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怒りのブログ

社会批判を深める

安倍首相辞任の深層

2007-09-15 02:33:30 | 安倍内閣
安倍晋三氏が政権を投げ出して数日が経ち、マスコミやブログでも様々に言われている。辞任の直接のきっかけになったのは記者会見でも述べられているように、テロ特措法の延長のめどが立たなくなったことであることは間違いないだろう。安倍氏を辞任に追い込んだ状況を私なりに考えてみた。

報道によれば麻生氏が安倍氏から辞任の意向を聞いたのは10日月曜日ということ。その安倍氏は、8日の日米首脳会談でブッシュ米大統領にインド洋での給油の継続を約束し、その後の記者会見では、テロ特措法の延長に、「職を賭して取り組んでいく」と発言していた。最近の米国からの給油活動の延長への圧力は、駐日大使が直接野党の党首に要請するなど、尋常のものではなかった。そのことから考えても、ブッシュ大統領からのプレッシャーも相当なものであったことが推測される。このプレッシャーが8日から10日までのあいだに安倍氏のなかで作用していたことも間違いないだろう。この尋常でない米国の圧力の背景にはブッシュ政権の国際的、国内的孤立があると思う。イラクに派兵している国が次々に撤兵し、日本は「軍隊」を派遣している数少ない有力国となっている。ブッシュは国内でも支持率を下げ続け、共和党内からもイラクからの引き揚げを要求する声が起こっている。ここでもっとも従順な日本政府が「テロとの戦い」から後退することは許すことができなかったに違いない。

さてこのプレッシャーの一方で日本国内では参院選での惨敗で参議院の主導権を民主党に握られており、その民主党の小沢党首はテロ特措法の延長にあくまで反対の構えを崩していない。小沢氏は国連決議の承認無しに始められたアフガン戦争への協力はすべきでないという立場だが、この立場を強硬なものにしているのは民主党の党首という立場ではないか。参院選で自公政権に審判を下した国民はテロ特措法に対しても継続反対が多数の世論となっている。全般的にも参院選での民主党の主張は従来の改憲や消費税などの自民党と共通するものが弱められ、いわば左にシフトしている。民主党の立場をこのようにさせたものは自公政権を続けてはならないという国民の世論であったと私は考える。安倍氏は民主党との妥協に「職を賭し」たが、それを許さない国内的状況があったのである。

このように考えていくと、米国政府を取り巻く国際的、国内的状況、日本政府が陥っている国内的状況が安倍首相辞任の背景にあったことがわかる。そしてそれらの状況は、「戦争ではテロはなくせない」という世界の声、自公政権をこれ以上続けては困るという日本中の声が作り出しているのだと思う。

内閣支持続落47% 朝日世論調査

2006-12-13 01:39:45 | 安倍内閣

朝日新聞の世論調査結果が12/12付けにでている。
内閣支持率は前回に続いて低下し、50%を切った。朝日によれば、
首相の改革に取り組む姿勢が就任時と比べて「後退している」と見る人が46%で、「維持されている」の29%を上回った。「郵政造反議員」11人の自民党復党を「評価しない」は67%を占めた。復党や道路特定財源の問題への対応が支持率低下に影響したようだ。
ということ。
NHKの世論調査でも内閣支持率は同様の傾向を示していた。小泉内閣のもとで都市の政党支持なし層に支持を広げた自民党の基盤を安倍内閣でも引き継いでいるなら、「改革」に少しでも消極的な態度をとることが大きく支持率低下を招く可能性をもっていることを示していると言えるかもしれない。
また「改革」への支持が依然として高いなら、現状政治への不満は維持されているとも言えるだろう。自民党の「絶対多数」の議席が決して安定したものではないことも明らかだ。このような時勢のもとでは、国会での内閣や政党の挙動が選挙に大きな影響を与えるとも言える。衆議院で教育基本法の強硬採択をしたとき、政府・自民党がもっとも影響を懸念していたのが沖縄県知事選挙だった。参議院段階で急速に高まった教育基本法反対の世論が、国会最終盤の情勢に大きな影響を与えていることは間違いない。

さて世論調査に戻るが、内閣支持率と並んで注目したのが経済を巡る質問への回答だ。景気が良くなりつつあるが30%から19%に低下、悪くなりつつあるが12%から19%に増加、変わらないが57%である。安倍首相の経済政策のもとであなたの暮らし向きはよくなるかにたいして、よくなるはわずか5%、悪くなる25%、変わらないが65%となっている。消費者のところでの景気は決してよくはなく、悪くなっていることを示している。
問題は「安倍首相は、企業を支援することに力点をおいて日本経済の成長をはかる政策をとっています。こうした政策を支持しますか。」という質問だ。これにたいして支持が49%、支持しないが33%となっているが、質問がかなり誘導的という気がする。ここに「庶民への支援よりも」などの修飾語をつければ結果は全く変わってくるだろうし、その修飾語が適切と思われるからだ。各種審議会、経済団体などが軒並み法人税減税、消費税増税、庶民への負担強化を打ち出しているが、これだけ「成長」が続いた経済のもとで、大企業はバブル期以上のもうけをあげているのに庶民の収入は減っているのだから、「企業の成長はめぐり巡って庶民にいきわたる」などの言い方がいつまでも通用するわけがない。



安倍内閣の矛盾(続)

