情報の真実を暴く

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既に始まった中国史上最大の不動産バブル崩壊劇

2014-03-11 14:17:55 | 国際経済
定着する「迫る不動産バブル崩壊」という認識
 杭州で起きたこの2つの「値下げ事件」は、注目すべき大ニュースとして全国的に報じられていて、不動産市場全体に大きな衝撃を与えた。たとえば「証券時報」という経済専門の全国紙は20日にさっそく一面記事で、「杭州の街で不動産価格暴落の引き金が引かれた」と報じた。翌日21日、同じく経済専門の全国紙である「経済参考報」が掲載した記事では、「杭州で始まった不動産価格の暴落はそのまま全国に広がるのだろうか」と、全国の不動産市場への波及を危惧した。

 大都会であるとはいえ、杭州という一地方都市の2件程度の不動産価格暴落が全国的に注目され、危惧されている背後には何があるのか。国全体の不動産バブル崩壊が迫ってきているという認識が定着している、という事実であろう。

 つまり、この国の不動産バブルはいつ崩壊してもおかしくないという状況下で、崩壊がいつ始まるのか固唾をのんで見守っている関係者やマスコミにとって、杭州の値下げニュースはまさに、この恐ろしい瞬間の到来を告げるような出来事となったのだ。

成約件数の大幅下落 売れなくなる不動産
 中国では昨年末から、不動産バブルの崩壊を危ぶむ声があちこちで聞こえた。例えば12月21日、北京中坤投資集団会長で全国工商連合会不動産商会副会長の黄怒波氏は、北京市内で開かれたフォーラムの席で、スペインにおける不動産バブル崩壊を引き合いに出して、「スペインの現在は中国の明日、中国で次に倒れるのは不動産業だ」と発言した。1週間後、同じ全国工商連合会不動産商会の常任理事を務める経済評論家朱大鳴氏の論文が多くのメディアに掲載されたが、その中で朱氏は「不動産バブルは一旦破裂したら取り返しのつかないこととなる」と述べ、今後数年、「このような事態の到来に備えるべきだ」と提言した。


中国の不動産業の中枢に身をおくこの2人が口を揃えて「バブルの崩壊」を警告していることから、事態の深刻さは推して知るべしだが、実は今年1月に入ってから、両氏の警告はいよいよ目の前の現実として現れ始めたのである。

 たとえば上述の経済参考報など複数の経済専門紙が2月10日の紙面で掲載した記事は、今年1月に、中国全国の9割以上の都市で不動産の成約件数が前月比で大幅に下落したと報じた。一部の都市では半分程度の下落幅さえあるという。大連の場合は53%、深圳の場合は44%の下落が記録されているそうだ。

 要するに、1月に入ってから不動産は全国で一斉に売れなくなっているということであるが、それはすなわち、価格下落の前兆なのである。

 案の定、2月18日付の中国証券報という経済専門の全国紙の記事によると、中国の多くの中小都市で不動産価格暴落の個別ケースが観察されていて、廈門、温州、海口、洛陽などの「地方中堅都市」では不動産価格の全体的下落はすでに始まっているという。

 その2日前の16日、呂諫氏という著名な民間経済評論家もブログで、中国一部の都市で不動産価格の「暴落」が始まったと報告している。

 また、19日には、中国最大のニュースサイトの一つである「捜狐網」の「財経綜合報道」コーナーでは、「中国不動産バブル崩壊の5つの兆候」と題する記事を掲載した。「不動産市場の冷え込み」、「大手開発業者の売り逃げ」などの5つの「兆候」を挙げ、不動産価格の暴落が迫って来ていることへの警告を発した。

 まさにこのような流れの中で、冒頭の杭州不動産市場の「値下げ事件」が起こるべくして起こったわけであるが、それは間違いなく、中国における史上最大の不動産バブル崩壊劇の幕開けを告げたものであろう。

社会的不安の拡大も懸念
 実は、この崩壊劇の序章は2013年6月にすでに始まっていた。中国の上海株急落のニュースが世界中のマーケットを駆け巡り、関係者たちに大きな衝撃を与えたのだ。詳細は過去記事「上海株急落で露呈した中国経済の深刻な『歪み』」で解説したのでそちらを参照されたい。

