所員を兼ねる。医学博士。専門は、医療政策・管理学、精神医学、塾史。

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