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夜行列車という選択肢

2008-11-11 18:38:12 | 大きなこと
幼いころから鉄道が好きで、最近ではそれが高じて、鉄道を使って旅行に行くことが多くなった。遠出をすることもしばしばで、東北地方や九州にも、鉄道だけを使って訪れたことがある。
 そんな時に、必ずと言っていいほど使う列車がある。「夜行列車」だ。
 その名の通り、夜の間に目的地の間を結んでくれるので、どこかのホテルで泊まるよりも効率が良く、個人的に重宝している。

 そもそも、夜行列車の存在を知ったのは結構前のことだ。手元に、10年前くらいに出版された、鉄道の専門誌がある。夜行列車を特集にしていて、日本全国津々浦々を走っている夜行列車の解説がされている。
 その本を幼いころに読んだ記憶があるから、その時には既に夜行列車のことを知っていたのだろう。もしくは、その本で初めて知ったのかもしれない。
 いずれにせよ、その本には、朝焼けの中を走ったりしている列車の写真が多くあり、当時大海を知らなかった少年にとって、「夜行列車」というものは、どこか異次元を走っているようなもので、何かカッコよく思えたものだ。

 その時以来、夜行列車に興味を持ってしまったらしく、過去の本を読みあさったりして、それなりの知識は備えるようになった。成長するにつれて、一人で遠くにも行けるようになり、いよいよ夢の「夜行列車」を使ってどこかに行ってみたい(もしくは、単純に夜行列車というものに乗ってみたい)、と思うようになった。

しかし、である。その夜行列車が最近、存廃の危機に立たされているのだ。ここ数年、毎年のように列車が廃止され、現在でも走っている列車はあるのだが、それらも予断を許さない状況になっている。

 そもそも、夜行列車は大きく二つの種類に分けられる。「寝台列車」と「座席列車」だ。
 前者は比較的長い距離を走り、名前の通り、車内にベッドがあり、一晩横になることができる。一方後者は、短い区間を無駄なく結ぶ夜行バスに似たものがあり、横にこそなれないものの、廉価、そしてスムーズに移動できる、というメリットを持っている。
 これらのうち、最近廃止されているのは、前者の「寝台列車」である。


 では、一体なぜ、寝台列車が近年次々となくなっていくのか。簡単にいえば、以下の3つの理由がある。

 第一の理由は、列車のスピードが遅いことだ。これは、ほとんどの寝台列車が「機関車が客車を引っ張る」、という形をとるために、必然的に他の電車や気道車と比べてスピードが遅くなるのだ。また、途中の駅で機関車を付け替えることもあり、それに時間をとられることも、スピードが遅いことの一因である。

 二番目には、車内設備が悪いことがあげられる。
 そもそも、列車に連結されている「寝台」のほとんどが、いわゆる「開放式」と言われるもので、個室とはなっていない。まさに「寝るための台」なのだ。「内」と「外」の境目はカーテン一枚で、セキュリティ、プライバシーともに、確保されているとはお世辞にも言い難い。男性ならまだしも、女性が一人で利用するにはお勧めできないし、利用したいとも思わないのが実際のところだろう。もちろん、ちゃんとした個室を備えた列車もあるのだが、その数は少ない。
 このような問題が生じるのは、使用されている客車が3、40年前に作られたものであり、それを今まで使い続けてきたからである。その当時は人気があった設備も、時代の流れに対応できなくなってしまった、というのが現実問題なのだ。
 また、車内に食堂車や車内販売といった、人間の基本的な営みである「食欲」を満たす設備が、ほとんどの列車に存在しない。寝台列車を使う人は、列車に乗る前に、どこかのスーパーで、翌日分の食料まで調達しなければならないのだ。それを知らずに列車に乗り込んだが最後、目的地に着くまで「断食生活」を強いられることになる。ほとんどの寝台列車は、夕食の時間帯より早く出発し、翌日も朝食の時間帯より遅く終着駅に着くから、「断食生活」はさすがに厳しいものがある。
 さらに、シャワー設備もなく、寝台列車は文字通り「寝台」しか持っていない列車になっているのである。

 三つ目は、料金が高いことだ。
 鉄道を利用するには、必ず乗車券が必要で、その他、必要に応じて指定席料金や特急料金を払わねばならない時もある。
 寝台列車の場合は、「乗車券」のほかに「特急券」と「寝台料金」が必要で、寝台料金とは、いわゆる宿泊料金である。その宿泊料金も、前述の「開放式」が6千円と少しかかり、同じ料金なら、ビジネスホテルに泊まるほうが、プライバシーやセキュリティが確保され、食事もとれ、湯船につかれるのだから、断然お得なのである。
こうして客は寝台列車から流れてしまい、さらに利用が減る、という悪循環に陥ってしまうのである。そして、ついには姿を消していくのである。


 それでは、日本の夜行列車はこのまま衰退の道を辿り、ゆくゆくはすべてが消えてしまうのだろうか。いや、僕はそうは思わない。

 今の日本で夜行列車が消滅していくのは、上に書いたような理由があるからである。だから、その欠点をカバーするような列車が登場すると、それなりの需要は発掘できるのではないか、と思う。
 実際に、今の日本で成功している夜行列車の例をあげてみる。

 ひとつは、「旅そのものを楽しむ」ことをコンセプトに作られた列車だ。
 車内は全室個室で、テレビはもちろん、シャワーも完備している。出発と同時にウェルカムドリンクがサービスされ、食堂車ではフランスのフルコースや、懐石料理がもてなされる。利用者に「くつろぎ」を味わってもらうために、ホテルのロビーを模した車両も組み込まれ、美しい夕日を眺めることもできる。
 このような列車は、遠くの目的地にわざわざ時間をかけていくことが目的であり、それを目当てに乗車する方も多い。今でも、部屋の一部はプラチナチケットになっている。

 もう一つは、「走るビジネスホテル」と言われる列車だ。
 先ほどと同じように、車内は全室個室で、シャワーも完備。
 大きく違うのは、部屋の内装を大手の住宅メーカーとの協力で制作したこと。また、車両そのものを電車にして、スピード化を図ったこと。これにより、出発駅を最終の新幹線や飛行機より早く出発し、目的地に始発のそれらより早く着くことができるようになった。

 これらの例から明確なように、「夜行列車」というジャンルそのものが否定されたのではなく、いまの社会が求めているスタイルを追随した列車が出てきたら、それは必ずやこれからも生き残っていく、と信じている。

 もちろん、「僕自身が鉄道好きだから」、という理由を盾に、少なからず夜行列車のひいきをしてしまう点はある。でも、ぼくはそれだけ夜行列車が好きなのだ。そして僕は、少なくとも今まで鉄道(夜行列車)に乗ってきて、自分なりにいいところを見つけたり、また使いたいなぁ、と思ったことがあったりするので、これからも利用していこうと思っているし、そういう実体験に基づいたアピールをし、できるだけ多くの人にも使ってもらえるように、自分のできることをしていこうと思う。そして、いつかは「夜行列車は素晴らしいものだ」と、胸をはっていえるように、また、多くの方に理解してもらうためにも、鉄道会社のかたにはそれなりの努力をしてもらいたいし、自分でももっと多くの夜行列車を利用しよう、とおもうのだ。

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