知っている人だけニヤッとするアンプ、イギリスメイドのピーターソンP100G。製造は80年代後半から90年代中盤までと実に短い期間しか作られなかった代物。今ではハイエンドアンプの代名詞的なカテゴリーのビンテージモディファイとPTP等とは全く別のところにハイエンドがあった90年頃に一瞬現れたアンプ。
80年代はチューブアンプの海外2大メーカーとその周辺の小中規模メーカーの吸収や合併でブランドはあるが実物は全く別だったり、50~60年代に設計されたチューブアンプが当時の音楽とミスマッチを起こし始め、多様なエフェクターがリリースされたりと実に混沌とした時期。老舗メーカーもビンテージリイッシュシリーズの開始や小型トランジスタアンプの開発、新時代の高品質ベースアンプの専門メーカーまで出てきて非常に楽しい時代でした。日本ではバブル経済の恩恵もあって輸入代理店も数多く出現とバンドブーム、デジタル機器の登場、CDの売り上げもピークで浮足立っていた割には当時、機材の判別が出来る知識もさほどなく今にして思えば残念な時代でした。そんな隠れた名機を掘り下げる第1弾がこのピーターソンP100G。
今ではあまり見ることのできない無垢マホガニーキャビネットは今見ると多少オジサン臭さがありますが、当時の小型ハイエンドの代名詞ブギーのハードウッドキャビネットの流れで豪華な質感。普通のギターアンプに使用されるスピーカーの5倍もする価格のエレクトロボイス搭載、独立2chのチェンネルスイッチング、アキュトロニクス製のスプリングリバーブと贅沢三昧。重量16kgと大きさの割には重く、余裕の100W出力。密閉キャビのようですがバスレフタイプ、アンプ部とスピーカーをマホガニー単板で仕切り振動の影響を遮断するという凝った作り。センドリターンやプリアウトもあって機能的には十分でこのモデルは生産終了に近い時期のモノ。
さて、サウンドは癖も無くいたって普通。外部エフェクトを効率よく反映させるためフラットなセッティング。ここがいまだにジャズギタリストからの人気が強い要因でしょう。オーバードライブチャンネルはコンプの効いた懐かしい歪で歪んでもクリーンなアタック感が見え隠れするのはレンジの広いエレクトロボイスが要因かも。歪最小でクランチもつくれますが太いクランチを望むならセレッションがベストチョイスでしょう。クリーンチャンネルもマスターボリューム付なのでゲインを上げるとミッドにコンプ感がついてきますが歪ません。フルアコ系やフロントPUの甘いトーンとアタックは絶品です。普通だとジャンルを選んでしまうスタイルですが最近のペダルを駆使するとかなり広くカバーできそうです。
しかし、当時20万円オーバーのハイエンドアンプも既に25年以上経過しているのでトラブルもあります。ガリ、音切れなどの接触不良があるらしくこの個体も問題ないと思いきやスタジオでそれなりの音量だと音切れを起こしました。専門の職人へメンテに出し戻ってきたら絶好調。経年変化の中で素人メンテナンスされていた形跡がありクリーニングでほとんど回避されます。フェーダー用の接点復活剤を必要以上に吹き付けた形跡がありそれに埃がまた吸着してしまうという悪循環が生まれます。基板洗浄とハンダのチェックで終了。チューブアンプのようなメンテは必要ありませんがトランジスタアンプはダメになった時点で音が出なくなるというはっきりした症状があって明確。特に大きい振動にさらされる小型コンボアンプは劣化とともにパーツの接触不良は避けては通れないものです。このピーターソンアンプの売りの一つの独立2chをフットペダルで切り替え機構ですがこのアンプにはフットペダルはついていません。なのでプラグをさしたチャンネルが純粋に使用できてリバーブが常にonになるように改造をしてもらい全ての機能が試せるようになりました。頑丈なキャビネットですがこの容量と10インチスピーカーということでツインのような低音は出ませんがローミッドが明瞭なタイトな音。このあたりは小音量でも生バンドのアンサンブルに埋もれたりはしません。10インチなのに潰れない低音はエレクトロボイスの影響が大きいでしょう。現代の小型で高出力のランチボックスやエレアコ用アンプとは違いよりアコースティックでエレクトリックギターの再生用としてのチューニングがしっかりされています。このサイズで樹脂キャビネット、アジアンメイドで5万円を切れる売価設定が出来るでしょうか。