2006-10-08 12:54:03 | 安倍内閣
朝日新聞は6日付けで「村山首相・河野長官談話 首相、個人でも踏襲」という記事を掲げ、7日の社説「ちょっぴり安心した」では
アジア諸国への「植民地支配と侵略」を謝罪した村山首相談話や、従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた河野官房長官談話については、安倍政権でも「受け継ぐ」とはっきりさせた。
 政府としての立場と首相個人の見解とは別と受け取れるような言い回しもあったが、「私も含めて」と答え、そこのところを明確にしたのは前進だ。
と書いている。本当にそんなに安心して良いのか。
歴史認識をめぐる安倍首相と民主党の菅直人代表代行のやりとりでは、
いわゆる従軍慰安婦の募集などに国の関与などについての言及がある。現在の政府としても受け継がれている。・・・私は内閣総理大臣ですから、私を含めて政府として受け継いでいる。
と語っているというのがその根拠だが、果たしてこれで前進といえるのだろうか。聞いていると"従軍慰安婦"とか"A級戦犯"といって言葉の前には必ず"いわゆる"という言葉を付け、その言葉の意味することをそのまま受け取っているわけではないことを主張し、「私は総理大臣ですから」とか「私も含めて政府」という言葉には認めているのはあくまで政府であり、自分自身がこれらの言葉を認めているわけではない、というニュアンスを残している。私にはあいまい戦術を貫いていると思える。

「あいまい戦術」は政府内部でも明確に語られている。
同じく7日の記事の中では7/30頃、中川秀直幹事長(当時政調会長)が
靖国参拝をやめれば支持層の反発を買い、参拝すれば中韓との関係改善は遠のく。安倍氏の周辺はこの矛盾を解決するため「あいまい戦術」をとるよう進言していた
と紹介している。
安倍首相はブレーンが協議した"ここまではよいがここからはだめ"という範囲内で答弁しているのであって、菅氏の質問などはいわば想定内なのだ。

問題は中国・韓国訪問によってもこの戦術を貫けるかどうかだ。
しかし今回の訪問では中国は靖国問題を追及するつもりはないという。そして新首相は在任中靖国神社を訪問しないと信ずるという、いわば期待を込めている。
そこで思い出されるのは小泉首相が最後に中国首脳と会談した際に、靖国神社に代わる追悼施設を検討する、と「約束」していることだ。どうやらこれを「約束」ととらえたのは中国側で小泉首相はその場しのぎであったというのが真相のようだが。この辺のことをあとから報道している記事をGK68's Redpepperで紹介されている。

もともと安倍氏は過去の日本の戦争について「日本の自存自衛とアジアの平和」のための戦争だという歴史観を主張する組織の事務局長代理まで務めていた(6日共産党志位氏の質問)人である。
結局どんな戦術をとろうと、問題の先延ばしはできても、安倍氏自身の「靖国史観」と中国、韓国などアジアの国々、国際社会、そして日本国民との矛盾を解消することはできない。安倍内閣の矛盾は続く。

安倍内閣の矛盾

2006-10-04 02:31:33 | 安倍内閣
安倍内閣が誕生して所信表明演説、各党代表質問などが始まっているが、安倍首相は
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。
と述べた1995に政府が公式に表明した「村山談話」について「政府の立場」だと言いつつ、相変わらず自分自身の歴史認識については「政治家はそのような問題への発言は謙虚でなければならない」という言い方で逃げている。苦し紛れの答弁のむこうには安倍晋三というよりはそのバックで毎日作戦会議をやっているであろうブレーンの顔が浮かんでくる。

この立場は安倍首相のもっとも基本的な立場となるだろうが、それを貫き通せるのだろうか?そこにこの内閣の存続がかかっているような気がする。

安倍首相の本音は、靖国神社の遊就館と同様、戦前と戦後を連続したものとしてとらえるものだ。そのことは彼の「美しい国へ」を読んでもわかる。戦前のことを書いていたかと思うと、いつの間にか戦後のことを書いていたりする。彼には終戦によって政治体制が根本的に変わったという認識がないのだ。
私は彼の「美しい国」とは、別のサイトでも書いたように、まず、いわゆる「自虐史観」に対抗するものとして言っているのだと思う。そこには"開国以来の日本が歩んできた苦難の歴史には一点のくもりもない"と統制教育によって子供たちに刷り込みたいという野望が含まれているように思う。
そしてこの立場は安倍晋三1人の立場ではなく、彼を支えるブレーンは言わずもがな、自民党内の彼を押し出した勢力、北朝鮮にたいする「勇壮な」ふるまいで人気を引き寄せた人々の支持がかかっているのだからゆるがせにできない。
しかしそれは「村山談話」の立場とは真っ向から対立する。

一方小泉改革で部分的に壊れた自民党だが、一部の組織の利益を誘導できなくなったものの、財界の意向をより直接的に受けて新自由主義的「構造改革」を突き進む自公政権としては、最大の貿易相手国、中国との関係は最重要課題である。その中国は政治的に良好な関係の土台として靖国問題をとらえている。

また彼が憎悪をむき出しにする「自虐史観」は、基本的には悲惨な世界大戦を繰り返してはならないという立場から、日本の政府の誤りを反省するものであり、それは世界の普遍的な立場でもある。米国からの歴史認識にたいする批判が押さえきれなくなったように、今後国連の常任理事国となって「誇りの持てる国」をめざそうとすれば、彼の本来の立場は、世界中の世論とぶつからざるを得ない。

しかし最終的にはこれらの矛盾は有権者である国民に問われてくる。彼にとっての「美しい国」を作らせないためには私たち国民がNOを突きつけなければならない。