goo blog サービス終了のお知らせ 

「繭」 vol:2

2008年06月08日 | 精神科・心療内科
病院の門を抜け,案内図に従って病棟を目指す.
ナースステーションの様なところで彼の名前を告げ,面会の意を伝えた.
小さなロビーで少し待たされた後,看護士さんと共に病棟へ.
ロックされた扉の向こうに、また扉.
当然だけれど、窓には鉄格子,ドアには全て南京錠.
「ああ、【閉鎖】なんだ」と、妙なところで実感する.

二人用の相部屋.
窓側のベッドに、彼は座っていた.
「あやさん(私)が来てくれるから、着替えちゃったよW」と、笑う彼.
数日前まで、ICUにいたとは思えない姿.
「相部屋のヒトは?」と聞くと、なんと私の為にお茶を煎れに行ったという.
陽当たりの良い部屋の床に座り、とりとめも無く,いろいろな話をした.
彼女の事,サイトの事,そしてこれからの事.
「誰にも聞かれる事が無い」という安心感からか、気負う事無く素直に言葉を紡いだ.
穏やかな時間だった.
「いつも、こういう気持ちで【社会】と関われたら良いのにね」と笑った.
ひとしきり話した事,同室の方が戻って来た.
信じられないくらいの時間をかけて私の為に煎れてくれたお茶を頂き、簡単に
挨拶をした.
詳しい病状は聞かなかったけれど、閉鎖病等にいるという事は「社会で生きて行きにくいヒト」なんだろう.
もの静かな同室人は、都内の音大に通う学生さんらしかった.
幼子のような優しさを感じた.

その後,庭に出て,少し散歩をしながら話した.
いつも以上に彼は饒舌だったけれど、いろいろな事を急に話して,少し疲れさせてしまったかもしれない.
「あんなの事を心配してるヒトがこんなにいるんだよ」と知らせたくて持参した,BBSのプリントアウトを束を渡して帰ろうとした.
ホチキスで留めた束を受け取った時,「これが欲しかった」と笑った.
「みんなの言葉」が欲しかったのも事実.


でも、彼の欲しがったものは、紙束を留めたホチキスの針.
「全部取り上げられて,なんにも無くてさ.切らないと苦しいんだ」




にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村 猫ブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

繭 vol:1

2008年06月08日 | 精神科・心療内科
昔.
閉鎖病等へ面会に行った事がある.
あそこは、「あたたかい繭」のようなものだと思う.
「社会と隔絶されて、ただゆったりと流れる時間だけがある」、「繭」の様な場所.

古い古い友人.
彼は、いわゆる「ボーダーライン」と診断されていた.
数日間行方不明で、自宅から離れたカラオケBOXでODして昏睡状態のところを、発見された.
彼が運営していたサイトは、当時メンタル系の「避難所」というか「相談室」のようになっていて・・・.
彼がレスを付けられない時は,いつの間にか私がレスをしているような感じだった.

夜中、彼の彼女から電話が来て.
震える様な小さな声で「H君と連絡がとれないの.どうしよう・・・」と、伝えられた.
「Yちゃん(彼女の名前)、今どこにいるの?」
「わかんない.外」
「そうか.心配だけど、夜中だから、とりあえずYちゃんはお家に帰ろうか?」
彼女は摂食障害/乖離性人格障害.
電話をくれたのは、副人格の女の子だった.

「死にたい」時期に、さしかかっていた彼.
電話の向こう側で、「静脈切っちゃった.ぴゅーって、血が出るよ」と嬉しそうに話していた.
数日前に会った時も、道ばたのゴミ箱の上に腕をかざし、切りながら「雑談」をしていた彼.
私は「自傷行為そのもの」を止めはしない.
少なくとも,私の周りにいる「彼女達/彼等」は「死ぬ為」に切っているわけでは無いから.
だから、「ヤバいな」と思った時以外は「あんたまたやってるの(W? とりあえず、止血しなさい」と言うくらい.
それから、相手が話し出すのを、待つ.
だって、本当は,「切りたい」んじゃなくて、「聞いて欲しい/自分の事を知ってい欲しい」んだから.

