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シロガネの草子

「我が身をたどる姫宮」 その8 


 姫宮様の、懐妊の知らせは、やがて皇嗣家より、御所のお上と、皇后様にも伝えられました。


 お上は、その知らせを受けられまして、御機嫌宜しくあらせられ、恐れ多くも、皇嗣家と姫宮様にお喜びの、御言葉を伝えられましたが、しかし、その一方で皇后様は、姫宮様の懐妊の知らせを受けられた後、余り御機嫌が宜しくなかったという事です。


 皇后様は、恐れ多くも、お上の度重なる熱心な懇願によりまして、千代に八千代の御結(おんむす)びとなさいました。しかしながら、正直申し上げまして皇后様は・・・・・・お上の事は(某漫画)の題名通り、「あなたの事はそれほど」というお心持ちでした。そしてその状態が、長く続いていったのです。


 その上、初めての御子でいらっしゃいます、女一宮様を、御生みになられるまで、約8年ほどかかり、その間、世間からさまざまな、プレッシャーをかけられまして、随分とプライドを傷付かれて、おりました。


 そしてようやく、待望のお子様が御生まれになられましたが、皇位継承権のない、内親王殿下の、女一宮様でいらっしゃいました。

   
    
 結局、皇后様は、女一宮様、御一人のみを、お上げになられ、残念ながら、お上の御世継たる親王殿下を御産み参らせる事は、御出来には、なれませんでした。
    
   

 人一倍負けん気の御強い方でいらっしゃいますので、やはり、どうしてもその事が、頭から離れず、又女一宮様がご誕生迄の様々な事が思い出され今回、姫宮様がご結婚後、間もなくして、懐妊されたという知らせを受けられまして、かつてのあれこれなど、複雑な思いも、おわりになられたようで・・・・・


「まぁ!そんなに早く?姫宮さんは、皇嗣妃と同じね。まるで、ネズミのような繁殖力をお持ちで、いらっしゃるわね。(笑い)」

・・・・・と、おっしゃたとか。かつて、ご結婚後直ぐに、お子様に恵まれた皇嗣妃殿下・・・・当時は、宮妃殿下で、いらっしゃいましたが、義理の妹の、宮妃殿下と、いつも比較されておりましたので、その時の口惜しい思いが、皇后様の御胸に、蘇ったお心持に、なられたのでした。


 懐妊の知らせは、御所に伝えられたと同時に、赤坂の院ご夫妻にも、伝えられましたが、院と上皇后御方(おんかた)にとりましても、初めての、曾孫になるのですから、大層なお喜びで、いらっしゃたとの事です。


院と上皇后御方です。。お二方は、いつもご一緒デス。


お若い時分の上皇后御方(昭和40年代)にそっくりな肖像画

このお顔から~~このお顔に・・・・。


 上皇后御方は、何事にも世間からの、ご自身の美しき「名声」を大切になさるお方で、いらっしゃいます。
 かつて、姫宮様がK氏と結婚される際、ご両親殿下が、反対するなか、上皇后御方、当時は、平成の御代でしたので、皇后様でこざいましたが、その皇后様の元へと、姫宮様が直接出向いて、K氏への想いと、結婚を認めて頂きたいと懇願されました。
 皇后様は、姫宮様の結婚相手は、かつてのご自身と同じく「恋愛結婚」で、そして本人同士の意志が大事で、そして何よりも、家柄にこだわっては、ならない思いが、ありましたので、内親王たる姫宮様と全くの、庶民のK氏との結婚を、認めるのが孫娘の、恋愛結婚に理解ある、「慈愛溢れる」理想の皇后であるというご自身のイメージが、世間に広がるのは、良いことだと、御考えになられたのです。

 その結果、K氏を、ろくに調べもせずに、(もしかしたら、キチンと調べたうえ?)結婚を御認めになられてしまったのです。それが後々ご自身の首を絞められる結果を生むのですが・・・・・その時は、御自身にとりまして、思いもよらない事でした。


 しかし、やがてK氏と「お母様」の事が、色々と世間に広まってからは、一転、御自身、火の粉を浴びたくはないと、言わんばかりに姫宮様の結婚には、反対の意向を、はっきりと、表明なされまして、ご結婚には、反対され続けました。
 愛しい孫娘の将来を、心から心配する「慈愛溢れる」(正しくは、自愛なのですが)心優しい祖母として。


 かつて、姫宮様の結婚を、御認めになられた事は、すっかり御忘れになられた御様子でいらっしゃいました。しかし・・・・・かつて結婚を認められた事は、姫宮様始め、皆様しっかりと覚えいらっしゃいます。


