孫悟空が心臓病になって死んだ。悟空の仲間達はそれぞれ悲しみながらもしばしの平穏を過ごしたが、二人の人造人間が現れその平穏は壊れた。戦士達は人造人間に立ち向かったが、ベジータ、ピッコロ、ヤムチャ、天津飯、餃子、クリリンが死んだ。そして地球は人造人間によって地獄となった。
「人造人間17号と18号を始末して欲しいですか?」
監察軍本部にいたミズナに、変わった依頼が来た。
他の軍や実戦部隊の手に負えない強敵の場合は私に殺しの依頼が来ることがありますが、この世界は私のトリップした世界。普通自分のトリップした世界に干渉する時は、そのトリッパーの判断が優先される筈です。
私はあの世界に関しては、本編ではなくもう一つの歴史の流れになるように調整していた。まだ人造人間が地球で暴れ出して三年しか経っていない。現時点で人造人間を始末するのは流れを変えてしまうでしょう。それは理解している筈なのに。
私の怪訝な顔に気付いたのか、シリウスは言葉を付け加える。
「実は君のトリップした世界の地球で、また新たにトリッパーが発見されたのだよ」
シリウスのその言葉で分かった。
「よりにもよって人造人間が猛威を振るっている地球にトリップするとは不運ね。なるほど、始末したがるわけです」
恐らくそのトリッパーが人造人間の始末を要請したのだろう。何せ折角自分のトリップした世界が、滅茶苦茶になっているんですから。私が同じ立場になったら当然そうします。
「良いでしょう。そういうことなら人造人間は始末しておきます」
予定を変更することになりますが、まあいいでしょう。元々、優先順位はそれほど高くない。
「シリウス、そういえばあの世界で行ったドクター・ゲロの研究所の調査はどうなっているのですか?」
ドクター・ゲロは性格に問題があったが間違いなく天才だった。その研究所ともなれば回収できる技術も見込みがでかい。
「ああ、16号が丸々残っていたよ。現在は16号の技術を解析して全人工製の人造人間の研究をしている。それとセルは調査が済んですぐに処分して置いた」
「ほう、そうですか」
セルが始末されたか、まあいいでしょう。もう完全体になってもセルでは私に相手にならないから、別に処分されても構わない。でも16号の技術が回収できたのは大きいですね。監察軍の技術で更に強力な人造人間を作ることも出来るでしょう。GTの超17号とは言いませんが、ある程度私に近い力を持つ人造人間を作れたら模擬戦も楽しめる。
「でもその研究は注意して下さいね。暴走してしまいましたとか、ハッキングされて乗っ取られたなんて話は聞きたくありませんから」
「それは分かっているよ」
「それとサイヤ人の種の保存の件は本当にいいのかい?」
「ええ、シリウス構わないわ」
監察軍は各世界の絶滅危惧種や部族などを保護するなども場合によっては行っていた。ドラゴンボールのナメック星人や、ヴァンパイア十字界のヴァンパイアやダムピールなど。
しかし、サイヤ人の種の保存を私は断っていた。私自身は子を残せないが、私の遺伝子を元に遺伝子操作を加えたクローンを作りブロリーとの間に子を作らせて、純血種のサイヤ人を後世に残すという事も可能だ。
しかし、私はサイヤ人を後世に残すことには懐疑的だった。ナメック星人のように穏やかな種族ならば、その種族を後世に残しても問題ないでしょう。でもサイヤ人は違います。後世に災いを残すことになりかねない。だからこそ私は惑星ベジータを見捨てて、他のサイヤ人を見殺しにした訳ですし。
それでも一応、私とブロリーの遺伝子データは監察軍で保存されています。どうしてもサイヤ人が必要になったときにはサイヤ人が復活するでしょう。まあ、そんな時はこないと思いますが。
「はああ!!」
「がああ!」
ブロリーと私が組み手をしている。共に超サイヤ人ではないノーマル状態だった。超サイヤ人への変身はノーマル状態の戦闘力を五十倍以上に高めるが、元の戦闘力が高ければ高いほど戦闘力をより引き上げる事ができる。だからノーマル状態での戦闘力を高めることは大切です。