 2009年末から中国でインフレが生じ、2011年夏にはピークに達したが、中国経済は今でも、11年夏に経験したような深刻なインフレ再燃の危機にさらされている。そして、食品を中心とした物価の高騰=インフレが一旦本格的に再燃すると、貧困層のよりいっそうの生活苦で社会的不安が拡大して政権の崩壊につながる危険性さえあることも、上記の記事で指摘した通りだ。

現政府はようやくこの危険性に気がつき、中央銀行からの資金供給を抑制する方針を固めた。2013年6月の1カ月間、共産党機関紙の人民日報が金融政策に関する論文を6つも掲載して、中央銀行は資金供給の「放水」を今後はいっさい行うべきではないと論じたのも、中国人民銀行総裁の周小川氏がこの年の6月27日、中央銀行としては今後も引き続き「穏健な貨幣政策を貫く」と強調したのも、まさに金融引き締め政策の意思表示であろう。

住宅ローンの停止に踏み切る銀行
 このような流れの中で、13年9月から、中国の金融システムは不動産市場の生死を決める一つの重大な措置に踏み切った。まずは9月初旬、北京、上海、広州、深圳などで複数の商業銀行がいっせいに住宅ローン業務を停止すると発表した。それから1週間、成都・重慶・済南・南京・洛陽・合肥などの地方都市でも、多くの商業銀行が住宅ローン業務の停止あるいは貸し出しの制限に踏み切ったと報じられている。そして同月下旬には、北京の各商業銀行もとうとう、住宅ローンの停止に踏み切ったのである。

 中国の金融不安が拡大している中で、中国の商業銀行は保身のためにリスクの高い不動産関係融資から手を引こうとしているのである。しかしその結果、中国の不動産バブルを崩壊へと導く下記のような一連の連鎖反応が起きてくるのである。

 まず第一段階では、各銀行が住宅ローンへの貸し出しを停止することになると、今までローンを頼りに住宅を購入していた国民の大半は今後、住宅に手を出せなくなる。そうなると、全国の不動産は売れなくなって在庫が余ってくる。2013年9月の時点で全国の売れ残りの不動産在庫が6000万件との試算もあるから、在庫がそれ以上どんどん増えていくと、開発業者たちの資金繰りはますます苦しくなってくるのであろう。それはすなわち第二段階だ。

 そして、資金繰りの苦しさが限界に達した時には第三段階がやってくる。つまり、開発業者たちは生き残るために手持ちの不動産在庫を大幅に値下げして売り捌くしかないところまで追い詰められるのだが、一旦どこかの業者がこのようなことをやり出すと、次にやってくるのはすなわち値下げ競争の広がりである。

 そしてそれはすなわち、全国的な不動産価格の暴落の始まりを意味するのであり、要するに不動産バブルはこれで崩壊してしまう、ということである。

「第三段階」の始まりにさしかかり……
 こうして見ると、2013年9月における中国各商業銀行の住宅ローン停止は、まさに不動産バブル崩壊の引き金であったことがよく分かるであろう。そして本文の冒頭から記したように、そこから始まった一連の連鎖反応は、まさに上述の「不動産バブル崩壊三段階」を踏むものとなった。

 まずは今年の1月に全国の9割以上の大都会で不動産の売れ行きが大幅に下落したことが、すなわち第一段階であった。2月になると、冒頭の2件の「杭州不動産価格暴落事件」の発生と、廈門、温州、海口、洛陽などの「地方中堅都市」での不動産価格下落の始まりはむしろ、第二段階を過ぎて第三段階の始まりにさしかかっていることを意味するものであろう。

 つまり、この原稿を書いている現在、世界経済史上最大の不動産バブル崩壊劇はすでに幕を開けているのである。

 この数年間、中国のバブル崩壊を危ぶむ声がいつもどこかで聞こえてきていたが、どうやら今度は、崩壊という名の「狼」は本当にわれわれの目の前に姿を現したのである。


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