~秋晴れの散歩道や庭に咲く野草群~
'09.10.23(金)
日本語教師養成講座 44日目
朝5時半、TV朝ズバ。
第1回行政刷新会議。
無駄をなくす目的の事業仕分け3部門作業公開。under table から on the tableへ。
JR福知山線脱線事故、歴代社長起訴相当と検察審査会発表。
鳩山首相、今日、ASEAN10カ国首脳会議へ出発。続いて東アジアサミットへ。
6時半、
犬のハナと桜渕むくの木コース散歩。
◎道々咲く野草に携帯電話のシャッターを押す。
思わぬ時間をとってしまい、急いで戻る。
腕立て伏せ71回。
7時40分、
東名高速、豊川インター経由で岡崎まで。
8時50分、Y言語文化研究所駐車場へ到着。隣にあるK喫茶店でホットモーニング。
9時15分、教室へ入る。
いつもと何やら席が変わっている。
ちゃめっけのある建設業経営現役のT氏の着想かとも思われる。
幸い私の定席には、まだ誰も就いていない。
と、M女史が普通とは異なる藍色のはがきを配ってくれる。
友達の女性が岡崎市内にラウンジをオープンしたというその案内はがきである。
岡崎で飲む機会はめったにないが、ハガキくらいなら残しておこう。
9時半、
授業開始。
本日はK女性講師による「音声」その4回目。
~「音声」その4~
音声と音韻
1.音声と音韻
《概念のまとめ》
「音声学」の観点では、[l]と[ɾ]は別の音であるが、
「音韻論」で言うと、英語では別の音、日本語では同じ音、ということになる。
・日本語で[la:meN]と言うのと[ɾa:meN]と言うのでは、音は違っていても、意味は同じラーメン。
・つまり[l]と[ɾ]は音声としては異なるが、日本語としての意味の違いに影響を及ぼさないので、「音韻」としては同じである。
・しかし、英語で言うlice:[lais]とrice:[ɾais]とでは音声はもちろん異なるが、意味も異なる。
・つまり英語では[l]と[ɾ]とでは、意味の違いに影響を及ぼすので「音韻」としては別である。
2.音素と単音
①音素
或る言語で同じ役割を果たす音声をまとめて一つの「抽象的」単位にしたもの。
・音素は音韻の最小単位。
・意味の違いを引き起す音の最小単位。
・/ /で表す。
・IPAの記号とは違う。
・日本語では「訓令式ローマ字」とほぼ同じ。
(ヤ行子音/j/・チ/ci/・ツ/cu/・チャ/cya/・チョ/cjo/などに注意)
・特殊音素:撥音/N/。 促音/Q/。 引き音(長音)/R/。
②単音
音素と異なり、実際に発音される「具体的な」音。
・具体的音声の最小単位。
・通常[IPA]で表す。
以上をわかりやすくまとめると、
(My chck:日本語で発音される[ɾ]・[l]という単音は、/ɾ/という音素にまとめられる)
3.ミニマルペア
ミニマルペアとは、「一カ所」だけ「音素」が異なるために「意味が異なる」語のペアのことである。
逆にミニマルペアからその言語の「音素」を見つけ出すことができる。
・母音の違い:あき⇔いき ピン⇔ペン
・声の違い:たいがく⇔だいがく せんぱい⇔せんばい
・「す」と「つ」:すき⇔つき うす⇔うつ
・「っ」と「ん」:かっき⇔かんき しっぽ⇔しんぽ
・「っ」の有無:かき⇔かっき うた⇔うった
・長短の違い:ビル⇔ビール おじさん⇔おじいさん
注意
(My check①:てる⇔つるは厳密にはミニマルペアではない。"て"は[te]、"つ"は[ʦɯ」である。
子音の音素/t/と/ʦ/で1か所、母音の音素/e/と/ɯ/で1か所、計2か所の音素に違いがあるからミニマルペアではない。
他の例、はく/ふく:子音と母音 たき/つき:子音と母音 さんぎょう/ざんぎょう:子音と有声・無声などなど)
(My chck②:韓国語には「つ」([ʦ])がないので「いつ」が、「いちゅ」「いしゅ」に、「なつめ」が「なちゅうめ」、
「とんかつ」が「とんかちゅ」「とんかす」になりやすい、などなど)
4.音素と異音
①音素:上に既述
②異音
音声と音素は多:1の関係である。
異音とは、ある音素が音声上で「具体的に実現」された「複数の」異なる単音である。
わかりやすく言うと、
(My check:音素/r/には、単音[ɾ]、単音[l]という複数の異音がある、ということができる)
5.異音の種類と相補的分布
①自由異音
日本語には流音の音素が/r/一つしかない。