 今にして思えば、姫宮様があれだけ、K氏と結婚にこだわって、頑固に意地を張って、周囲の意見を受け付けなかった理由の一つは、祖母君たる皇后様の日和的な態度への、反発もあたのかもしれません。


 お腹のお子様は、順調に育ってゆきました。姫宮様は、日々新しい命を、宿した事に喜びを感じながら、これから生まれてくるお子様の為の準備を進めておりました。


 姫宮様は、地元の産婦人科に一般同様に検診を受けられていましたがその頃、ほぼ同居されていた「お母様」は、姫宮様のお腹が、目立ち始めてからは、一緒に付き添う様になりました。


そんなある日の事、「お母様」は姫宮様に、


「一般では、初産の時には、よく実家に帰って出産するものですが、宮様も、そうなさっては、いかがですか。こちらの病院より、やはり東京の産院の方が、よろしいのではないのでしょうか。皇嗣ご夫妻もその方がきっと、安心なさるでしょう」

 と、言われたのです。姫宮様も初めての事なので、やはり不安を感じていましたし、「お母様」も、色々と自分に気を使ってくれて有り難いのですが、しかし元皇族の自分には、必要以上に気を使うものだろうと考えて、K氏にも相談しました。

「宮様が、居ないのは、寂しいけども、お母様も毎日、宮様に、気を使って、疲れたんだろう。東京の病院で産んでくれば、自分もお母様も、安心だし、皇嗣家もいくら、オレ達の結婚に、反対されておられたとは、いっても実の娘の初産だもん。嫌とは、言えないだろう。こちらからも連絡して頼もう」

 そう言って、あっさりと承諾してくれました。そして、平日は、「お母様」の居る、こちらに帰り、土日は、皇嗣家に行きたいと言ったのでした。


 姫宮様は、K氏の言葉を聞いて、『宮様がいないのは、寂しい・・・・』と、言っていたけども、もしかしたら、内心は・・・・と思いましたが、しかしK氏は、母親思いの人だから、ただ単に、純粋に「お母様」を気遣っている。ただそれだけの事で、別に深い意味は、ないのだと自身に言い聞かせて、思いを改めたのでした。


 しかし、あの当時、K氏との結婚を周囲から反対され、お互いに離れている時は、あれほどK氏の言う、言葉は、どんな言葉を、聞いただけでも、胸がときめき、信じていましたし、例え疑問に感じても直ぐに打ち消してしまえたものでした。


 しかしながら、こうして現在、K氏と「お母様」と一緒に暮らして日々を、送るうちに、何事も「お母様」優先のK氏に対して、そういう気持ちが、段々と薄れてくるを自覚せずには、いられませんでした。でも、それは、自分は今、身重の体のせいで、アレコレと考えすぎているせいだと、姫宮様は思われたのでした。
 こういうのを鬱というのかと考えて、とにかくこれから、自身の人生で、大きな出来事を経験するのだから、つまらない事を考えるのは、よそうと、ただこれからの事に、思いを馳せたのでした。


 K氏は、自分が皇嗣家に連絡すると言っていましたが、やはり自分がした方が良いと思い、姫宮様は、ご実家の皇嗣家へ、こちらで出産させて頂きたいと伝えられました。


 何かと忙しい皇嗣家の方々ですので、自分がこちらに来ては、迷惑をかけるし、ことに母君の妃殿下の負担が多くなるのは、分かっていました。でもしかし、初めてのお産で、自身もどうにも不安で仕方なく、申し訳のないとは、思いつつ、皇嗣家へと連絡をされたのでした。
 姫宮様から、こちらで出産したいという事を、聞かれた両殿下は、二つ返事で、承諾してくれたのです。皇嗣殿下と妃殿下も、初めてのお産を、控えた姫宮様をずいぶん案じていらっしゃたのですが、あちらの「お母様」が、ずっと付き添って居るので、こちらからは、言い出せずにいたのです。


 又、赤坂の御用地には、院ご夫妻を始め、各宮様方もおられるので、皇族の身分を離れられた、姫宮様が、あれこれと、気を使うのではと思われ、実家に戻っても、かえって気が休まらないのでは、ないかと、思われていたのです。


 そして何より今、皇后様が、結婚早々に、懐妊された姫宮様を、余り心良くは、思われて居ないと、風の噂で、お聞きになられたりして、ご気性の御強い皇后様が、万一にも、姫宮様やK氏等に関して、宜しくない御言葉を、おしゃって、それを姫宮様の耳には、入れたくは、なかったのです。