心あたりのある場所は、全部捜した.
彼の部屋からは、キレイに「彼」と「貯めていた薬」だけが消えていた.

数日間,ICUに入った後,落ち着いたタイミングで閉鎖病棟へ移された彼.
必要と思われるも数点を持って,東京近郊の病院へ彼を見舞った.
「見舞った」というか、病室からのSOSメールに応えたというか.

駅前のロータリーから徒歩10数分.
お天気の良い,夏の日.
初めて訪れた「閉鎖病等」は、驚く程開放的で、緑の濃い庭に囲まれていた.




にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村 猫ブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

お薬のこと。

2008年06月04日 | 精神科・心療内科
最初の処方は、あの意味悪名高き(笑)「アモキサンとリーゼ、レンドルミン」。
あの大きなカプセルと、頼りないくらい小さくて白い錠剤。
今でこそなんの抵抗も無いけれど、初めてメンタル系の薬を飲むときは、少し緊張
した。
「偏見」が有ったわけではないし、「どうにかしてくれ」と思ってドアを叩いたク
リニックだったし。
「薬で治まるなら、それでいい」とも思っていた。

「薬の効果がでるまで、数週間かかります」
・・・イヤ、数週間も待てないし。
しかも、レンドルミン、昼間も眠いし。

そんなやり取りを繰り返し、いろいろな薬を試すこと約1年。
「ルボックス、パキシル、ハルシオン(銀シート)、ヒルナミン」の組み合わせが
一番落ち着いたかもしれない。
これをベースに、その時々で、頓服を追加したり向精神薬を追加したり。。。
今は、デパケンの方が好きだけど。


もちろん、「薬でやり過ごす事」への葛藤はあった。
物事には必ず「原因」がある。
「今の自分」は、「今までの自分がしてきた事の結果」。
それを、全部見ない振りをしてしまっていいのか・・・。
でも、薬が無いと「日常」を送ることができないのも事実。

「こういう自分」と、折り合いをつけて行こうと思った。

-----------------
sent from W-ZERO3


にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村 猫ブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

待合室.

2008年05月28日 | 精神科・心療内科
一度,病院を変えた事がある.
自宅から少し離れた「精神科」.
そこは、友人(?)が紹介してくれたクリニックだ.
「内科・心療内科」ではなく「精神科」なので、きちんとしたカウンセリングプログラムが組まれ,希望をすればデイ・サービスに参加する事もできる.

私は「治す」つもりは毛頭無かったので、「薬を処方してもらう」為にそこに通っていた.
それでも、先生との会話に救われる部分は多々あったけれど.

切りたくて切りたくて.
叫び出したいのに、思考する事を拒む「意識」.
理由の無い「焦燥感」と「自己嫌悪」.
クリニックだけを目指し、駅からの道を歩く.
ようやく辿り着いたクリニックの待合室には、4人掛けのソファが5つ.
私はソコでも、周囲に溶け込む事ができなかった.
「ヒトと同じソファ」には座れなかった.
私が選んだのは、受付カウンターの横.
いつも、腕に爪をたてて、床に座り込み、壁にもたれていた.

ヒルナミン、レボトミン、ベゲタミン.
デプロメール、パキシル.
ハルシオン、リタリン.
リボトリール、デパケン.

処方が増えると、安心した.
「拠り所」を見つけた気がした.
クッキーの空き缶に薬のシートを仕舞い込んで、やっと少し均衡を保った.



もう、5年以上前の話ー.




にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村 猫ブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

カウンセリング.