しかしながら実際には[r]、[l]、[ɾ]のような具体的な音となって現れている。
それは、その流音の前後の環境に関係なく生じうる。
このような異音を自由異音と言う。
・カレーは、[kale:]、「kare:]、「kaɾe:」の、どれでも発音されうる。
・ラーメンは、「la:meN]、[ra:meN]、「ɾa:meN]のどれでも発音されうる。
②条件異音
「ハ行」の子音は/h/という音素で表され、[h]、[ç]、[ɸ]という異音が存在する。
これらの異音は生じる環境が決まっている。
このような決まっている環境でしか生じない異音を条件異音と言う。
ex.1 音素/h/の条件異音
・異音[h]の生じる環境条件:母音[a・e・0]の前 (声門・摩擦・無声音の「ハ・ヘ・ホ」)
・異音[ç]の生じる環境条件:母音[i]の前 (硬口蓋・摩擦・無声音の「ヒ」)
・異音[ɸ]の生じる環境条件:母音[ɯ]の前 (両唇・摩擦・無声音の「フ」)
ex.2 音素/s/の条件異音
・[s]:母音[a・ɯ・e・o]の前 (歯茎・摩擦・無声音の「サ・ス・セ・ソ」)
・[ɕ]:母音[i]の前 (歯茎硬口蓋・摩擦・無声音の「シ」)
③相補的分布
上記ハ行やサ行のように、条件異音が、互いの領域を侵さず補うように分布することを「相補(的)分布」を成す、という。
6.拍と音節
①拍(「モーラ」ともいう)
拍とはリズムの最小単位で、通常仮名一文字で表される長さ。
等時性をもち、それぞれの拍は、ほぼ等時間で発音される。
日本語の「拍」の構造(母音:Vowel 半母音:Semiーvowel 子音:Consonant)
(母音)拍(V) ⇒ ア行
(半母音+母音)拍(SV) ⇒ ヤ行・ワ行
(子音+母音)拍(CV) ⇒ ア・ヤ・ワ行以外の直音
(子音+半母音+母音)拍(CSV) ⇒拗音([kja][kjɯ][kjo]など)
特殊拍(N・Q・R) ⇒ 撥音・促音・長音
・自立拍:~は、それぞれが一拍。
・特殊拍も各一拍。
・特殊拍は語頭には立たない。
・撥音「ン」・促音「ッ」は、後ろに来る音により実際の音[IPA]が決まる。
・長音「-」は、前の母音により実際の音が決まる。(IPAは、[:])
②音節
拍と異なり時間的な単位ではない。
発音上の一まとまりの音の塊として捉えた単位。
通常、母音を中心にその前後に子音が配置されている。
単語の子音は基本的には音節を作れない。
日本語の特殊拍は、「音節の後部要素」となっている。
日本語の「音節」の構造
(母音)音節(V) ⇒ ア行
(半母音+母音)音節(SV) ⇒ ヤ行・ワ行
(子音+母音)音節(CV) ⇒ ア・ヤ・ワ行以外の直音
(子音+半母音+母音)音節(CSV) ⇒拗音([kja][kjɯ][kjo]など)
(~)+特殊拍(N・Q・R) ⇒
・撥音の例⇒「ワン」:SV+N 2拍 1音節
・促音の例⇒「あっ」:V+Q 2拍 1音節
・長音の例⇒「キャー」:CSV+R 2拍 1音節
(My check:特殊拍は、1拍であっても1音節とはならない。特殊拍が含まれる「音節の後部要素」にしか過ぎない)
~練習問題~
次の各語句の拍と音節を数えなさい。
1.おと
2.カード
3.さかなや
4.しんぱい
5.マラッカかいきょう
6.りょうしんおん
7.ヨットハーバー
8.がんばれにっぽん
正解
1(拍2音節2)、2(3-2)、3(4-4)、4(4-3)、5(8-6)、6(6-3)、7(7-4)、8(8-5)。
以上。
12時半、
確認問題の自学自習の宿題と、
IPA国際音声記号の表記に関する次回テスト予告がなされ、
本日の授業終わり。
◆感想
今日の授業内容は、「音声」学の一つの山場かと思われた。
興味深く感じたのは、ミニマルペアの考え方である。
音声学と音韻論との接点に君臨するその過程が面白い。
ひらがな一文字が違っていればミニマルペアが成立するわけではない。
音素一個所の違いから意味の相違を生じさせるという、文言に注意が必要。
この「音素」こそが曲者なのだ。
抽象的な音韻の最小単位が音素であり、意味の違いを引き起こす最小単位でもある。
また、
具体的な音声の最小単位が単音であり、通常[IPA]で表される。
そして、
ある音素には、それぞれの単音からなる複数の異音が存在する、のである。
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