情報の真実を暴く

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3.11東北大震災風化させてはならない教訓が薄れゆくことを学問として歯止めする

2014-03-11 14:08:27 | レポート
今般の東日本大震災は、巨大地震・巨大津波・原子力発電所事故等の複合的な大災害であり、専門分化した現在の科学や過去実績に基づく防災・減災計画では対応できなかった。東北大学では、災害科学を一新し、成果を社会に実装していく「実践的防災学」を創設するため、学際的研究集団組織として2012年4月に「災害科学国際研究所」を設置した。

 東日本大震災の主な断層活動の範囲は、南北約500キロメートル、東西約200キロメートルにわたると推定されている。過去この地域は、三陸沖、宮城県沖、福島県沖、海溝沿いなど個別地域でそれぞれ評価されていたが、今回、一気に連動し超巨大地震が発生したことになる。


拡大画像表示 巨大地震が海底で生じると津波が発生するが、今回の津波は過去に無い姿を示していた。沿岸500キロメートル以上にわたり10メートル以上の津波の高さを示し、最大遡上は40メートルを超えた。従来のモデルでは説明できない、極めて大きな規模だった。

 特徴としては、宮城・福島沖での海底変化(断層のすべり量)が大きく、しかも日本海溝沿いの値(第2の断層のずれ)が大きいことが示唆されている。海底での地滑りも指摘されており、現段階では図のようなメカニズムが示されてきているが、今後、災害科学をさらに発展させていく必要がある。

たちあがる実践的防災学
 実践的防災学とは何か。3件の連携したプロジェクトを紹介したい。

 「カケアガレ! 日本」プロジェクトは、被災地である宮城県岩沼市で12年に始まった。東日本大震災の教訓や経験を活かした津波避難訓練プログラムを制作し、津波に備えた避難行動の習慣化を目指す産官学連携のプロジェクトである。

従来の避難訓練は、義務的、受け身だった。内容は固定化し、判断力が十分に養えなかった。そこで、参加者が地域のお祭りに参加するように、自分ゴトとして捉えられる定例行事とするために、地域別に具体的なシナリオを描き、住民自らが主体的に参加できる場を設ける必要がある。各自治体の住民が教訓を継続的に語り、体験していくことを目指す。

12年9月、岩沼市での訓練を皮切りに、13年8月に山元町で自動車を利用した訓練も実施した。東日本大震災では、57%もの人が避難に車を使い、渋滞が各地で発生。多くの人が車中で命を落とした。自治体が定める防災計画では車による避難を原則禁止しているが、行政の指導だけではコントロールできない。情報技術を駆使し、住民や業者を交えた議論や訓練を重ね、車の走行台数を減らす実効的なルール作りが必要だ。

 日本は世界有数の「自然災害大国」であり、各地に過去の震災の教訓が残されていたが、後世に実効性のある形で伝えられているとは言い難い。必要な態度は、災害に正面から向き合い「正しく脅えること」だ。

 大震災において、何に対応でき、何に対応できなかったのか、課題を整理する必要がある。発災直後、津波情報が十分伝わらなかったこと。避難に必要な情報が提供されていなかったこと。一方で、情報を受け取っても適切な避難行動がとられていなかったことも指摘されている。

 人的被害を大きくした心理的要因として、危険な兆候に目を背けて安心材料にすがる「正常性バイアス」、半信半疑のまま周囲の人と同じ行動をとる「同調バイアス」、人命救助を優先させる「愛他行動」などが見られた。世代間の行動の違いもあった。避難行動をみると、小中学生や高齢者の避難は非常に良かったが、中間世代に問題が多かった。

自然災害の脅威を科学的知識として理解し、それに対する事前の備えを行うこと、そしていざという時に、生きぬくための正しい判断と行動ができる知力・気力・体力・コミュニケーション能力を高めること。これらの能力こそが“災害と共存して「生きる力」”である。

 13年1月に立ち上げた「『生きる力』市民運動化プロジェクト」からは、「みんなの防災手帳」という成果が生まれている。これには、地震や津波からの避難方法を紹介する「10時間」、けがの応急処置やトイレの確保などが必要になる「100時間」など、災害の発生前から復旧・復興までが時間軸によって編集され、各段階で必要な情報が盛り込まれている。

 被災した時でもすぐに読めるようにイラストを多用し、文章は約140文字で簡潔にまとめられている。ほとんどのページに、東日本大震災の教訓を伝える被災者の声をまとめたコラムも掲載されている。全国に先駆けて、宮城県多賀城市が「みんなの防災手帳」を今春、市内の約2万5000世帯全てに配布する予定である。

震災ビッグデータを未来へ、世界へ
 震災の記録を伝承するために、あらゆる情報をアーカイブする「みちのく震録伝」という活動がある。11年6月、当初は東北大学の数人のメンバーで自主的に開始したが、様々な方面から協力をいただき、プロジェクトとしてスタートした同年9月には約100の企業・団体・組織の参加をいただいた。

 東日本大震災においては、過去の災害では見られなかった様々な記録が起こされた。特に、画像、映像、情報メディア、情報交換記録など、デジタル社会は大震災を国民レベルで記録していた。しかし、同時に大量の情報が時間の経過とともに保存されず消えつつあったことが、取り組みのきっかけとなった。

 重要なポイントは「あらゆる可能性を否定せずに幅広く情報を収集」することである。現在、震災記録登録数30万点、データ量は100TB超となっている。従来のアーカイブと違い、対象とする情報が幅広く、また画像や映像がタグ付けされ、検索が可能になっている。学校の授業や、地域の防災ワークショップの中で活用を高めたい。

 15年3月には、第3回国連防災世界会議が仙台市で開催される。災害科学国際研究所も、当日の経験や教訓を発信すると共に、防災学術研究の国際的中核としての役割を担い、防災・減災の政策立案等を支援することで国際社会への貢献を示したい。また、この国連会議を起爆剤として東北の復興に拍車をかけるための仕掛けを、産学官民の連携により構築していきたいと考えている。


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