ケーブルの話をすると必ず登場するのがベルデン8412。歴史も古く用途は多方面にわたっている。CDやカセットが出て来るずっと前からアメリカの映画・音楽産業で使用されていた業務用ケーブル。マイクロフォンケーブルなんかと呼ばれることもある。結局、記録媒体がデジタルデータになっても最後は空気を震わすアナログ信号になってしまうわけで、半世紀以上前にデザインされたケーブルが今だ使われていること自体恐ろしい。そう考えると新素材を使った1本数万円もするRCAケーブルも出てくる音は大差無いのである。オーディオマニアは許さないかも知れないがある一定レベルを超えたクォリティーの物は皆同じ音なのである。特殊素材を用いたり、一定の周波数をブースとしてあるハイエンドケーブル等は別ジャンルとして捉えたほうがいい。
楽器用、特にギターやベースに使用する場合そのブースト具合や音質がディストーションのキャラクターを変えるため種類も増え、プレーヤーの使い心地、メーカーのキャッチコピーと無数の情報が交錯するのである。一般的な廉価版ケーブルはノイズを遮断したレベルの低い設定のミッドハイを持ち上げた作りになっている。そこでちょっとだけハイ・ローをブーストしたいわゆるドンシャリタイプを使うと「ブライトでヌケル音」と錯覚してしまうのである。
ベルデン8412をギター側から考えると音の着色が無くフラットな特性だから廉価版ケーブルやミッドハイ中心のギター用ケーブルから乗り換えると、レベルとハイローが上がりドンシャリ風に聴こえてしまう。アコースティックやベース、キーボードなどのフラット系には特にベストマッチ。
これをオーディオ的に捉えると付属品や家電売り場のRCAケーブルは低いレベルでドンシャリ傾向に作られている。そこで8412に換えるとフラット特性になりトレブルは抑えられローはタイトになり結果的にミッドが浮き上がり解像度が上がってくる。ヴォリュームを上げてもギラつかず、どのレンジも前に出てくるのでスタジオモニター的なスピーカーには最高なのである。
そんな中、8412でRCAケーブルを作ってみた。長さは30cmで2ペア。今までもオーディオアクセサリーメーカーのそこそこなケーブルを使っていたがさすが8412。音楽的だ。最近リマスターした70年代ROCKの奥深さ。派手さは無いが密度の濃い重厚な音に変化する。これが基本なのかも知れないが、神経を集中してじっくり聴き込んでみたくなる音だ。それでも疲れさせないトーンが8412にある。これが耐久性と音楽性を兼ね備えた業務用ケーブルなのか。またケーブル地獄に突入だ。