拳には拳、蹴りには蹴り。一瞬のうちに幾重にも攻防を繰り返す。ぶつかり合う攻撃は辺りの空気をかき乱す。
ブロリーの戦闘力は今ではこの私に匹敵する程。まさかここまで強くなるとは思わなかった。10歳年長というアドバンテージに加えて、精神と時の部屋のような時間の流れの異なる異空間で修行しているから、修行時間は私の方が遥かに多い筈なのに。
「ブロリー、次の仕事が決まったわ」
数十分にも渡る組み手を終わらせてブロリーに用件を告げる。
「場所は私達の元々いた並行世界の地球よ。まあカカロットもベジータも死んでいるけどね」
「あの二人が死んでいるのは残念だ。俺が自ら殺しておきたかった」
「あら物騒ね。でも仕方がないわ。それより今回は私に得物を譲って貰うわ」
「そうですか」
ブロリーが不服そうな顔をした。
「まあそう嫌そうな顔しないでよ。最近は貴方に譲ることが多かったでしょ?」
この前のボージャックは結構な得物でしたよ。
監察軍はブロリーの暴走を恐れてかなり強い敵を斡旋してブロリーの好戦的本能を満たしていた。その世界の者から依頼もされていないのに強力な悪役が出てくると、私とブロリーに話を回してくるほどです。
食事などの待遇は良く、強い敵とも戦える現状にブロリーは満足していた。今のブロリーは映画よりも強いでしょうね。私の修行に付き合っているし、結構強い者とも戦っているから。
私でも超サイヤ人2の状態では互角の勝負になってしまう程です。超サイヤ人3になれば勝てますが、あまり多用してはいない。あれって外見がよくないんだよね。ザーボンほどじゃないけど永遠の少女としてはあまり使いたい物ではない。おまけに生身だと負担が半端ではないから、その辺りも改良の余地が有る。
その後、ブロリーが超サイヤ人3に目覚めてしまい私を追い越してしまうのですが、それは余談である。
エイジ770
私とブロリーの二人は地球に降り立った。前回地球に来た時は一人で来ましたが、普通はブロリーと共に行動しています。何故かというと、私はブロリーのお目付役だからです。ブロリーが暴走しないように目を光られています。
前はカカロットやベジータがいたので、ブロリーを刺激しかねないから一人で来ましたが、二人が死んだ今ではそれを気にする必要はない。
さて、どうするか。このまま人造人間を始末しても良いですが、それじゃ面白くない。どうせなら、この状況を利用するとしましょう。
「はああっ!」
超サイヤ人2になり気を最大に高める。17号と18号にはパワーレーダーがないので反応は無いが他の者は違う。
「へえ、早いね」
強い戦闘力を持つ者が接近している。これは孫悟飯でしょう。
「やはりミズナさんですか、其方は?」
「私の弟のブロリーよ」
私の強力な気を感じたのか悟飯がすっ飛んできた。
「弟さんですか、話しに聞いていましたけど…」
悟飯は初対面のサイヤ人に戸惑っていた。
「悟飯、私はこれからカリン塔のカリン仙人に用があるの。どうせなら付いてくる?」
「……ええ」
私達はそれなりのスピードでカリン塔に向かった。
「久しぶりね。カリン」
「……そうじゃな。またとんでもなく強くなりおって」
カリンの顔は引きつっている。今の私の戦闘力を感じていればそれも当然ですね。カリンと会うのはこれで二回目。どちらも気を解放してカリンを威圧していた。何かそう考えると、私のやり方は悪いと思うけど、仕方ないよね。直接、危害を加えないだけ私はマシだし。
「単刀直入に言うわ。私は仙豆の栽培手段が欲しいから貴方に協力して貰いたい。勿論タダでとは言わないわ。貴方が協力してくれるなら、今地上で暴れている二体の人造人間を私が殺してあげる」
「な、なんじゃと!」
「なっ!」
カリンと私の後ろにいる悟飯も驚いている。
「そう驚くことでもないでしょう?私ならあんなガラクタ簡単に始末できるわ」
「……本当に人造人間を倒してくれるのだな?」
一瞬の沈黙の後にカリンが聞いてきた。
「それは貴方の返答しだいよ」
「わかった。協力しよう」