海外サイトによるとこのピーターソンアンプはイギリスのELVICエレクトロニクスという電子機器製造会社で製造されたらしくアンプ製造の中心人物は「ピートタレット」という人。会社は同族経営で現在はアンプの製造は無く、オーディオ機器、電子機械修理などを継続しているようです。後にも先にもこの時期にこの機種しか作らなかった幻のアンプということになりますね。
構造上、空間系のペダルには抜群の相性があると思いますが歪系のペダルだと勝手が違います。チューブアンプのプリ管に歪を流し込む使い方だと鳴り切りません。ペダル側のドライブを12時位まで上げて歪量はギターのボリュームで調整、ペダルオフでボリュームカーブが変化するのでクリーン時とペダル使用時でのボリュームが2通り出来るのでコントロールが難しくなります。当時はこのピーターソン2台をラックマウントエフェクターで鳴らすのがハイエンド使用方法。ギターのボリュームはフルテンで音量はフットペダルで調整。アンプはナチュラルなPA的な解釈で作るのが流行っていてモダンなジャズ・フュージョン、スタジオ系のギタリストはみんなステレオでした。物量投入の80年代を象徴するスタイル。
しかし、25年前のアンプと最新のデジタルオーバードライブが意外とバッチリなのが面白い。
たしかスタックのベースアンプもあって、ルックスのシブさがイカしてた記憶があります。
内部構造についてですが、かなり凝ったものだったんですね。
ある意味計算ずくというか...。
比較対象としてどうかと思いますが、往年のJC120あたりとの違いをぜひ検討してみてください!
いつもありがとう。
この時代限定の産物です。トランジスタで
このスペックをリイッシュすることは今は
どの製造メーカーもやらないでしょうね。
音はフラット系ですがエレアコアンプや
ベースアンプとはまた違う感じです。
JCとも違う感じで変わってますね。
フェンダーやマーシャルを全く意識していない
音です。ブギーでもない。
そのインパクトの無さが短命に終わった
感じでしょうか。しかし、クリーンのフロント
ピックアップ最高です。フルアコのジャズには
間違いなくいいですね。
に絞り込み、何れもPETERSONでのみファットな音色が得られ改めて凄さを体感しています。
(音色の良さでリファレンスにしているC10NS付き'66VibroluxのSpeaker Outで鳴らしても単独では薄い、Petersonの良さを再発見)
ありがとうございます。
スピーカーユニットの勉強になります。
このEVのスピーカーもいつかは駄目になりますからね。
ピーターソンはこのキャビネットの構造にも秘密がありそうです。10×1のスピーカーでよくぞここまでという低音は癖になります。
大事に使っていきたいところですね。
またよろしくお願いいたします。
私も同機を所有して使用しておりました。
オーバーホールし今ではLILI LIMITと言うバンドで息子が使用しております。アンプ自体の音の癖がなく気に入っているようです。
キャビネットがしっかりしているので25年以上たっても変わらずいい音を出しているそうです。
記事とても参考になりました。
ありがとうございます。
最近は中古市場にもあまり見かけなくなっていますね。
このバブル期の物量投入時代のものはしっかり作られていて現在でも通用するものばかりです。
コスト優先とデジタル化アンプは長くは使えないでしょう。
またよろしくお願いいたします。
ピーター(通称ピート)さんが試作機第一号を
フランクフルト会場に持ってきたので鳴らした
記憶が海馬の奥から蘇ってきました^^!
裏を返せば私が日本人で初めてピーターソン
のアンプを知った人という訳です(だから?)
懐かしいです。あれから〇○年・・・穏やかな
方で10年程のお付き合いがありました。
御健在なのかなあ・・・ このアンプ欲しいなあ〜
小型で大音量のギターアンプの走りだと思います。
機能的で品のあるデザインは現在でも同じものは
無いようです。
メンテナンスしながら大事に使っていますが現代でも
十分使えるアンプです。
またよろしくお願いいたします。