 皇嗣家の承諾を得た姫宮様ですが、ある事を、考えていました。皇嗣家でのお産では、当然、宮内庁病院か、弟宮様が、お生まれになられた病院か、どちらかになるだろうと、思っていたのですが、K氏は、当然、弟宮様が生まれた病院での出産を望んでいました。
 しかし、その病院は、入院費用も高いですし、いくら皇族の身分を離れたとはいえ、病院側もそれ相応の対応をしなければ、ならないだろうし、K氏は、その費用は当たり前の様に、姫宮様の持参金か、それとも皇嗣家の方が負担すればいいと、言っていました。


 姫宮様から、皇嗣家より承諾を、頂いたと、聞いたK氏は、その後、直接自身が皇嗣家に連絡して、姫宮様のこちらでの滞在費、及び出産費用一切をそちらで、負担して頂きたいと強く願い出したのです。それと出産する病院は、若宮様の生まれた同じところが言いと伝え、当たり前の様に、妃殿下と同じく、特別室でと・・・・・。


 K氏の厚かましい要求を、聞いた皇嗣両殿下は、当たり前ですが、大変不快に思われたという事です。姫宮様も、K氏からその事を聞き、ビックリしてしまいました。


 しかし、皇嗣家に戻って出産するという事は、滞在費などをきちんと考えなければ、ならないと、K氏の言うことも一理あると思い、妃殿下と直接、話をしました。


 「K氏も悪気が、あるわけではありません。ただ物事をきちんとはっきりとさせる人ですから、誤解をされたようですが・・・・・でも、わたくしは、そういう面が、また男らしくて素敵だなと思うのです」

 と、伝えました。妃殿下は全く姫宮は、「相変わらず」だと思いましたが、それが、「いつまで持つ」のやらと、思われたのです。


「皇嗣様も、私もK氏の言った事は、別に大して気にしていませんよ。ただ今は、あなたが、無事に身二つになることだけが、一番気がかりなのです。その為だったら、私共も協力を惜しみませんが」

 それを聞かれた姫宮様は、かねてから考えていた事を母君に伝えられました。


「お気遣い頂き、ありがとうごさいます。君様(妃殿下の御所言葉)のお言葉に甘えさせてよろしいでしょうか?実は前から、こちらでもと思い考えていたのですが、わたくしの出産は、自宅出産をと、考えております。この様なことを、申しまして、ご迷惑とは承知しておりますが、その方が、わたくしには、都合が良いのです」

 姫宮様の言葉を聞いて、予想もしていなかった事を言い出したので、妃殿下は、さすがに驚きました。


「・・・・・もしかしたら、入院費用の事を気になさっているの。心配しなくても、あなたは、保険が利くのだし、こちらも背一杯の事をするつもりでいるのだから、それに、持参金もこういう時は、使っても差し支えはないはずですよ。あなたの事なのですから」

 姫宮様は、思った通り、やはり驚かしてしまったと思いましたが、変に誤解をして欲しくなくて、


「いえ、ただ、わたくしは色々と世間を賑わせてしまいましたから、病院に入院して、病院側に迷惑をかけるよりも、自宅の方が気を使わず、ゆっくりと、お産が出来るのではないかと・・・・・。産後の鬱等も、ひどくならずに済むと思いまして・・・・・君様を、驚かして申し訳ありません」

 妃殿下は、そうゆう事かと、納得されました。確かに自宅出産なら、本人も気が楽かと思いまして


「私一人で、決めるわけには、ゆきませんから、皇嗣様にもご相談のうえ、返事をします。それにしても、面白い発想を、なさったものですね。こちらなら、何の遠慮も入りません。私は、楽しみが増えたようで(笑い)初孫がここで生まれるのは、結構な事だと思いますよ」

 そうおっしゃいましたが、妃殿下は、ただ皇嗣様が、ダメとおっしゃたなら、やはり皇嗣邸での出産は、遠慮して欲しいと言われました。


 その後、妃殿下は、皇嗣殿下に姫宮様の意向を伝えられましたが、皇嗣殿下も大変、ビックリしておられまして、今時、自宅出産なんて、ほとんどないだろう。大丈夫なのかと言われましたが、こちらは、御所では、ないのだし、姫宮に障りがなければ、本人もここの方が気がラクなら、ここで生んでも、構わないと、おっしゃたという事です。

・・・・・その9へと続きます。




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