2008年05月27日 | 精神科・心療内科
鬱病診断のガイドラインにもなっている「問診?」のような物をされたコトがある.
「DSM-IV」でしたっけ?
「私は~である」とか、「私にとって~は△△である」っていう文章を完成させる、例のヤツ.
あれは、本当にキツカッタ.
自分のコトを「一人称」で考えられない時期で、全てに興味が無く,どうでも良かった時期.
結局、1/3も埋められないままだった気がする.
「文章を組み立てる」コトができなかったし、「自分=私」というコトが良く判らなかった.

「ん~.カウンセリング,受けてみる?」
先生のその言葉で、カウンセリングを受ける事になった.
私自身は、「カウンセリング」というものに興味は無かったけれど.
その頃は「自分の内側」と向かい合う気なんて、無かったし.

一人目のカウンセラーは少し年上の女のヒトだった.
カウンセリングルームで向かい合って座らされた.
「今,何がツライかなあ?」とか「出来なくてコマルことは何?」とか.
「この人はビョーキである」コトを前提に話をされて、ぐったり.
それきり、彼女に会う事は無かった.

二人目は、今度は少し年上の男のヒト.
初めてのカウンセリングの日、いろいろな心理テストをした.
インクを垂らしたカード,いろんな色のカード.
「何に見えますか?」ていう、あれ(w
「インクはインクだろ」と思いつつ、ナニカに例えながら答えた.

結局、「カウンセリング」が私にとって有益だったとは、言い難い.
「ヒトとヒト」だから、「相性」もあるしね.
カウンセラーに導かれて、「外」を向けるヒトもいるんだろうけれど、
私には向かなかったかなあ・・・・.
それとも、あのまま続けていたら、何か見えたのだろうか.

それと同時に、カウンセラーに依存して行く人達もたくさん見て来た.
カウンセラーに依存して、転移して、パニックを起こした友人.

少なくとも,私は初対面に近いカウンセラーに、いきなりココロを開く勇気は無い.


にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村 猫ブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

初めて、クリニックへ行った日.

2001年05月25日 | 精神科・心療内科
「やばい」と思った.
一人暮らしのこの部屋に一人でいたら、何をするかわからない.
訳のワカラナイ「衝動」をかかえて、手首をきつく掴んだまま動く事ができなかった.
その頃は「自傷」という言葉さえ知らずにいた.

眠れなくて、ただひたすら哀しかった.
理由なんて、無い.
晴れた空を見ても、やっと咲いた向日葵を見ても、ただ哀しかった.
気を許したら流れそうになる涙を、抑えるのがやっとだった.
そんな、毎日.

「自分のする事に、責任が持てない」、そう思った日、住んでいた街の「心療内科」に予約を入れた.

そこは、駅前の雑居ビルの5階.
入り口でクリニック名を確認して、エレベーターに乗る.
多分、なにも感じていなかったと思う.
受付で名前を告げ、問診票を渡された.
誰も座っている人の居ない,窓際のソファへ.
氏名/年齢/病歴・・・.
最後に、「今,困っている症状」の欄.
「食欲が無い/眠りにくい/やる気がでないetc」のチェックボックスにチェックをして行く.

やがて名前を呼ばれ、診察室へ.
ごく普通の「診察室」.
先生は,40歳くらいの小柄な男性だった.
簡単に生育歴や家族構成を話し、「今の状態」について聞かれるままに答えて行く.
もっとスムーズに話したいのに、喉から言葉が出て来ない.
先生の言う事を、アタマの中で繰り返して、1つ2つの単語で答える.
「軽い安定剤と、睡眠導入剤を出しておきますね.少し様子を見ましょう」、そう言った先生と、私は最後まで眼を合わせる事ができなかった.

薬を出され,お会計を済ませてエレベーターからおりると、そこには「日常」がある.
すれ違う人々、ざわめき、行き交う車の音.
自分だけが、「違う世界」に居る様だった.
「音の無い、色の無い世界」


にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

ブログランキング・にほんブログ村へ