「賢明な判断ね。じゃ早速始末してくるわ」
これで仙豆の製造手段も入手できます。私は以前から仙豆は少数生産で良いから自力で栽培できないものかと思っていた。ドラゴンボールを見てみると仙豆を作っているのはカリンだけですから、どうしてもカリンの協力が必要です。
人造人間の始末に関しては、本当は監察軍から報酬が出るので問題ないのですが、ちょうどいいのでそれをダシにカリンの協力を引き出してみました。報酬の二重取り、一石二鳥です。我ながらあくどいと思うけどね。
「そうだ。悟飯貴方は私の戦いを見物する? 見届けるぐらいはしたいでしょう?」
「はい」
悟飯は仲間の敵を討ちたいと思っているようですが、人造人間との力の差は理解している。だから自分が人造人間を倒すのでやらなくていいとは言えないのでしょう。
「さて、スクナビコ。人造人間の位置は分かる?」
私はこの世界に来るために乗ってきた自分の宇宙船の管制AIと連絡を取った。
『ええ、位置データを送ります』
すぐに空中モニターに位置データが現れた。
ここでミズナが人造人間の探索にAIを使ったのは、自力での探索が難しいからだ。通常、生物には気が存在している。だから気を感じることで相手の位置を知ることができるのだが、人造人間にはそもそも気がないから気では探索できない。
そこであえて機械の各種センサーで調べてみた。人造人間の動力は永久エネルギーで、そのエネルギー量は膨大だから機械のセンサーを使えば簡単に分かる。これで人造人間の運命も決まった。ミズナがここまで準備していなければ、彼等はあるいは逃げ切れたかもしれないが結果が出てしまった。二体の人造人間が、超サイヤ人ミズナの圧倒的な強さによって破壊されるのはこの後すぐのことであった。
「ところで悟飯。貴方確か学者志望じゃなかったかしら」
「えっ、まあ色々ありまして…」
人造人間を始末した後で、唐突に尋ねた私の言葉。悟飯が口ごもるので詳しく聞いてみると、悟飯は修行するために家を飛び出していたらしい。そういえばチチは原作でも悟飯に武術の修行よりも勉強させて偉い学者になってもらいたかったと思いだした。チチはかなり心配しているはずです。
「ふふ、これで平和になるから家に帰ってちゃんと勉強する事ね。子供らしくね」
「は、はい」
意気消沈とした表情。どうも私が人造人間をザコとして一蹴してしまったので気が抜けてしまったようですね。
「こらそんな顔しない。チチのところに帰って安心させて上げなさい。母親に心配させるなんて親不孝なんだからね」
私は悟飯にチチの元の帰るように促したが、こんなお節介を焼くとは私も甘くなったかな?
家族か。こうして考えると、子供を産むというのも悪くないかもしれないけど私は子供を作れない。初潮が来る前に成長が止まってしまっている。だから未だに生理が来ていないし、これからもこないでしょう。
考えても詮無きことか。所詮私はトリッパー。今の私は前世の本当の私とは違う。例えミズナが子を作っても、本当の意味で私の子と言えるのか分からない。私の子だと心の底から思えるのかもね。
大体、現世の私の人生はおまけにすぎない。今の私がいくら不老長寿とはいえ何時かは終わりが来る。その時がくれば私はあるべき世界の輪廻に戻る。他のトリッパー達がそうであったように…。
てっきり原作の展開だと思ってましたが、原作外伝の方の話だったとは・・・。
しかし、戦闘描写もなしであっさり17号と18号を倒してしまうとは、さすがに強さのインフレを起こしたドラゴンボールのトリッパーだけはありますね。
でも、このDB(略します)のトリッパーが他世界に行ったらネギま!だろうがマブラヴオルタだろうが、大抵のボスも雑魚になりますね。
このDB世界の悟飯は母の元に帰って泣きつかれてお説教受けてそうですね。
次はどの世界の原作を打ち壊すのか、楽しみです。
更新待ってます。
他の作品もぜひ読ませていただきます。
続編として、並行世界のDB世界でセルや魔人ブウ、ベビーなどと戦う話などはどうですか?